2005年11月 2日 from 食材
色々とニュース番組で報道されているように、この国の食品安全性を判断する有力な機関である食品安全委員会のプリオン専門調査会が、31日に米国産牛肉のリスクは低いとする結論を出した。これを受けて各ニュース番組が特集を組んでいるので、ぜひこのブログを読んでいらっしゃる方は目に留めて頂きたい。
実は、結論としては「リスクは低い」とされているが、問題はそれに但し書きがついていることだ。それは、
「出荷を20ヵ月齢以下の牛に限定し、出荷全頭からのSRM(危険部位)を除去するという、輸出プログラムの条件等が遵守される場合」
というものだ。この条件が遵守されているか否かをきちんと監視する仕組みが求められるが、そこはまだ明確になっていない。
禁輸が解けて輸入再開した後の動きを予測しよう。(あくまで私見です)
消費者がいちばん精肉を目にする場である小売店等では、消費者の意識が完全に慣れるまでの数ヶ月間は細々としか取り扱われないだろう。ただそれは特段、「消費者のことを考えて」というよりは、「自社イメージを損なうことを恐れて」である。消費動向が「米国産牛肉、やっぱりいいじゃん」という基調になったところで、以前同様に投入していくだろう。ただし、社会的に開かれた、安全・安心マーケットへの対応上、現在展開されている情報開示型商品(生産情報を表示するとかね)の棚は残されると思われる。
問題は以前から指摘しているように加工・外食である。加工業者がミートボールやハンバーグ製品を製造する際に、その原材料の産地を表示するということはまだ法律化されていない。従って、加工食品段階での米国産牛肉使用は比較的早い段階で行われるはずだ。加工食品も、小売向けだけではなく、例えばコンビニ弁当や安い居酒屋の食材になるケースが多いので、知らない内に口にはいることが多くなるはずである。
外食産業では、これまた原産地表示の義務化がなされていない(自発的に表示を行う業者が最近よく出てきているが)。ただし規模の大きい、FC展開しているような外食チェーンは、企業イメージを損なわないよう、取り扱いをしばらくは自粛するだろう。ただし世論の行方によって小売業と同じような対応をすると思われる。
e-Japanという、内閣が取り組む政策目標の最新バージョンでは、こうした外食・加工の段階でも、生産地の表示をしていこうという目標が掲げられたようだ。この動きは歓迎できる。法律レベルに昇華して行くにはいろいろとハードルがあるが、段階的に進むことを期待したい。
ということで半年くらいは、禁輸が解けてもあまり米国産が目立って出回ることはないだろう(牛丼チェーンは除く)。しかし、最大のキーは消費者意識である。1993年、冷害に悩まされ米が大不作で、輸入米しか食べられなかった年があった。日本の米のありがたさを国民全員が感じたその翌年は一転して大豊作、その瞬間にあの苦労は忘れられたものだ。米国産牛肉が危険だという意識を持つ消費者が多い限り、社会的にみえない監視網は存在し続けるが、その最大の的は時間だ。時と共に緊張は緩む。
今日、全ての食品にはリスクがある。
よく「食品は安全で当たり前」という人が居るが、医学の進歩と細分化によって、今まで考えられなかったアレルギー症状が散見される現在となっては、残念ながら「誰に対しても安全といえる食品はない」といえる。僕が明日、カレーライスアレルギーにならない保証はどこにもないのだ。
だから、米国産牛肉だけではなく、いろいろな食べ物にリスクがある。何を食べようかな、と思った時に、食べたいものを思い浮かべる。そしてそれらが潜在的に持つリスクを頭にふっと思い浮かべる。その上で、「リスクをおかしても食べたい」と思うかどうか、で自分の人生を決める必要がある。これからは「何を食べるか」を考え、それを食べたことで起こることを自分でリスクを背負っていかないといけないと言うことだ。
無論、法律で定められていることを遵守しない食品のせいで被害を被った場合は、提供した側が罪がある。しかし、法がある時点で「よし」としたことが、数年後に「やっぱりよくなかった」と覆されるということが、この国では過去たくさんあったことを忘れてはならない。毎日の食事についてよくよく考えて、食べるものを選択したいものだ。
輸入牛肉についてはどうだろう?こうしたことを念頭に置きながら、米国産かもしれない牛肉料理を前にした時には逡巡をしてみたい。
ちなみに僕も吉野家の牛丼が大好きだ。
埼玉に育った僕にとって、小学生の頃、最大の都会と言えば大宮市だった。ハタシネマという映画館に出かけてジャッキーチェンの映画を観て、吉野家で牛丼を食べて帰るというのが、当時最高の娯楽であった。
「並・つゆだくねぎだくぎょく」で、丼が出てくる間に七味入れのキャップを外し、丼が来たら黄身を割らないままで卵を中央に載せ、七味を多量にふりかけ、紅ショウガを面積の3分の1隠れる程度に載せて掻き混ぜる。これが僕の作法だが、しばらくはこのお手前をすることもないだろう。
はやくそんなことを考えずに牛丼を掻き込めるようになりたいと思う。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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