ザ・パワーオブ 富良野 若手猪突猛進系 スペシャルラーメン 「とみ川」を再訪した!

2005年8月 5日 from 富良野

8日 18:55 続きを付記しました

朝、ムチャクチャ気持ちの良い目覚めをする。4町歩もの山林に囲まれた宮田家は本当に素晴らしいロケーションだ。目の前に川のせせらぎがあり、なんと「ここでイワナ釣れるよ」ということなのだ。ここにボーっとしているだけでも、一日が楽しそうな家なんである。

「おはよーございます!ちょっと富良野の山の中行ってみましょう!」

と、特大おにぎりをどどーんと作ったマスターと連れだって4WDに乗り込んだ。
街とは反対側へ、川沿いに森の中へと入っていく。

「川、きれいですね!」

「いや~ これでも結構不法投棄とかね、いろんな問題があるんですよ」

と言いながら、鋭い目をあちこちに飛ばしている。気付いたのだが、要するにこれ、ドライブしながらの川の状態監視である。

「あー あそこ崩れてるな、、、お、アレは誰の車だろ。観たこと無いのが入ってきてるな、、、ああ、こんなダムを造っちゃダメだよな、魚、登ってこれねーよ」

というように、自然への驚異になるモノなどをきちんと観ているのだ。うーむ
街部とは違って、丘陵に沿うように車が駆ける。

「富良野はね、美瑛とかみたいにだだっ広くはないんだけど、結構いい景観があるんですよぉ!僕はそういうのを探すの大好き!ガキのころからやってるからね!」

車は森の中にズンズンと入っていく。国定公園となっているような山深い中に降り立ちしばらく歩くと、清冽な水流がほとばしる沢が目の前に拡がった。

「どーです?いい感じでしょ?富良野ってね、本当にいろいろいい場所があるんですよ!観光名所っていうよりもね、来てみて落ち着いたり癒されたりする場所がね、たくさんあるの。そういうのを知って欲しいんだよね。」

ああ、また宮田マジックだ。この人と居るとどんどん富良野好きになっていってしまう。いままでドラマの舞台としか観ていなかったこの富良野という街が全く違う絵柄で、自分の中に新しい実在として組み込まれていくのだ。

「よっし、まだ店開いてないと思いますけど、『とみ川』にちょっと顔だしてみましょう!」

と、麓郷の最強地産・地消型ラーメン店 「とみ川」の駐車場に乗り入れた。

ラーメンとみ川は、富良野の飲食店の中でも宮田マスターが一目置く次世代のエース候補(?)である富川さんの店だ。なんといってもラーメンの中に入っている材料はほとんどが富良野産!麺も自家製麺で、小麦粉も富良野で作られたものなのである。過去エントリで東京の小田急新宿に来た時にレポートしているが、食べた人はその衝撃的に濃い麺の味と香りにぶっ飛んだはずである。

「うおっ! やまけんさーん!びっくりだなぁ!!」

元プロボクサーのマスターがグワシッと握手!相変わらずのパワーだ!

店の隅では自家製粉の石臼が回っている。まだ店は開いてないので、後でゆっくり食べに来るとする。

「さてちょっとね、ボーっと出来るところがあるから行きましょう!」

と言って、さらに丘陵を登っていったところに、いきなり視界が開けてなだらかな眺望が拡がる丘の上に出た。

「こういう、何気なしにきれいな空間を見つけたのは選挙運動してる時ですね。いろんな処を通ったんですよ。ウグイス嬢は俺のオフクロとかなんだけどね(笑)低速で車で回ってると、『あー あそこきれいだ』とかね。それで後で確かめに来るんですよ。おかげで富良野全域のこういう場所、知ってます。」

この空間、鳥のさえずりと風の音、そして遠くから農機やトラックが通るのが聞こえてくるだけの静謐な空間だ。

「おにぎり、食べましょう。ラーメン食えなくならない程度にね」


この、マスターが握ってくれた筋子と昆布のおにぎりが滅法旨い!

「塩はね、手につけるよりもご飯に混ぜちゃった方が旨いって、オフクロ直伝なんです」

宮田マスターと、絶品の景色を眺めながら頬張るおにぎり、これはもう本当に最高の味だった!
さてBack To とみ川である!

「いらっしゃいぃいいいいい!!」

と気合十分の富川さんが待っていた!
まずは行者ニンニクの醤油漬けがドンと出された。前回、その香りにやられてしまったヤツだ。

これももちろん富良野産。ていうか「裏の山で獲ってきたんすよ!」だそうだ!

「ヤマケンさん、うちの麺、また進化してるんですよ!」


マスターが麺を鼻に近づけてくれる。

瞬間、ブワッと小麦の香りが!小麦の香りだけではない、ナッツのような、濃い穀物香がするのだ。全粒粉でないと絶対に味わえない香りだ!

これがとみ川の麺のラインナップ。手前が全粒粉、その後ろが通常の麺、赤いのは唐辛子粉を練り入れた麺だ。もちろん全て自家製麺だ!

「やっぱりね、ラーメン屋は自分で麺作らないと、半分以上を外に任せてるってコトになっちゃうよ!」

と宮田マスターが言う。

「そうそう!」

これが石臼引きの全粒粉を自家製麺した麺の表面だ!昨年に訪れた時よりも、その全粒粉の粒状感が強く、茶色く、みるからにパワー満点なのだ!

もう一度鼻を近づけて香りを嗅いでみると、ブワンと力強い小麦粉の香りがする!いやこれは素晴らしい、、、中華麺とくにラーメンに使う麺といえば、どちらかというと小麦粉の香りを協調するよりも、ツルリと喉越しを良くし、卵などの香りの方を前面に出したりというのが主流だと思う。しかしこのとみ川の製麺ポリシーは、とにかく粉の風味をそのままに強く出すというものなのだろう。

無論、全粒粉麺以外の通常麺については違うかも知れない。実は僕は通常のラーメンをここで食べたことが無く、「富良野ラーメン」一辺倒なのでなんともわからないのである(笑)。今度1週間以上滞在できるタイミングがあれば、全メニューを制覇したいと思う。

「はいぃ~やまけんさん おまちどおさまでしたぁ! 富良野の食材で作ったラーメンです!」

富川マスターのビカッとしたパワフルな眼力と共に、ラーメンが手渡された!

相変わらず、全ての意味において濃そうな佇まいのラーメンだ!スープの上には薄く油膜が張っており、寒い中、啜っていても冷めないようになっている。

油膜の下には、九州ラーメンしか知らない人は「黒い!」と声をあげてしまうであろう濃度の茶褐色のスープが。しかしそれは濃い口醤油の色だけの問題であって、味・香りは実は全く濃すぎることがない塩梅なのだ!富良野の鶏、富良野の豚から採ったスープに魚介系のダシを合わせたベースが、じんわりとそしてしっかりとした柱を築いている。もちろん、無化学調味料である。

「いやぁ、物産展とかイベントとかで行く地方で、他の有名なラーメン店の裏口を覗いたら、味の素や既製品のチャーシューとかが毎日運び込まれてるんですよ。あんなもん、旨いわけ無いじゃない!行列して食べてる人がかわいそうになってくるよね。」

と言うだけあって、ここのチャーシューは旨い!富良野の養豚農家から仕入れている豚肉を丁寧に巻いて仕上げ、お客さんに供する時は網で炙って旨そうなこげ目をつけてから出している。

さてその中で一番の存在感を醸し出しているのはもちろん麺だ!どうだろう、この麺の色艶。ラーメンというかなんというか、、、

啜り混もうとするが、全粒分らしく硬度の違う粒子の集合体だけに、摩擦係数が強いのか、一気にすすり込めない感じだ。従って蕎麦のように「たぐる」感じで麺を口に運ぶ。

麺を噛みしめると、コシの強いスープの味と香りを全く意に介さぬように、あまりにもストロングな粉の香りがブワッと立ち上る。

「おおおおおお なんだかパワーアップしてますね、この麺!」

「そうでしょう?最近、自分の思い通りの麺が出来るようになってきたんですよ!」

とにんまりしながら、富川マスターが、続々と入店してくる客の注文を捌き始めた。日頃ここに来るお客さんは、この骨太な麺を毎回食べるわけではないだろう。僕も、この店を味わい尽くしてみたい。数回訪れないと無理だな、と思った。

「やまけんさん、ここのラーメンがあれば、旭川まで足を伸ばす必要はあんまりありませんよ!」

といいながら、宮田マスターもサービスの餃子まで平らげ、ニコニコしながら富川マスターと食材情報の交換をしたり、隣に座ったガラス工芸家の人と談笑したりしていたのであった。

いやしかしとみ川のラーメン最高である。おそらく一般的なラーメンを食べ慣れている口には、一つ一つのパーツの強さが際だっているので「ん?」と思う味だと思う。また、前回もそうだったが、麺の強さとラーメンとしての全体バランスにはまだ若干の研究余地があるだろうと思った。

しかしそんなことはどうでもいい。このラーメンからも富良野という食の舞台を垣間見ることができる。マスターのビカッと光る眼のパワーに触れなければ、感じられないものがある。

富良野に出かけたら、麓郷を訪ね、「とみ川」のラーメンを食べてみて頂きたい。きっと日々進化を続けているだろう。

と、東京に帰ってしばらくして、とみ川のマスターから持ち帰り・全国発送用のラーメンが送られてきた。
最近、この商品開発にかなり力を入れていたと言うことなのだ。もちろんこれは自家製麺ではないわけだが、どれくらいエッセンスが凝縮されているのだろうか。じっくり味わってみたいと思うのであった。