2005年7月13日 from 出張
金曜日の夜の講演は、農業者さんが80人くらいあつまり、2時間にわたる僕の講演をほとんど寝ずに聴いてくれた。なかなかに充実した夜だったのである。
さて、このWebでは何度も書いていると思うが、僕はうなぎについては断然、関西風が好きである。関東風はうなぎを白焼きにした後、蒸して脂を落とし、その後にタレをつけて焼き目をつける。関西風は、蒸すということをしない。脂が乗ったままバリッと焼き上げるのが特徴である。
たしかに江戸前も、いい店で食べると非常に美味い、とは思う。しかし、なんだか割り切れなさが残ってしまうのも、また真実。まあ、おいらまだ若いしね(34歳、、、苦笑)。脂を落とさず皮がネッチリとした関西風が大好きなんである。まあ、関東近隣であれば、思い切って静岡県の三島で途中下車して、「本町うなよし」に行って一番デカイサイズのを食べるに限るな、と思っている。
「そんなこと言って味がわからねーやつだ」と言われるんだろうなと思うが、俺は第一に江戸っ子じゃないし、東京で満足できる鰻屋にほとんど出会わないんだからしょうがないのである。「ココは美味いぞ!」と言う店があったら、ぜひオゴリで連れて行って頂きたい(笑)
さて では日本で一番好きなうなぎはどこにあるかというと、迷いも躊躇も一片もみせずに「宮崎県西都市である」と僕は言う。
宮崎県、鹿児島県は、日本でもトップクラスと言っていいほど、うなぎの養殖が盛んである。当然、うなぎ屋はそこここにある。この辺のいきさつは、拙著「やまけんの全国出張食い倒れガイド」に書いたとおりなので、ぜひぜひ読んでください。
で、「食い倒れガイド」には「本部うなぎ店」という名店を訪ねている。この店はブログでは書いたことがないので、本でしか観ることができないので悪しからず。執筆中のこのエントリの写真を見て欲しい。
■本の中身をチラッと。絶品鰻重を観てくれ! (2005年05月08日)
はっきりいって最高でしょ?もうこれは視覚の暴力である。
本部うなぎ店、死ぬほど美味い!しかも関東の感覚からすれば激安なのだ。なにせ写真の大盛り特上鰻重にしても、名物の呉汁が付いて2000円以下なのだ!
と、価格にも旨さにも大満足なのだが、実は元々この西都市のうなぎが好きになった入口は、他の店だったのだ。
その名は「入船」。 おそらく西都市近隣いや宮崎でこの鰻屋を知らない人はそういまい。平日だろうと休日だろうと行列が絶えない、超人気店である。久しぶりの西都詣で、この店ははずせない。
沼口君の車で店の駐車場に乗り入れてまずびっくり。
「こんなに駐車場、広かったっけ!?」
駐車場、15台以上が停まれるような広さである!前もこんなだったっけかなあ。
そして店の方に歩いていく。この建物を観て欲しい。
これ、お店ではない、、、
なんと、待合室ならぬ待合い小屋なのである!
あまりにも待つ人が多いので、小屋を立ててしまったということなのである、、、
小屋の中はこんな感じで、テレビが流れている。
時折マイクで、「ヨシダさーん、5名でお待ちのヨシダさーん、どうぞ店へお上がり下さい」というように待ち客を呼ぶアナウンスが入るのである。いやもう ただごとではない。
ただ、この店はうなぎ以外のメニューなぞないので、回転も相当に速い。酒を飲んでだらりと過ごす店ではないのである。20分ほどで呼ばれて、我々一行も入ることができた。
■入船
宮崎県西都市南方3316-3
0983-43-0511
店の中は非常に広く、座敷が2階にも拡がっている。
とにかくこの店のいいところは、メニューが単純であることだ。
うなぎ定食か鰻丼、うなぎのぬたなどしかないのである。
ちなみに定食には、ご飯とうなぎの蒲焼き、白焼きのぬた、肝焼きと骨せんべい、そして呉汁が付く。
うなぎ定食は
並1890円
上2730円
特上3150円
やっぱり安いのである!
お話しにならないリーズナブルさ加減である。
さて僕は当然、うなぎ定食特上のご飯特盛りである。一瞬、鰻丼にしようかと迷った。皿に並べられたうなぎ蒲焼きと、ご飯の上に載ったそれとでは少し趣が違うからだ。しかし、「タレは別に持ってきますから、ご飯に載せても結構ですよ」という。それなら単純に量が多い方に行くしかないのである。
さて、まずはうなぎのぬたが出てきた。
そう、酢みそをつけて食べる「ぬた」を、うなぎ白焼きでやるのである。これは関東でも関西でも観たことがない、宮崎オリジナルではないだろうか。
このバリ感強く焼き上げられた身を観よ!蒸していないため、繊維・組織がビシッと原型をとどめている感じである。
これを酢みそにつける。酢の酸味と、甘めの麦ミソの香りが立ち上り、うなぎの脂をさわやかにしている!
これにつけあわせの晒しタマネギの薄切りを添えて食べると、実に爽やか、コッテリの相反するハーモニーが口にこだまするのだ!美味いぜヌタヌタ!
「はい、特盛りの方のご飯です!」
と、デカ丼に山盛りになったご飯がやってきた。でかいぜ、、、
僕は、うなぎが好きなのではなく、うなぎとご飯が渾然一体になったものが好きなのである。従ってご飯は重要。入船の白飯は地元・宮崎県産のコシヒカリだ。脂も味も濃いので、コシヒカリしか選択できないだろうな。
そして、満を持してうなぎ登場である!
うなぎ定食はこのように重箱に蒲焼きが並べられてくるのである。
みよ、このタレによって全身褐色にコーディネートされたうなぎちゃんの美しい進化形態を!脂を落とさずに皮目もバリッと焼かれているので、身肉の締まり具合がわかる。そして、写真だと縮尺がわからないだろうが、うなぎは「小さめ」なのである!
これが重要なポイントで、西都ではあまり大きな太いうなぎは使わない。脂が乗りすぎているので、蒲焼きにすると美味くないからだ。実際には、脂が適度な中型のうなぎを割いて焼いているのである。だから、蒸す必要がないのだ。 関西風は脂がね、、、と言っている人が良くいるが、そういう配慮がなされているのを認識すべきである。ちなみにお隣鹿児島では、太めのうなぎを使うことが多く、「蒸し」が入ることもあるという。
さてもう俺は我慢ならないのである。
「い、いただきます!」
うなぎ片を白飯に載せ、一口に一片と多量の飯を放り込み、奥歯でかみ締める。瞬間、炭火の香ばしいコゲ香と甘辛いタレのロングフック、そして身肉の旨味とあのうなぎの得も言われぬ香りが口腔と鼻孔に充満し、嘆息とともに漏れ出る。
「美味いよぉ、、、俺はこいつを食べるために西都に来たんだよぉ、、、」
もう泣きそうになりながら狂暴な食欲を制するため、ここからはただひたすら掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込むのであった。
ちなみに超大盛りの飯には甘辛タレをかけ、絡ませるのが吉だ!汁ダクにしすぎるのは甘くなりすぎていけないゾ。
それと、この辺だけの習慣だろうが、うなぎに呉汁が付いてくるのである。呉汁とは、一晩水に漬けて戻した大豆を石臼などで磨り潰し、みそ汁や澄まし汁にその「呉」を溶き入れた汁である。
こいつが実にうなぎに合う!
粉砕された大豆片が中にタップリ入った呉汁。濃厚でミルキーなこの味が、なぜかうなぎの脂と甘辛いタレを洗い流しリフレッシュさせてくれるのである!リフレッシュしたらうなぎ!ちょっとだれたら呉汁!このサイクルが延々と続くのであった。
もう、このうなぎを食っている間は全くの無言である。ていうか「フムフムウンウンムマイムマイ」と言葉にならぬ言葉を吐くしかないのだ。
いや、久しぶりに食って大満足!
西都市近隣には、この入船や本部うなぎ店だけではなく、こうしたスタイルの鰻屋が多い。関東とか関西とか関係ない、西都スタイルのうなぎをぜひ味わってみては如何だろうか!あとは、東京に支店を作って欲しい、、、
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。