こんな店がこんなところにあったのかぁ 築地 「うまいもん屋」は絶妙な魚空間だった!(後編)

2005年7月 8日 from 首都圏

(前編から続く)

さて味のある女将が持ってきたしゃぶしゃぶ鍋に入るのは、、、夏を刻む魚、鱧(ハモ)であった!

一人三切れ×4人分のたった12きれのためにしゃぶしゃぶ鍋が用意されるこの贅沢!

すかさずハモ切り身を投入!

だんだんと花開いたハモを引き上げ、梅肉をつけてバクッとかぶりつく。猛烈に腹が減っていたのでそのかぶりつき写真はナシである! 旨い!

「ホントに旨いですかぁ~?」

と店の大将がF岡さんの肩を叩く。僕と同じくらいに小柄だが、ガチッと鍛えられたような肉体を持つ体育会系ノリの大将である!

「この大将はネ、意表を突いてくるんだよぉ」

というF岡さんの言葉に頭をかきながら厨房に戻り、そして間もなくドデーンと刺身盛りが運ばれてくる。

なんとなんと 中トロ、赤貝、バフンウニ、イカ、そしてそして伊勢エビである!

トロはさすがに築地で店を張っているだけある品質だ。量的圧倒さ加減は月島の魚仁が最高だが、この店では質の良さが際だつ。かといって一切れ千円以上の大トロを出すようなこともしない。酒飲み用に最高な中トロである!

そしてこの綺麗な色のウニが最高だ。寿司処 匠にて旨いウニはさんざん食っているのだが、うまいもん屋のウニもミョウバンの香りなど一切しない、甘さと濃厚さだけが口に溶けていくすばらしい品質である。

それに加えて伊勢エビである。何も言うことはない。身肉も旨いけど殻に付いた味噌、肉片がまた勿体ないのでシャブリつき、バリバリとかみ砕いてたら、大将が「ホントに好きなんだねぇ」と笑う。

そしてここで掟破りのハプニングネタが大作列したのである!大将が持ってきたものは、、、

あまり食べられるということが知られていないが、実は高級品という、フジツボである!

このフジツボ、殻の中にはこんなクリーミーなミソっぽい身肉が詰まっている。本当にクリームのような濃厚なペーストなのである! F岡さんも 「なんだこりゃ、旨い!旨い!」と言いながらむさぼり食べている!

いやぁ なんという店であろうか。意表つきすぎである。
店内を観ると、一応メニューというか品書きはあるようだ。

しかし、こういうのを単品で頼むより、やっぱり予算を申告して「おまかせ」にするのが一番楽しいのだろうな、この店は。

とはいえ、「おまかせなんて高そうで怖いよ!」という人もいるだろう。
実は、、、この日最大の驚きは勘定の時に発覚するのである。まあお楽しみに。

さて ビックリは続く。大将と好対照をなすいい味だしまくり女将さんが、何やらわからぬ物体Xを持ってくる。

「塩竃(しおがま)だ!」

でも何の塩竃なんだろう、、、

「はい、この木槌でこことこことこことここの4カ所を叩いてくださいねー」


ボコンボコンと木槌で割ると、中から笹のようなアセのような葉に包まれた物体Xが顔を覗かせようとしている、、、

葉と物体Xの蒸れたえも言われぬ香りが鼻に、、、突き抜けていくぞ!
うがー 剥いてやる!

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
Are you  である!

鮎の塩竃焼きである!恐れ入りました!大きめの型の鮎が一人一匹ずつ、程よい焼き加減になっているのである!ちゃんと表面にはこげ目も付いており、水分と風味を逃さず、余分なドリップは外に出し、旨味が凝縮された形になっている!

若干大きめなので、歯に自信のない人は骨から食べない方がいいかもしれないが、僕は31年間虫歯知らずの歯並び男なので頭から齧り付く。

いやもう 旨いに決まってるでしょう。 塩竃で程よい塩分が身を引き締めている。ハモと鮎を一度に食べられてもう幸せである。

と思ってたら、やおら醤油色にぬらぬらテラテラのドカーンとでっかい皿が!

「はい、カンパチの兜煮(かぶとに)!」

でけぇよ!
F岡さんとこのお頭を解体~しゃぶりつき骨だけになるまで食べ尽くしていると、「ジュワーっ」と油で何かを揚げる音が。

「はい、カレイの唐揚げね!ポン酢で食べてよ!」

ぬおおおお
パリパリにあがった身肉と骨の美しいスケルトン模様よ、、、かなりボリューム満点の攻撃だが、バリバリとかみ砕き飲み込み堪能する。

「やまけん、まだまだ折り返し地点だよ~」

とニヤニヤしながら、こんどは炭火がカンカンに熾った七輪に堂々たる体躯の車エビを並べていくF岡さん。

いつもながら、いい店を知っている人はこの「ニヤニヤ」をする。しかも、僕と実際に会って飯を食ったことがある人なら知っての通り、文章だけではなく本当に

「うおおおおおおおおおおおおお」

といいながら食うので、連れてきた人はかなり満足感を得るようである。しかしこのうまいもん屋の繰り出す諸攻撃群は、僕には耐え難き旨い世界なので、潔く負けまくるしかない状態なのである!

この車海老、サイズでかい!炭火で中まで火が通るので、海老ミソがジュワジュワに沸騰しているので、剥く時要注意である。僕は火傷しました。テヘッ

いつもはそんなにピッチ早く飲まない僕も、こうなったらガンガン日本酒モードである。なにせこの店は「純米酒しか置いてませんから」なので、だったら何でもいいやぁという感じである。

そういえばこの店、面と向かって何かうるさく言うことは全くないが、そこここにお作法の紙が貼られている。

香水禁止

携帯電話の店内での使用はお断り致します
大声で騒ぐと他の型の迷惑ですやめてください
店内禁煙

全て大賛成である!

「さあやまけん、いよいよ食べさせたいのが出てきたよぉ、、、」

とF岡さんの動きにドライブがかかってくる!

そこで投入されたのは、、、
なんとマツタケである!うわーお わーお 「早松茸」と書いてサマツタケである!

菌糸の小さな結晶体である早松茸に齧り付くと、

「ジョリッ」

という、菌糸群が作った甘美な繊維に歯がめり込み切り裂く音が、脳にダイレクトに伝わってきた!そしてブワッと綺麗に膨らみ鼻孔に抜けていく松茸香!

「うおっ、、、」

と泣きそうな顔をしたのを観たのだろう、大将が大笑いしながら

「ほんっと いい顔して食べるねぇ!」

いや旨いんですよ、、、マジで。

さらに炭火で、ホタテの貝柱にサツマイモを焼き込んでいく。と、丼に入った何ものかが運ばれてきた!

「うひひひ やまけん、これがこの店の最大の秘密兵器なんだよ!」


とF岡さんが網に並べ始めたのは、、、

マグロのアラを仕込み醤油に漬け込んだヤツである!
もう、少々だれてきた食欲が、酒と混ぜられた醤油が炭火で焦げる香りによってリセットされ最大限に喚起される!

「これこれ ここの部分が旨いんだよ!」

って、これハラカミじゃないの?こんなに油滲ませて、、、遠慮無くいただきます!

ううううううううううううううううううう
旨いに決まってるじゃないか!

ジョワッと溢れる脂と、大型回遊魚特有のコクの強い旨味が僕をめった打ちにするのである!

どうだ!

どうだどうだ!

とF岡さん、僕の興奮ブリに大満足げである。 いや、こりゃあ シャッポを脱ぎますよ。旨いもんばっかり出す店だ!

「いやー マジで旨かったですよ!」

と一同満足したなぁと一息ついているところに、またもや厨房から「ジュワー」と何かを油で揚げている音がする。店内は11時半を回り、いつのまにか僕らしかいない、、、

「はい、食べきれなかったら残してねー!」

ドドーンと出てきたのは米茄子の田楽である!うわ~一人一個ずつじゃないか!

すでにテクニカルノックダウン気味のF岡さん、女性陣だが、僕は負けるわけにはいかない。

しかし、実はこの田楽、通常のものではなかった!一口食べてみると、肉みそに酢が仕込まれている。そう、酸味の強い肉みそなのだ!しかもネギがタップリ入っていて、サッパリ感が強まっている!

旨いっすよ!といいつつバリバリいただいてしまいました。いやこれは旨い!

「もうみなさんお腹一杯っぽいんで、ちょっと酢をきかせてみたんですよぉ」

大正解です!

しかしそれではまだ終わらなかったのである。ゴーヤーチャンプルが出てきて、、、

〆は稲庭うどんである!

もう何も言うことはない。最後は私が責任をもって残りもいただきました。

「いつもは小食なんだけど、何故か今日は食べちゃうよ!」

と、F岡さんもかなり胃袋拡張気味である。このあと、サクランボで甘く〆て、狂乱の酒宴が終了したのであった、、、

いや、まじでこんなロケーションでこんな店があるとは思わなかった。最近、いい店にあたる率が非常に高くなってきているのだけども、海鮮系ではここんとこで最大の衝撃度かもしれない。

その衝撃の本番は、実はここからなのである。

「やまけん、今日の勘定、4人でいくらだと思う?」

んー そうだなぁ きっとそこまで言うんだから安いんだろうな、、、

2万5千円くらいか?

「ふふふ そう思うでしょ? 実は○×△□◇円だって、、、」

なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
マジですか!?と驚嘆するしかない値段であった。

ただし誤解しないでいただきたい。F岡さんはこの店の常連である。そして予め「良く食うヤツが来るからね」と耳打ちされていたから、大将と女将さんもこんなにもてなしてくれたのである。通常のお任せコースでここまでの皿数は出ないだろう。

でも、それにしてもこの店、お任せコースの一番高い値段は5000円である!
ていうか高くないでしょ!?
酒を合わせても一人一万円を超すのは難しいのではないかと思う。

「いやぁ、 沢山食べてもらって良かったですよ!」

大将、最後までにこやか、そして客への気配りを忘れない。そして特に客に媚びるでもなく淡々とサーブするおかみさん。
最高である。この店に出会えて感謝。

さて、僕は気に入った店ができると、すかさず一週間以内に一人で再訪するのが常である。某日、銀座で会議があった折り、築地まで歩いて店を覗いてみた。ガラス越しに超満員であることがわかり、仕方がない、帰ろうと思った時、厨房の大将と目があった。瞬間、タタタッと走ってきた大将。

「どうしたの、一人?席作るからあがってよ!」

お、僕の顔をきちんと覚えてくれている。素晴らしい!
もうネタは他のお客さんに出し切ってしまっているにもかかわらず、刺身盛りを出してくれる。
ご飯が食べたいというと、「定食みたいなんでいいかな?」といいながら、塩鯖と豚肉キムチ炒め、そして伊勢エビのアラのみそ汁と大盛りご飯を出してくれた!

もりもり食べている横で、大将の話を少し聴いた。彼はなんとトライアスリートであった!どうりでガチッとした体格と、玄人的敏捷性である!

「いやぁ大したこと無いですよ、、、でもね、ヤマケンさん、あなた、胸囲いくつです?」

キラリと目が光った。

「んー 108センチですよ」

「ああああああ 負けたよ、、、俺は102センチです。 あんまし負けたこと無かったんだけどな、、、」

と悔しがり、厨房に戻る大将に、心の中で「俺のはだいぶ脂肪が水増ししてる108センチですよ」とつぶやいた僕であった。

いや、マジでいい店である。ただしもうそろそろ、鮎は終了とのこと。お任せコースの中身、皿数は今回のエントリのは特別なので、その辺ご理解の上、築地に集合である。