2005年6月13日 from 出張
もう腹一杯なんだけど、、、しかしこの旅の目的はとにかくじゃこ天である。しかもじゃこ天のもう一つ本場、宇和島に入っているのだ。
「なにが『もう一つの本場』だ!じゃこ天は宇和島の食べ物なの!」
という人も居るだろう。まあまあ、とにかくここから2店、宇和島じゃこ天のパラダイス巡りである!まずはこれも大手の島原かまぼこ店へ。パッケージはよく知っているのに、その製造元に来たなんてとても不思議な感じだ。
島原かまぼこ
愛媛県宇和島市祝森甲4668
0895-27-2345
中にはいると、充実の品揃えのケースの前で、若旦那であろう島原豊行さんが迎えて下さる。速攻で工場見学。二宮さんも堀江君もおばちゃん帽子をかぶる。ていうか僕もかぶっています(笑)
さて「大手」とか「工場」とか書いているけど、商品販売ケースの裏のドアを開けるとすぐそこが工場になっているのだ。そして、15人くらいの人たちが一斉にハランボを捌いている凄まじい現場をみた!
みなプロである!黙々と小さなハランボに包丁を入れ、頭と内臓を一気にそぎ取っている。
「頭はとってしまうんですね?」by堀江君
「ええ、堅過ぎるので食感が悪くなってしまうんです。」by島原さん
この人たちの黙然と包丁を操りハランボを捌く様が実に静かで地味で堅実で、素晴らしい。「とてもじゃないが機械化できません」というのはたしかにそうだろう。大型の魚なら機械化しようもあるが、ハランボは手のひらに収まってしまう小ささなのだ。
「うちではハランボのじゃこ天以外にアジをすり身にしたアジ天もありますが、材料費はダントツにハランボの方が高いんですよ。ハランボは一ケースで5000円以上しますからね、、、」
なんとビックリ!以前は獲りたくなくても獲れていたハランボが、かなり漁獲量が減っているのである。減少の理由はやはり生態系バランスのゆがみらしいのだが、いずれハランボのじゃこ天も希少価値のある高級食材になってしまうのであろうか。非常に不安になるのであった。宇和海と瀬戸内海も、温暖化の影響などで生態系に変化が出ているという。研究者も苦労していることだろう。関係各位のご健闘を祈りたい。
さて捌かれたハランボはすり身にされ、揚げられる。捌き場のすぐ横に、揚げ師が待機して油を温めていた!
じゃこ天の造り方はどこでも同じだ。すり身を型にはめ、油で揚げていくのだ。
この型にすり身をはめる時のちょっとした動作が気になった。平らに均すのではなく、微妙に指で押して凸凹をつけるのである。
アレは何でですか?と訊くと、島原さんは我が意を得たりとニヤッとしながら教えてくれる。
「宇和島のじゃこ天は手で押すことによって、火の通り加減が箇所によって違うものになるんです。一枚のじゃこ天に、火の強く通った部分と通りの柔らかい部分ができる。それが旨いんですわ!」
なるほど!そういうことなのか!
みていると、一枚一枚に微妙な指模様がついているのである、すごい!
「さあさあ揚げたてを食べて下さい!」
熱々のじゃこ天が回される。確かに適度な凸凹があるこのじゃこ天のテクスチャをみよ!島原のじゃこ天は今回の中で一番ダークな色のじゃこ天であった。
「うちのは、ハランボ100%に加えて、つなぎのでん粉を少ししか使ってませんから。余所のじゃこ天とは違います」
と、他地のじゃこ天とは違うとビシッと感じさせてくれるプレゼンテーションである。大根おろしをのせてかぶりつくと、やはり一番濃い味である。食感も硬めで、これは本当にハランボ100%に混ぜもの少なめのハードタイプという感じである。
「アジ天も食べて下さい!」
この写真の下にあるほうがアジ天である。
これもまた美味しかったが、アジの方が味が薄い。ハランボの濃厚さには味もかなわないのか、とちょっとビックリなのであった。
じゃこ天3枚にアジ天1枚。うーん 腹一杯だけど旨かった!
「ぜひ、このじゃこ天を日本全国に広めて下さい!」
という島原さんの熱はダイレクトに伝わった!
さてバスに乗ると「あと10分くらいで最後のじゃこ天屋さんに着きまーす」という。とうとう最後かぁ、、、
到着したのは、商店街の一角にある田中蒲鉾である。
田中蒲鉾(じゃこ天)
住所:愛媛県宇和島市中央町1丁目6番15号
TEL:0895-24-0215
さてこの店の社長の田中さんは、愛媛のかまぼこ界では有名なおっちゃんらしい。もうぼくは食い過ぎで苦しかったので、お話しとかは堀江君と二宮さんにおまかせである。
田中さんはかまぼこ原料には「エソ」しか使わないと言う。非常に大きな、型のいいエソを見せてくれた。
「これを安定入手するのが大変なんですよ」最近、入手できないアイテムが多すぎる。農作物とちがって海産物は海の中を覗くことが出来ないので、獲れた獲れないのアップダウンが激しく大変だろうな、と思う。
そんな田中蒲鉾のじゃこ天は、他のどの店とも違うオリジナルなものだった!もちろんハランボ100%のじゃこ天は、実にフンワリ、あっさりとした味なのである。
他の店では外側が香ばしそうな茶色になるまで揚げているが、田中のじゃこ天は揚げ色が着いたか着かないかのギリギリのラインで引き上げてしまう。だから水分も含まれており柔らかな食感なのだ。身肉はプリプリとフレッシュな感じが残っており、絶妙だ。
しかも、味付けが非常に薄口で優しい。
「うちのは本当にジャコの味をそのまんま楽しんでもらう味付けなんですわ。調味料はギリギリにしか入れてません」
そう誇らしげにいう揚げ師のおっちゃんが、大量に揚げたてのじゃこ天を下さった。
「いやぁ~ 食った食った 食いましたねぇ~」
こうして僕らのじゃこ天を巡る冒険の旅路は終わった。松山空港に戻るバスの中ではみな食べ疲れてぐったりしていた。もちろん僕も臨界点である(笑)
しかしそれにしても、僕にとっても今まで以上に愛媛を深く知る旅となったのであった。なんと言っても、どこで食べるじゃこ天も味が違う。同じ味なんて一つもない!
宇和島派と八幡浜派の違い、というのも感じてみたけど、僕には正直、どちらも美味しい!だって全然味が違うのだもの。だいたい、どこの蒲鉾店の人も一様にこう言うのだ。
「揚げたてのじゃこ天は、どこで食べても旨いですよ」
うん、それが全てだ。とにかく県外の人にじゃこ天の文化を味わって頂きたい!で、これが重要なんだけど、揚げたてのじゃこ天を食べてもらうには、愛媛に行くしかない!ぜひ愛媛を訪れて欲しい。
このblogにはまだアップしていないけど、このじゃこ天を食べるルート上には、日向飯(ひゅうがめし)という最高のぶっかけご飯がある!これは僕の本「出張食い倒れガイド」のメインコンテンツの一つなんだけど、とにかく愛媛はみかんだけではない、素晴らしい旨いもの満載の土地なのである。
僕は高らかに言いたい。
ビバ、じゃこ天! ビバ、愛媛!
今年はぜひ、愛媛を巡って頂きたい!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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