2005年4月 4日 from 常夏の楽園・沖縄を食べ尽くす
那覇市内に戻り、ホテルにチェックイン後すぐ、タクシーに乗ってキッペイに教えてもらったとおりの指示をする。キッペイは、居酒屋「こうちゃん」にて沖縄軍団と飲みをしながら、僕らを待ち受けるという寸法なのだ。そして僕と華は「琉球料理乃山本彩香」へ向かう。
実は前回の沖縄行で一番反応が大きかったのがこの店なのだ。
「私が一番行きたいと思っていた店に行ってしまうなんて!」
とか
「あの店は琉球料理では頂点の店なんだからこんなのに出しちゃダメ」
とか色々と言われた。山本彩香さんのなんたるかを全く予備知識無しで行ってしまったのが相当にタワケ者的行為だったらしい。しかもそんなビギナーなのに、彩香さんと家族同然の付き合いをしている川端父子の導きにより、特別個室で彩香さんに歓待を受けてしまったものだから、なおさらなのだろう。いや申し訳ないといいつつ、これも食い倒れ運。
で、その後、僕からはあの千住葱を、一番旨い時期に彩香さんの店にお送りしたのだ。卓にきいたところ「すっごい喜んでいたみたいだよ!」とのこと。よかったよかった。沖縄には長葱はないものね。
さて彩香さんのお店については前回のエントリを参照されたい。
■琉球料理逍遙~未来に繋がる郷土の魂を堪能させていただいた 「琉球料理乃 山本彩香」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000456.html
前回のが9月だから、ほぼ半年ぶりですな。こんなに早くに再訪できて幸せだ。
ちなみに覚えている人もいるかもしれないが、この山本彩香さんの店で目に付く文字(看板とかメニュー)は、すべて川端パパが書いておられる。そして、ぼくのこのブログの題字を書いて下さっているのも川端パパである!
さて店にはいると、前回同様、現在の一番弟子なのであろう、早苗さんという細身のさっぱりとした女性が迎えてくれる。
「やまけんさんのホームページみましたよ、、、いくつか料理の材料の名前が間違っていて、、、」
ああああああ ごめんなさーい
実は前回の記事で「イラブチャーの酢みそ」と書いているの、イラブチャーではなかったらしい!けど、正しいのが何だったかもう忘れてしまった!うわーん ゴメンナサイ、、、
「いえいえ いいんですよ(笑)」
とにこやかに、彩香さんの店の代表的な先付けである「とうふよう」が運ばれてくる。
いつもながらこのとうふよう、最高である。土産物売り場にあるようなのとは一線を画す上品な風味。チーズのような世界だが、確実に泡盛または日本の酒に合う。
そういえばブセナテラスの鉄板焼き「龍潭」で前菜にいただいたとうふようも非常に旨かった。これはある業者から仕入れているというものだったが、彩香さんの店のより淡い癖のない味わいで、豆腐ようのトップレベルにも様々な味の違いがあるのだなと思った。
さて
この店定番の前菜盛り合わせが出てくる。
手前の黒いのが、豚肉の上に黒ごまのペーストをのせた「みぬだる」、左側のが「たーむ(田芋)」を揚げたもの、そして右上のが、島ラッキョウの天ぷらだ。
「みぬだる」は非常に地味の濃い、極めて伝統料理食の強い一品だ。実に素朴な力強い旨さがある。味付けが最低限に抑えられているので素材の微妙な味がかち合い、噛む毎に複雑性が付加される。
そして今回はたと膝を打ったのがこの島ラッキョウの天ぷらだ。
昨夜、もうろうとした意識の中で、キッペイが持ってきてくれた島ラッキョウの塩漬けをポリポリ食べながら、思っていたのだ。「これは加熱したらまた違った味わいになるだろうなぁ」と。
島ラッキョウの塩漬け、これが少しだけピリッと辛みの効いた、強烈な香りの一品で、たしかに泡盛にベストマッチだ。よく酒肴に出されるエシャレットと少し似ている(ちなみにエシャレットと、フレンチの基本素材である「エシャロット」とは別物である)。タマネギに含まれる硫化アリルを同じく含んでいるのだろう、であれば、加熱するとこの辛み成分が甘さと香り高さに変換され、旨いはずだ、、、と思っていたのだ。
そう思っていたらこの天ぷらが出てきた!嬉しいなぁ
「粟国の塩」につけていただくと、ポリッとした食感はそのままに、やはり気高い香ばしさが立ち上る。すこしシャクッとした感触が残りながらも熱が通っており、官能的な食感だ。旨い!
これをいただきながら、ある相関・相似が頭に浮かんだ。それは北海道~東北で食べられる行者ニンニクだ。北海道ではアイヌネギというが、こちらは5月あたりから山中に自生しており、収穫して生で食べたり醤油漬けにしたり、ジンギスカンに入れたり、または富良野のラーメン富川のように餃子に入れたりする。ジンギスカンに入れて食べると、「3日間くらいは身体中から匂いがして、誰にも会えない」と言われるほどの強烈な香りを持っている。
島ラッキョウの位置づけは北海道のアイヌネギに似ている、というと的はずれだろうか?食材の特性からしてもそうはずれていないような気がするのであった。
さてくだんの魚の酢みそかけが出てきた!早苗さんこれなんて名前でしたっけ?コメントででもおしえてください~
この酢みそは甘めなのだけど、しっかりとした酸味とビリッとした辛みがしこまれていて、実に旨い。この辛みは何かな、と思ったら、なんと沖縄のトウガラシの泡盛漬け「こーれーぐーすー」だとのこと。なるほどねぇ!
というところで、卓パパが登場である!
「やあどうもこんばんは。先客のところから少しだけ抜けてきました。顔を見て、すぐに帰りますよ」
いやしかしいつもながらダンディーである。
沖縄放送など、返還後の沖縄のメディア界で活躍された卓パパ、ほっそりとした身体にすさまじいロゴスが詰まっているのである。華子が着物の仕事をしているということを知るや、琉球や鹿児島の着物事情などをレクチャーして下さる。
「大島紬はねぇ、、、」
という話になった時、僕の無知さ加減が暴露してしまった!「大島紬」は、東京の伊豆大島で織られているものだと勘違いしていたのだが、なんと奄美大島で織られていたのね!ひえええ
「ああ、こりゃ話にならないや。華ちゃん、やまけんを教育してやってよ、、、」
とパパもあきれ顔である。その分、華のことは非常に気に入って頂けたようで佳かった。着物と本の話でよい感じに盛り上がった。
さて
この店で僕が一番好きな料理がでてきた! 「どぅるわかしー」である!
「たーむ(田芋)」をつぶして豚肉やカマボコ、シイタケ、豆などと和えたもので、たーむの甘さと具材の味と旨味、ネットリとした食感が実に色っぽくて美味しいのだ!
じゅうしいもそうだが、油の使い方が絶妙だ。脂っこくないのだけど、料理のネットリ感やコクを出すために様々なところに使われているのだ。
もう一杯食べたいなぁ、、、
と思っていたら、彩香さん登場!
「あら、よく来たわねぇ、新婚さん!」
相変わらず、小柄な身体に凝縮・抑制されたパワーがみなぎったような方である。すぐさま盟友である卓パパとの丁々発止なたのしいお話しが始まる。
どうやら4月のNHK 「食彩浪漫」に、宮本亜門氏の心の料理ということで出演されるらしい。
「一品作ればいいのかと思ったら、『あれもこれも』っていわれて、ほとんど全部の料理を作らされたのよぉ~ 大変だったわ!」
読者さんはぜひ食彩浪漫観るべし! 現在発売中のテキストに掲載されているようだから、チェックを。
どぅるわかしーのおかわりは見事OK。やったぜ!
そしてメインディッシュとも言える、白みそ仕立ての、コッテリしながらも上品な「らふてー」。おそらくピーナツも裏ごしされて入っていると思う。
この他、色とりどり、心づくしの料理が運ばれてきたのである。
最後の締めはトゥンファンという、じゅうしいのような炊き込みご飯にを旨味の濃いダシをかけたもの。これも定番だ。
ダシを回しかけ、、、
蓋をしてしばらく蒸して、一呼吸おいて崩していただくのだ!
コレがもう最高! 琉球料理は実に人の食の欲求を絶妙に刺激し、満足させてくれる!
先回もいただいた大粒のタピオカをショウガ風味とシナモンの効いた甘い蜜でいただき、彩香さんも「ここは美味しい」と認める手作りちんすこうをいただく。
たしかにこのちんすこうは旨い!いままでちんすこうを食べて美味しいと思うことはなかったが、これは実に風味のある、ホロホロと崩れるはかない食感の逸品だった。
しかしこの上、卓パパと彩香さんにはお祝いの品をいただいてしまった。卓パパには琉球ガラスの超一流作家、稲嶺氏のグラスと皿を。彩香さんには店でも使っている琉球柄の湯飲みをいただいた!この上なき大感謝である。
このお二人、本当に仲が佳い。僕もこんな洒脱で洒落た関係というのを、50代以降に築いていけたらいいなぁ、と思った。
それにしても彩香さんの料理はやはり素晴らしい!
「もっとこういう伝統的な料理をきちんと出す店があって欲しいのよ。私のところは3部屋しかないから、お客さんに対応しきれない。」
という彩香さんは、本当に心の底からそう思っているようだった。
沖縄にいったら、ぜひ「琉球料理乃山本彩香」にトライして頂きたい。静かで充実した時間を過ごすことが出来ると思う。
そして、さらに夜は続く。「居酒屋こうちゃん」にてウナギオムレツが僕を待っているのである!
(続く)
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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