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2004年12月31日

おまたせしました!2004年のグランプリ結果はこちら!

「読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ2005」へのご応募ありがとうございました!
この年末の忙しい中、205件の有効回答をいただき、かなり興味深い結果を得ることが出来ましたよぉ。

早速報告をば!

まず、トップ10は下記のようになりました!

無二路、沖縄についてはかなり納得感があるのですが、国会議員食堂が3位とは、これは結構驚きましたねぇ!昨日も議員秘書のM氏と、木場のジムで汗を流したところだったのですが、これは朗報。来年はさらに国会ツアーを行わねばなりませんな!

すでに無二路、沖縄は「くいだおれの殿堂」に入っていますから、ここでは3位の国会議事堂編を殿堂入りすることにしたいと思います!

それと、9位と10位の港屋、イズミルは、実は投票が同数でした。同率だったということでご理解下さいね!

そのほかにもバードコート、ジャポネ、唯我独尊と、私も印象深い店がランクインしていますね。でも、読者のみなさんの嗜好が少しわかり、面白いところでした。

正月、どうせだらだらとしているつもりですので、補足コメントを交えながら2004年を振り返りたいと思います。まずは速報ということで!

読者の皆様に支えられてここまでやってきました。来年も自分の足場を見失うことなくやっていきたいと思います。

では、これから匠での忘年会とオーパの忘年会のはしごしてきます!
良いお年を!

Posted by yamaken at 18:08 | Comments (7) | TrackBack

2004年12月28日

秋田県太田町の特別栽培米 タカハシさんの米はグレートフルに旨い!

 先日のエントリで紹介したとおり、仕事で伺っている秋田県太田町の米農家である高橋さんから、特別栽培のあきたこまちをいただいてしまった。

 特別栽培とは、農薬と化学肥料の使用を、慣行農産物(通常の栽培方法で作られたものをこのように表記する)の二分の一以下にしたものを言う。昨年度中にガイドラインの改正があり、これまでは無農薬とか減農薬とか減化学肥料と呼称していたものを、「特別栽培」という呼称に一本化するということになったのだ。詳しくは農水省のQ&A(PDFファイルです)をご参照のこと。

 このガイドラインはあくまでガイドラインであり、法律ではない。しかし、消費者にとってはわかりにくさは解消されない場合がある。減と無の違い、そして農薬と化学肥料がいったい何なのかという認識が消費者には正確に伝わっていないこと、そしてなにより慣行農産物というものの定義である。しかしこの辺は食い倒れ日記的ではないので、いずれ兄弟blogである「俺と畑とインターネット」で書いていきたい。

 で、高橋さんをはじめとする太田町の一部の農家さんが、この特別栽培に取り組んでいる。農薬使用量や化学肥料の使用量を減らすという取組みは、おそらく一般的には

「ああ、安全なのね。」

という受け入れられ方をするだろう。消費者の農産物に対する関心時の中で、依然として農薬使用に関するものがほとんどだというのは、様々な調査からも明らかなのだ。

 しかし、食い倒れ読者にはきちんと理解して頂きたいことがある。それは、『減化学肥料』または『無化学肥料』その上の『有機』というものにおいては、味が違うはずなのだ。

 農産物、そして畜産物、きっと海産物もそうなのだが、味を左右する大きな要因として「それが何を餌としているか」がある。鯛も、天然の海で、海老ばかり食べているものと、養殖環境で人工餌を食べているものとでは味が違うのはおわかりだろう。牛・豚・鶏そして卵の味を左右するのはやはり餌だ。

餌×飼育(栽培)方法×産地×品種 = 味

という方程式が、最低限の要素だ。本当はもっと一杯の要素がある。第一次産業というのは本当に変動要素が多いのダ!だから、最もインテリジェントな産業なのである。

で、農産物においては、化学肥料を使うのと有機質肥料を使うのでは、明らかに差が出る。まず、作物の図体は、あきらかに化学肥料を用いた方が大きくなる。しかし、味もぼやけてしまうことが多い。と断言すると物議を醸し出すこと間違いないので、あらかじめ言っておこう。これは科学的な根拠に基づくものではない主観判断だ。僕は食に関わる人間として主観データを重視する。科学的根拠はないが、化学肥料の施肥量は食味に影響があるというのが僕のベースだ。

 ということで、減農薬であるということ以上に、減化学肥料という側面に、食味の向上という価値を見いだしてしかるべきなのである。

 ただ、残念ながらこれは理論上でしか言えない。化学肥料を多用する農家さんと、有機の農家さんとの産品を食べ比べて、明らかに差が出るわけではない。先に掲げたように、肥料は味を左右する要因の一つでありすべてではないからだ。そこが難しい部分であり、農産物の面白い部分なのだが、、、

というジレンマをまた思いつつ、高橋さんの米を炊いてみた。秋田県のNさんが、玄米でいただいた米を白米、7分づき、5分づきの3種に精米して送って下さったのだ。

この高橋さんの特別栽培米は、減農薬・減化学肥料というだけではなく、米ぬか資材である「米の精」というものを投入している。最近一般化した無洗米を製造する際に出る米ぬかや大豆カスを、農業用資材に加工したものだ。完全植物性だし、環境へのインパクトも押さえられる。ただしこうした資材を有効に使って、成果を出す=美味しい米を育てるということができるかどうかは、ひとえに農家さんの技術による。

どうなんだろうな、、、旨いだろうか。少し不安だった。実はしばらくまえに、同様の農法で栽培された米を食べてみたことがあるのだ。慣行栽培米と、特別栽培米、そして米の精を使った米、、、正直なところ、食感・食味ともに米の精が一番とはいいきれない状態だったのだ、、、

高橋さんの米を軽く研ぎ、吸水させ、いつものように業務用アルミ鍋で強火で炊く。粘りのある汁が鍋フタから溢れる。甘い米の香りがする、、、

旨い具合におこげが出来た。通常の火加減でこうなったということは、甘みの強い米なのだろう。何もおかずナシで一口運ぶ。ふわっと立ち上るあきたこまち特有の甘い薫り。噛みしめると、絶妙なネッチリ感がする!米の命は適度なネッチリ感だ!組織がしっかりとしていて、しかもネッチリと歯にまとわりついてくる。そして染み出てくる旨味、、、

すんげー旨い!

いつもミルキークイーンをお願いしている、同じ秋田県の大内町のひろっきいのところからあきたこまちも送られてきたが、今回の高橋さんの米はそれを少し上回る美味しさだ!

やられたぁ!
ビバ!高橋さん! 賛辞を送りたい。

こんなに旨い米だが、以前も書いたとおり、通常ルートで販売する際には、ある数値に設定した網目を通し、一定以上の大きさの粒でなければ価格が落ちてしまう。そして、減化学肥料栽培は、小さい粒になりやすく、鑑定価格が下がってしまうことが多い。

しかし、どう考えても旨い!

価格側面が上向きにならないと、特別栽培を辞める農家さんも出てくるだろう。そりゃ当然だ、苦労が報われないわけだから。そして消費者は旨いご飯をたべられなくなるのだ。

じゃあ、どうすればいいのか。僕は業者としてサポートしていきたいと思うけど、消費者にとって一番簡単で有効なことは、美味しいものにはきちんと賛歌を送るということだろう

食い倒ラーの皆さん、米に対する審美眼を磨いて、旨いと思った米には、賛歌を送りましょう!その方法は色々あると思うけど、例えば米袋に書いてある販売責任者に、商品名と購入場所を明確にした上で「美味しかった」という連絡をする。そういうデータは、事業者はきちんと記録するはずだ。米屋だったら、きちんと会って口頭で「このお米、美味しい!」と言うこと。

これは米だけの話ではない。日本には賛歌を送るという習慣があまりないから、メーカーはそれだけでかなり奮い立つハズだし、何より「苦労して特別な造り方をして良かった」と思うに違いない。

日本の流通は、メーカが誇りを持てないようなものになってしまっている。逆に言えば、それは「恥」という意識も持たないということだ。きちんと声を伝えていくことが、健全な食を作っていくことに繋がる。

ただし、それにはセンスが必要だ。ごねたり文句いったりクレーマーになるのではなく、相手をいい方向に導くような、そんな賛歌を送ってあげて欲しい。

これ、食い倒ラーの基本だ。

さて残念なことに、高橋さんの絶品な米は、一般には手に入りにくい。太田町の特別栽培米の数量が少ない上に、取引先がある地域に限られているのだ。どこで販売されるかは知っているが、ここで言うわけにも行かない。

なので、とにかくちらしなどで「秋田県太田町の特別栽培米」という文字があったら、注意してみて欲しい。まぁ高橋さんの米だけが来るわけではないから、保証はできないが、、、そういうストーリーを持っている米だということは、言っておこう。

いやしかし
旨い米だった、、、しばらくオカズはいらないや。

Posted by yamaken at 14:49 | Comments (4) | TrackBack

友よお前はスゴイやつだ! 本城しんのすけ亭で大・餅つき大会であった。

僕の人生の中でも最重要人物の一人である、親友の本城しんのすけというやつがいる。学生時代は料理が好きな仲間として遊び、キャンパスを面白くするために奔走し、馬鹿なことをやってお巡りさんに怒られるのに付き合ったりしていた。修士課程に一緒に進み、修了間際にベンチャー企業に就職、というか興銀を退職してベンチャーを立ち上げた人と二人で事業を始めると言い出した。そんなので大丈夫かよと思っていたら、その事業「楽天市場」はあれよあれよという間にIT系企業を代表する会社になっていった。

そう、楽天の創業副社長だった男だ。とはいっても、それは世間で一番通りがいい肩書きであって、僕ら大学時代のダチの中では、彼のことは「しんのすけである」としか言いようがない。

そのしんのすけが、全国で最年少の校長先生になった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041227-00000170-kyodo-soci
楽天での成果はしんのすけにとってはまだ途中の出来事にすぎないのであった。

しんのすけは、大学時代に僕の母校である自由の森学園を訪れている。公開研究会という、いってみればオープンキャンパスの高校版のイベントの際に、遊びに来てくれたのだ。思えばその頃からしんのすけは、教育を自分の最重要関心領域としていたのだ。

校長という職を得たというのは、単に物語の始まりに過ぎない。これからしんのすけには大変な苦労が待っていると思うが、もし関係ある方々が読者にいたら、ぜひ暖かく見守ってやって欲しい。必ずや日本の教育に資する活動をしてくれるはずだから。食い倒れ党は100%応援する!

この週末は、そんなしんのすけ亭で、餅つき大会を実施したのである。


総勢30名以上が、しんのすけのマンションのパーティールームを占拠し、餅つきを4回転したのであった。

僕は、三浦の高梨ファームから大根5種類を持参しからみ餅5変化というのをやってみた。

もってきたのは、三浦大根、紅芯大根、青長大根、黒丸大根、辛み大根である。

いやしくも大根を語るのであればこれくらいはくっとかないといかんです。

しんのすけがレンタルで餅つき用具を借りてくれたわけだが、餅つきのなんたるかを知っている人間がいたおかげでなんとかなった。

ホストであるしんのすけの餅つき勇姿である!

しかし ことこういった日本の伝統的な道具、しかも柄が長いものについては、農作業従事者に勝る使い手はない。餅つきは、畑で鍬を打つよりも簡単な作業である。なぜなら鍬打ちの動作から、土に刺さった刃を持ち上げて土塊をほぐす動作をなくしたものが餅つきの動作だからだ。ということで俺の出番であった。

しかし久しぶりにこうした伝統的身体道具を使ったのですぐに息が上がる。んー ゼーハーゼーハーと死にそうになってしまった!


餅はすぐに丸められ、各種そえものに絡めフィニッシュ。

ちなみにこの手前の黒豆納豆と普通の納豆は、僕のblog読者である白井さんが銀座で買ってきた富良野・富士食品の納豆である!旨かったぁ、、、

僕は餅のようにモチモチした食べ物は今ひとつ食指が伸びないのだが、今回の餅は旨かった!結構食べました。

この餅つき大会の顛末については、加賀谷と金子によるアソブラボのコンテンツに詳しいのでぜひご覧じろ。

■アソブ研レポート 「日本の風物詩、モチつき大会でアソブの巻」

終了後はいつも通りしんのすけの部屋にてディープに呑み。食って呑んでばかりだ!

まあ、本日はお前が主役だ!これから未明の世界に立ち向かう前の休息となるんだよな。
応援団は計り知れないほどに居るから、心おきなく新しいパラダイムを創ってくれ。道半ばで倒れてたら、何があっても助け起こしに行くよ。
本当におめでとう!

Posted by yamaken at 00:08 | Comments (3) | TrackBack

2004年12月27日

大・ベーコン大会in某所 バードコート軍団&堀江君もこれで燻製野郎だ!

ご存じの通り僕にはハム・ベーコン・ソーセージ作りの師匠がいる。それは静岡県で畜産関連の業務に従事しておられる関師匠である。
過去数回このblogでもそのハムソー作りを公開してきたとおりだが、ここにぜひ連れていきたい人たちがいたのだ。それはバードコートの野島さんと、ライブドア堀江君である。

どちらの決断も一瞬であった。

「やまけんさん、それ、連れてってください!シャモを燻製にしたらどうなるんだろうって、ずっと思ってたんですよ。」by野島さん

「えっ、、、俺も行きたいッス、、、」by堀江君

じゃあ行こう!

ちょうど、僕の兄弟分である工藤ちゃんも来られるので、みなで行くことにした。工藤ちゃんは、純米酒を燗して飲ませる居酒屋である「五穀家・日本橋店」の店長を辞めた後、長らく他チェーンの店長をしていたが、とうとう来年度中には自分が100%みることが出来る店をオープンする運びだ。板前は、日本橋の某店で板場にいた五十嵐君だ。いよいよ何かが始まる予感のメンバーばっかりなのであった!

ちなみにベーコン作りのイロハは以前のエントリに書いたとおりだ。僕は淡い味わいのハムよりも濃厚ギトギトなベーコンを好むので、豚バラを2キロ買い込んだ。これまではソミュール液(塩とハーブを溶かし込んだ液だ)に豚肉を漬け込む方式を採っていたが、それだけではつまらない。今回は初めてのチャレンジとして、乾塩法を採用する。乾塩法とは、液に漬け込むのではなく塩とハーブを擦りこんでおくという方法だ。この方式のほうが簡単なので、今回は双方を作り分けてみる。

巨大な豚バラ肉を3等分し、二本をソミュール液(うち一本は贈答用)、一本を乾塩法とする。漬け込み前日に塩を万遍なく擦りこみ、下漬けをする。

ソミュール液の方だが、これまでの経験上、あまりスパイス類を多用すると味がぼやける、くどくなるという傾向がみられた。そこで今回はシンプルに構成してみようと思ったのだが、、、やろうとするとそれじゃつまらないからいろいろ放り込んでしまうのであった!粗塩、胡椒、ベイリーフ、ニンニク、セージ、大分の臼杵から送られてきた完熟カボス、ブーケガルニ、日本酒を沸騰させる。

これを冷まし、ビニール袋に豚肉を入れ、ソミュール液をひたひたになるくらいに入れる。乾塩法は出来るだけ簡素にということで、塩、胡椒、セージのみ擦りこんでビニール袋に包む。

この状態で5日間置いておき、前日に流水に3時間ほどあてて塩を抜く。一旦、細胞すべてに塩分を行き渡らせたうえで、その塩分をほどよいところまで抜くのが燻製の下ごしらえの最重要点なのだ。

塩分が入った豚肉の組織は化学変化を起こしているので、生肉とは全く違う味わいを持つのである。

これを寒空の風にあてて乾燥させる。水分を含みすぎていると燻煙がうまく表面についてくれないので、乾燥は重要な過程なのだ。つるしたほうがいいのだけども、面倒なのでとりあえずザルに乗せて床に就いた。
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さて、朝5時に工藤ちゃんが愛車で僕の家まで迎えに来てくれる。バードコート軍団、堀江君とは高速のサービスエリアで待ち合わせである。どちらも、一週間前から万全に肉を塩漬けにしている。野島さんのところでは合鴨、シャモ、そして豚肉を塩漬けにしてきたとのこと。堀江君も社長日記に書いているように、万全に塩漬けをしてきたようだ。

ちなみに堀江君には、

「フェラーリで来いよな」

と言ってあるのだが、

「フェラーリしかないッス」

ということであった。

某高速の某海がみえる、何も商業施設のないSAで待っていると、大爆音が聞こえてきた。フェラーリ参上である。

僕は車にはほとんど関心がないのでどーでもいいのだが、すごいエンジン音である。しかも堀江君、すごい豚肉を持ってきやがった!

東京エックスっていう豚を漬けてきましたよ!」

なんだよ銘柄豚じゃないか!水を空けられてしまった、、、

気を取り直して、堀江フェラーリを従えて、なんと時速80kmを遵守し一路会場へと向かったのであった。
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さて某所にて師匠や岩澤さんらと再会。早速仕込みに入る。

師匠によるケーシングの模範演技。ハムは形を整えて燻製にし、そののち70度という絶妙な温度で、タンパク質が凝固し過ぎない程度に火を通すのである。

ハム・ベーコンだけではなくソーセージも作る。モクモクファームのスパイスで味付けをして、腸詰めしていく。堀江君とミポリンもほれこの通りご満悦である。

こちらはバードコート軍団が持参した塩漬けシャモと合鴨肉である。

さて仕込み終わった肉どもを燻煙機(スモーカー)に吊していく。1.5キロ見当の肉塊が20本あまりあるので、かなりの運動量だ。けどまぁ、トータルワークアウトで鍛えている堀江君には全然楽勝だろう、、、ほれ、デッドリフトだ!

スモーカー内部には吊るし肉がごっそり。こういう専用のスモーカーでなくとも、段ボールなどでも燻製は可能だ。火事にならないように気をつけないといけないけどネ。

さてしばらくの間、煙を燻さずにコンロの火だけをかけて、水分を飛ばす。温燻といって、肉に熱を通す+煙で燻すということになる。ここからは数時間、待つばかりである。

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さーてそれでは地鶏タイムだ!

静岡県と言えば、僕が大好きな駿河若シャモという地鶏の産地だ。そして、その若シャモ生産組合の長である鈴木恵美子さんが、今回も駆けつけてくれた!バードコートの皆さんと若シャモを出会わせてみたいというのが、今回の一つの趣旨なのだ!バードコート軍団には、奥久慈シャモを持参頂いている。これと恵美子さんの若シャモをいっしょに食べてみようという、おそらくこれまでにない地鶏食べ比べ大会である!

奥久慈シャモと駿河若シャモをさばくのは、当然ながらバードコート軍団の皆様である。

野島さんのサバキの技をとくと拝見させて頂いてしまった。野島さんは技術を隠すことなく、スイスイッと鶏を捌いていく。それをじっとみていた板前の五十嵐君が、「切るんじゃなくて、包丁をあてて骨から剥がすという感じですね」と言っていたが、まさにそうだ!

野島さんは穏やかに手を動かしながら、五十嵐君の質問にも懇切丁寧に答えてくれる。一流の人とは、こういう人を言うのだ。秘密なんて、どこにもありはしない。だって、毎日の鍛錬が必要なんだもの。みるだけで真似ができれば、料理の世界に一流も二流もあるわけがないのだ。

■地鶏をさばく野島さん動画(3MB)

このようにして、まさに地鶏総覧会といわんばかりの状況になったのであった!

これがバードコート軍団によって捌かれた駿河若シャモの刺身だ、、、と言いたいところだが、僕が撮影する前にすでに居合わせたみんなに食べられてしまいこれしか残っとらんかった!

こちらはピッカピカに鮮度のいい、若シャモの内臓群だ!

このレバー、ハツ、砂肝達は、何もつけなくてもうまかった。鶏肉は、熟成しなければ旨くない牛肉とは違って、鮮度がいいほど美味しく食べられる。内臓はその最たるものだ。この日の朝に捌かれた若シャモの地鶏は、これはもう絶品中の絶品である。個人的にはこの内臓でラグーを作り、太いパスタと合わせたいものだ、、、

会場の駐車場にしつらえたドラム缶バーベキューピットに炭を敷き詰め、鶏を焼きに入る。

最高の焼き手によって、若シャモと奥久慈シャモがいい具合に火を通されていく。依然として彼女募集中の菊リンも焼きまくっている!

奥久慈シャモと駿河若シャモの食べ比べと相成ったわけだが、やはり予想通り、まったくベクトルが違う!奥久慈シャモは端麗辛口、筋肉質のストレート純情派だ。若シャモは脂とコクの乗った、芳醇ウマ口フェロモン系なのだ!

バードコートが望む肉質は奥久慈シャモであるわけだが、全く違う食材として若シャモを推したい。おいらはやはり若シャモ派だったりするのであった!


鶏肉は、かなり火が回るのが早い。燻製にかけていた奥久慈シャモができあがってくる。

野島さんが中華包丁で捌く。肉はあっさりめに仕上がっていて、柔らかく絶妙な味わいだ!

「もうすこし強めに塩をして、もうしばらく燻煙をかけておくともっと脱水されるね。」
といいながら味わう。バードコートのメニューに燻製がのるのはいつになるだろうか!?

おっつけ、ベーコンとハムもできあがってきたようだ。師匠が切り分けてくださる。


できたてのハム・ベーコンは、冷えてからのそれとは全く違う!冷えると、肉が締まり脂が固まって落ち着くのだが、熱が通って落ち着いていない段階のハム・ベーコンは、ここのタイミングでしか味わえない乙なものなのだ!ふんわりした食感、塩分はそれほど前面にでてこない、薫り高い肉が味わえる!
関師匠の作るハム・ベーコンはとてもあっさりめの味わいだ。

「昔は女房も『あんたのハムはしょっぱい』と言っていたものだけど、最近は何も文句を言われないよ。僕の好みがだんだんと落ち着いてきたんだなぁ、、、」

うーむ僕も20年後にはそう言っているのだろうか!


この日は県の岩澤さんの人脈でスバラシイ人たちが集まっていた。この女性は、数年前に開催された利き酒大会でチャンピオンとなった石上さんだ。彼女は静岡県下の旨いものを紹介する活動をしていて、この写真で手に持っているのは、自分たちが田んぼで育てた米で仕込んだ米焼酎である!

これがまた実に味わい深い、くどさのないすっきりした飲み口の米焼酎だった。さすがである。

そして堀江モンも食べている浜松のウナギの白焼き。

炭火でカリッと焼き直し、本わさびで食べるとこれはもう絶品であった!

さて
そうした酒宴の中、粛々と煙は燻り続いていた。

肉に色が付き、熱も十分に肉の内部に浸透した状態になったのがこの状態である。

できたぁ、、、

みよ、数ヶ月は楽しめそうな肉塊が燻りあがった。

野島さんも堀江君も大喜びである。

「こうやってできるんだな、、、やり方はそれほど難しくないな、勉強になりました!今度は店でもやってみよう、、、」by野島

「いやぁ、、、家のベランダでやってみようかなぁ、、、」by堀江

しかしこんなに大規模にスバラシイ企画が出来たのも、岩澤さんと関師匠のおかげである。また、竹炭アーティストの金丸さんも、最高に旨い自家製五穀米のおこわを作ってくれた!そういえば堀江君にあげていた竹炭のレリーフは、いまごろ社長室を飾っているのだろうか。利き酒チャンピオンの石上さんもパワフルオンナだった。鈴木恵美子さん、若シャモはやっぱウマいっすよ。その他ご参加頂いた皆様、どうもありがとうございました!来年も燻製やりましょう!

Posted by yamaken at 15:15 | Comments (9) | TrackBack

グランプリ投票を開始します。

さて、

読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ2004を開催します!

12月20日から3回に分けて紹介した20のエントリの中から、貴方が食べたいor行きたいor感動した!というエントリを3つ選んでください。その他、どういう読者さんがいらっしゃるのか、簡単なアンケートも組んでみましたのでよろしくお願いします。個人情報はもちろん厳重に扱います。

投票ページはアソブラボの金子と加賀谷に作ってもらいました。とっても素敵だ!

■投票ページ
http://www.asoblab.jp/kuidaore/

ま、こんなの荒らしたって意味ないとは思いますが、お一人様一回の投票を守ってくださいね。
いちおうプレゼントを一名様に差し上げようかと思っております、ハイ。
〆切は30日の23:59とします。つまり大晦日にベスト10を発表致します。

ま、みなさんも師走でお忙しいでしょうから、ぜひお早めに!

楽しみだ~ よろしくお願いします!

Posted by yamaken at 14:50 | Comments (7) | TrackBack

2004年12月26日

読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ2004 エントリ一覧その3

さて
ベスト20を紹介する記事を書くだけで大変だぞぉ、、、今回でようやく20エントリが選出される。


食い倒れをしていて非常に嬉しい瞬間というのは、予期しないで入った店が素晴らしかった時だ。僕も出張に出かける時は、なんらかの下調べをすることが多い。しかしそれとは別に、町を歩いていて「これはっ!」と感じる店にはいることもある。そこが素晴らしく美味しい店だったりすることがあり、その場合に感じる悦びは、あらかじめ調査をして行った店の数倍になる。「出会い」を感じるからだ。

そういう意味で今年素晴らしかったのがこの店だ!

■ビバ金沢!素晴らしき店、酒と肴と人との出会い 金沢駅百番街「黒百合」http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000184.html

この黒百合、料理も旨いし、呑んでいる常連さん達がまた渋い!このエントリで書いた、隣り合って呑むことになったおっちゃんは、実にいい感じの金沢料理の案内人であったのだ。うーん この人とはまた呑みたい。

実物の僕を知っている人ならお分かりと思うけど、僕は相当にオープンな人間なので、初対面の人と仲良くできることが多い。酒場でいい出会いがあったときは、本当に嬉しいものだ。心に残る食い倒れ旅であった。


そして今年の後半、インパクトをもって迫ってきた店と言えばこのトルコ料理「イズミル」だろう。これまた食い倒ラーである「おうさるさん」に先導してもらったこの店、味・雰囲気ともに良かった!

■阿佐ヶ谷に日本一のトルコ料理あり! おうさるさんのアテンドで未知との遭遇を果たす! 阿佐ヶ谷「イズミル」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000520.html

実はこの店、このエントリ以降まだ再訪できていない。おうさるさんによればイズミルには「やまけんのblogみてきた」というお客さんが結構きているようだ。うー 俺も行きたいゾ!スレイマンとエリフに会いたいなぁ。

あと、今年はけっこう企画モノへのチャレンジを始めた年でもある。その中でも、自分でも面白いと思っていて、かつ周りからも「あの企画はすごい!」と迎え入れられたのがこれである。

■国会議事堂 議員食堂は食い倒ラーのパラダイスであった!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000336.html

国会議事堂内の食堂をすべて制覇しようというこのプロジェクト、二回実施したが、先はマダマダ遥か遠い。この企画が産まれた背景は、国会議員秘書のモロイさんとの出会いである。僕の家に大量のブルームキュウリが送られてきた日、地下鉄木場駅に夜11時に来てくれたら分けてあげるよ、という酔狂なエントリを書いたら、6人くらいが来たのである。その中にモロイさんが居たのだ。その際に彼の方から「国会にメシを食いに来ませんか?」という申し出があり、実現したのだ!以後、このモロイさんは僕の家からすぐの処に居を構えていることもあり、かなり密接に付き合いをさせていただいている。有り難いことだ。

この国会関連記事はまだ始まったばかりだ。今後もやるのでぜひ期待して頂きたい。ていうか、モロイさんが議員秘書を失職しないように選挙応援しないとなぁ、、、


さて、次は、無二路と同様、店ぐるみで今年最も仲良くさせて頂いたところである。

■北千住 地鶏焼き 「バードコート」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000429.html

とにかくこのバードコートの野島さんとは、親しくさせて頂いた。もうこの方は最高である。プロフェッショナルで、謙虚で、人格者だ。本当にシャッポを脱ぐ。

野島さんとバードコートのスタッフの皆さんとは、いろいろと記憶に残る食い倒れを一緒にさせていただいた。例えばこのエントリ。

★北関東に絶品キャンプコース登場! 東京から2時間で奥久慈シャモ&ダッチオーブン&温泉三昧を満喫しよう!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000516.html

地鶏の生産組合に少しでもお客さんが来るように、そして大子町に都会から人が来るようにという同期で開催するあたり、野島さんの人柄出ているのがお分かりだろう。

それと、僕の食い倒れ仲間を招いての長島農園でのダッチオーブンパーティーをやったのをご記憶だろうか。

★シークレット・ダッチオーブンパーティの週末
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000526.html

このパーティーのエントリ後、「なんで俺or私を呼んでくれないの~!?」という講義が殺到した。でもなぁ みんな呼んでたら100人越しちゃうんだって。で、このエントリでの白眉は、やはりなんといってもバードコートの一同による、奥久慈シャモの照り焼きチキンバーガーなのである。シャモの卵を使った自家製マヨネーズと、バードコート秘伝のタレで焼いたシャモ肉を特製バンズに挟んで食べる超本格派の照り焼きーバーガー、店では頼んでも出してもらえない!これはもう幻である。その他のみんなが作った料理もすべて旨く、なんとも素晴らしい会になったのであった。

そうしたところを含め、バードコートのエントリをノミネートさせて頂く。


あと、僕の仕事に関連して、生産農家さんの姿を紹介するエントリも、読者さん達から支持をいただいた。中でも今年は「秋田イヤー」だった。秋田県内二カ所の農村で仕事をいただき、月二回はお邪魔できるという最高の環境にあったのである。

その中で、今年ダチになった伊藤ひろっきいの実家に、稲刈りをしに行ったこのエントリは非常に自分でも印象深い。

■新米ざんまい 秋田県大内町の大家族の宴は最高だった!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000481.html

どうやら僕は二日間で米を一升分食ってしまったらしいが、、、秋田県の家文化を味わう素晴らしい旅だった。いやー あの茄子がっこは今思いだしても、米と一緒に食べたい、、、


さて今年は初めての、海外で実況blogというのをやった。そう、タイのバンコクで開催された農業情報学会の視察に行った時のエントリ群だ。

■タイ・バンコク周遊編(4日分ほどある)
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000400.html

バンコク在住の同期生達と会ったりしていろんなところに食いに行った。その詳細を、逐一blogで紹介していったわけである。超一流ホテルであるフォーシーズンズに宿泊したので、インターネットはかなりいい環境(高かったけど)だった。おかげで更新に必死であったが、、、毎日飯が旨かったからいいや。

さて、そのバンコクでの現地執筆blogに慣れたのを爆発させたのが、この一連のエントリ群だ。

■常夏の楽園・沖縄を食べ尽くす
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/cat_ieiuaiouo.html
(↑エントリ数多いので、ひとまとめページにします。下の方にスクロールしていってね。)

今年最大の旅といえばこれだろう。沖縄出身の川端卓による凄まじい旅程が組まれての旅行だった。しかも現地ではタクの親友であるキッペイをはじめとする仲間達が、僕らを迎えるため手ぐすね引いて待っていてくれた。食べ物ももちろん旨かったが、その沖縄人たちの気持ちが、最高のご馳走だったのだ!ああ、また行きたいよ、、、


さて
そしてこれがベスト20に入らないわけがない、今年度僕も最高の体験の一つとなっているのが、このエピソードだ!

■真のドラマを観た!第31回全国バーテンダー技能競技会で、門前仲町「オーパ」水澤君はどう戦ったか!?
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000330.html

まだ読んでない人がいたら絶対に読んで頂きたい。いつもの行きつけの店のバーテンダー君が、なんと日本一になってしまったのだ!その現場である神戸の会場に、僕は応援にいくことができた!

このエントリほど更新が待たれたのはないだろう。読者さんから「早く書いてくれぇ~」という催促が来まくった。僕も友人の津田ちゃんの家で、寝ずにエントリを書いた。また、このエントリでは動画を掲載したのだが、それもまた好評だった。動画はやはり雄弁だ。今後、多用していきたいと思う。来年はヘルシンキで世界大会だが、絶対に応援に行くぞ!


とまあ、こんな感じがベスト20だ!自分でみても厚みのある一年だった。だって、ここにあげていないエントリの中にも、すごくインパクトのあるのが多いんだもん。苦悩の末、選びました、、、


さて、このベスト20、ぜひ再読していただいて、投票して欲しい。投票ページのアドレスは別途記載する。

12月最後の週、大晦日の日中に締め切ってベスト10を発表する!皆様よろしく!

Posted by yamaken at 01:38 | Comments (1) | TrackBack

2004年12月23日

読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ2004 エントリ一覧その2

さて、僕的ベスト20エントリの紹介を続けよう。

お店紹介もさることながら、僕が重要視しているのは、地域の地場メーカーが創り出した、愛情と文化溢れる食品たちだ。出張で地方に行くと必ず大資本系ではない食品スーパーに足を運ぶ。調味料の棚に行くと、これはもう知らないメーカのオンパレードで、醤油など買い求めてしまうのだ。

そんな中、まだ雪深い山形を訪れた際に、農業改良普及員の方に連れられていった地元農家さんの物産展で衝撃的な出会いをしたのが、この「なんばんの粕漬け」だ!

■2月18日
山形のおばちゃんが作った旨いもんみつけた
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000217.html

おそらく史上最高レベルに辛いであろうトウガラシの効かせ方、そして味噌かと思いきや、鼻孔に抜ける酒粕の美しい香り。クルミのコクと胡麻の風味とニンニクの香り。このハーモニーは最高。文句なしに今のところ世界一のご飯の友であると僕が認定する。あのライブドア堀江君にも一本あげたらはまってしまったくらいだ。

このなんばんについては、後日重大発表があるので、楽しみにして欲しい。


さて
僕のこの日記、よく大食い系、B級グルメ系と言われるが違う!と個人的には抵抗をしている。けど、こういうエントリがあると、抵抗虚しく「やっぱ大食いじゃん」と言われてしまうのであった。

■10月13日
本日、ジャポネにてジャリコ「親方」制覇 with おうさるさん
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000483.html

ジャポネが何だか分からない方は、初登場エントリをご参照のこと。知らない読者さんには相当衝撃的なエントリだったようで、以後、「ジャポネ行ってきました!」という報告がよくあったものだ。女性でもファンになってしまう例が続出。ジャポネ学の権威であるおうさるさんとの出会いもあり、忘れられない邂逅であった。

さて4月には、今年度最高とも言える大型ヒット店のエントリが登場した。

■4月25日
初登場にして食い倒れ殿堂入り! 豪快・繊細・オンリーワンのシチリア料理 北沢 「無二路(ムニロ)」は食い切れねぇ! の序章
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000283.html

そう、いまだにここの読者さんが「無二路行ってきました!感動でした!!」と興奮して報告してきてくれる、日本では数少ない本場のシチリア料理を食べさせる店である。この店との関係はエントリ登場以前からだったのだが、このエントリ書いて以来、爆発的に予約が入り、オーナーの大塚さんは目を丸くしていた。シェフの重(しげ)さんは「もうちょっとお客さん減ってくれた方が楽だよぉ」と言うほどに。

そして、無二路といえば伝説の第二回オフ会であろう。

■5月22日
一生忘れられない大感激 大盛会のオフ会 無二路にて弾けまくったマジック連続の一日!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000311.html

瞬く間に38人が集まったこの第二回オフ会、最後の「ハッスルポーズ」を決める映像をみた編集関係の人が「あれは尋常じゃないですよ、、、」と唸るほどの熱気だったのだ。今でも思い出すとホロッと来てしまうが、これ以降、オフ会は開催していない。だってこの当時は一日のヒット数が1000件くらいだった。いまはトップページだけで5000ヒット超えているから、募集をかけたら何人くるかわかったものではない。面倒なのでこれ以後、オフ会は封印したいとおもったりして、、、

ま、いつかやることになると思うけど。

さて、次ぎに感動した出会いと言えば、北海道の富良野にて、マスターの家に泊めて頂いた「唯我独尊」のカレーだ。


2004年07月01日
富良野はスゴイところだった! カレーファンよ「唯我独尊」のソーセージカレーを食べに行こう!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000358.html

このblogにはカレーが登場する率が高い、、、のは、それはもう僕がカレー好きだからなのだが、唯我独尊のカレーは非常にオリジナルであり旨い!しかもマスターの人柄と、旨いものネットワークの作り方が最高だ。富良野を水先案内してくれたD黒さん(お元気ですか?)との関係もあいまって、非常に僕の記憶に残っている。この後、全国のデパートの催事でマスターが出てくる場合は僕に「Webにかいとけ」連絡がくるようになったというのも笑える。


次ぎに、衝撃的な料理との出会いということでいえば、これだろう。

■5月26日
驚愕! こんな路麺があったのか!? 虎ノ門「港屋」の肉盛りそばは、久しぶりにびっくりした傑作だ!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000316.html

麺とくに蕎麦は大好きなカテゴリだが、これは久々に大ヒットであった。虎ノ門の畜産関連団体の部長さんに連れて行って頂いたのだが、あまりにもすごいコンセプトに、やみつきになってしまった。ただし味が濃いので、築地王さんなどは「塩辛すぎる!」と言われてしまったのだが、、、でもここの大盛り肉そばは、ボリュームと言い見た目と言い、満足度は100%以上である。

あとこれは自分的に好きな料理だからということなんだが、宮崎が生み出した前世紀最大の発明的料理である「チキン南蛮」ははずせない。

■7月13日
夏真っ盛り! 宮崎出張編 チキン南蛮と日南海岸の魚料理を堪能しまくり
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000114.html

チキン南蛮の素晴らしいところは、南蛮酢とタルタルソースの味付けの違いでいかようにもオリジナリティが発揮できるところだ。どの店でも味が違う!僕が好きなのは魚山亭宮崎空港店なのだが、、、

という感じだ。

うーむしかし ベスト20エントリの候補選出だけで異様に大変だぞ。まだあと7編エントリしないと、、、それだけ色んなことがあったと言うことだなぁ。こんなに濃い食体験ばかりしているということに、自分でもあきれるくらいだ。

明日は残りの7編を紹介します。で、投票開始しますよ!ぜひよろしく。

Posted by yamaken at 08:53 | Comments (0) | TrackBack

2004年12月21日

そういえば

昨日20日が、宝島社の「このブログがすごい!2005」の発売日。

このブログがすごい!2005

宝島社
2004-12-21
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丸善日本橋店に行くと、15冊くらい平積みされていた。

すでに手に取ってみた人もいらっしゃるだろうか。ここでは最終順位はあかさないけど、なんと食い倒れ日記がベスト3に入っているのである!

でも編集部が書いているblogを観ると、「今年売れないと来年は発刊できない可能性が高い」そうだ、、、

一回こっきりしか出なかった企画の上位じゃぁ寂しい! 皆さん980円ですからぜひ買ってあげて下さいな。なにとぞ、何卒、、、

Posted by yamaken at 00:52 | Comments (9) | TrackBack

2004年12月20日

読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ2004!

師走だ、、、年の暮れ、なにか一つ面白いことをやりたいと思っていた。昨年は、7月から始めた食い倒れ日記の中で、自分的に最も重要と思われる店や食材から「食い倒れの殿堂」を選ぶという企画をしたものだ。

■2003年 食い倒れグランプリ発表 (出張の部)
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000161.html

■2003年 食い倒れグランプリ発表 (首都圏の部)
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000162.html

それからもう一年。今年は思い切って、自分でももちろん選ぶけど、読者の皆さんがどのようなエントリが面白かったかということで選ぶ「読者が選ぶ食い倒れ日記グランプリ」というのをやってみたいと思う!

とはいっても、実は2004年1月1日以降、どれだけエントリを書いてきたかというと、12月22日の時点で370エントリ(!)もある!とてもじゃないが、このすべてから選んでもらうというのも大変だ。だいたい、アンケートフォームのリストボックスに入りきらん!

ということで、僕の方で勝手にベスト20を決めさせて頂いた。ここから読者の皆さんに選んで頂きたいと思うのである。

ただし、いろいろと問題があって、僕の記事にはいくつかのパターンがある。純粋に「これが旨い!」という紹介記事と、あるイベントに僕自身が入り込んでドキュメンタリーチックに経過を報告している記事。焦点が当たっているのも、料理なのか食材なのか、はたまたシチュエーションが面白いのか等、いろんなパターンがある。その中からどのように選んで頂くか、、、これは5分ほど悩んでしまうテーマだ。

でも、そんなことを言っていても始まらない。なので、もうすべてひっくるめて、「一番印象に残っている」エントリであり、「これをorここで食べたい!」と思わせる力をもったエントリを選んでいただきたいと思う。

投票自体は、これからアンケートCGIを組んで頂く関係上、数日後に実施する。それまでの間に、激動の2004年を振り返る意味でも、ぜひベスト20エントリを復習して頂きたい。ということで、本日から数編ずつ、ヤマケン選のエントリを掲示していこうと思う。

また、「このエントリは面白かった(旨そうだった)から、ベスト20に入れろ!」という声はコメントに書き入れてくださるよう。

------------------------------------------------------------
では、まず5編を。

僕が文章を書く時は、ほぼすべて一気に書き下ろしである。最初に構成を考えて見出しを付けて、、、ということは、5000字以上の文章でないとまずやらない。どんな原稿も皆そうだ。その中で、かなり気合いを入れて綿密に書いた文章があるとすれば、このエントリだろう。

■1月14日
ぷるぷる官能小説的オムライス 銀座「喫茶YOU」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000176.html

紫色の文字色を使うという装飾を初めて取り入れたのもこのエントリだ。ていうか、以来ほとんどやっていないのだが、、、

次に、まだかなり寒い時期だったが、山形にて連続2カ所講演を行った際のエントリだ。そう、蕎麦王国山形。その山形でも最重要人物と言われている、蕎麦界の仙人とも言えるお方に蕎麦打ちを教わったのである!


■2月08日
山形遊行編その2 幻の蕎麦を幻の達人の手で打っていただいた!「蕎麦打ち虎の穴」の巻
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000204.html

ここで出てくる鈴木氏について、後日ある友人から「あの鈴木製粉さん手づから教われるとは、ものすごい光栄なことなんだよ」とのことであった。この蕎麦体験はまさしく感動的であった。


さて何を隠そう、僕自身がかなり気に入っているエントリがこれである。

■2月12日
越前の国はソースカツ丼の聖地であった!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000208.html

ソースカツ丼が旨い!ということもあるのだが、カツのフタ乗せという技が、この辺一対の皆様の習慣として根付いているという衝撃の文化的差異を発見し、もう講演が終わるのを待てず一気にかき揚げたのがこのエントリなのである。ああ、でもソースカツ丼また食べたいなぁ、、、


そうそう、僕は大食い系の人間として認知されつつあるらしいのだけど、自分ではそうは思わない、、、けど、数回くらい、本当にどんどん底なしに食べられるという時もある。特に出張に行く時は、出会う食べ物が一期一会だと思うのでついつい頑張ってしまう。その代表的なのが、6月の帯広行きでの下記出来事達だろう。

■6月29日
帯広にも生ラムジンギスカンの名店があるのだ! 「白樺」で7人前食べた。http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000355.html

生ラムジンギスカンは札幌の「だるま」で堪能したが、この白樺も二度行って二度とも感動したのだ!本当に一人で7人前は食ったと思う。しかも、昼食を他の場所で食べて20分後にだ。

その数日前に起こったこのエントリは、おそらく僕の食い倒れ史上最大の何敵であった。そう、黒い豚丼「鶴橋」である。

■6月26日
豚丼王国帯広にて、超特大豚丼と対峙した。 帯広「鶴橋」再訪
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000353.html

注意して欲しいのは、この豚丼を食べる前にすでに一杯、十勝っこというニューウェーブ豚丼店で食べて挑んでいるのだ。この戦いは大変だった、、、

とりあえず上記5編は必読かな、と思う。今日はこの辺で。

Posted by yamaken at 23:04 | Comments (7) | TrackBack

HOTEL DE ごはん 呑み会にお招き頂いた! 


週刊アスキーの後ろから2ページ目の連載HOTEL DE ゴハン」の執筆陣に加わらせて頂くということは先日報告したとおりだが、第一回目の取材に先だって、打ち合わせと称しての飲み会に誘って頂いた!

まずは九段下の駅からすぐの週アス編集部へご挨拶。編集主幹であるF岡さんに案内をしていただき、編集部内を練り歩く。思ったより静かで、超緊張!

なんと嬉しいことに、週アスの超人気コンテンツである「カオスだもんね!」の担当であるアカザーさんともご挨拶!

「F岡さんから訊いて、やまけんさんのWebみてますよぉ、、、いいっスね!食い倒れ!」

と、まさしくあの口調である!嬉しいなぁ、、、カオスの単行本3冊をいただき有頂天。

その後、連載のご担当者であらせられるI女史をご紹介頂く。ゴージャスリッチスパンコールバリバリのI女史は、もう編集部に入ってきただけでその存在感をビシバシと放っている!

その後、お二人とタクシーで神保町に移動。あの「恨ミシュラン」の神足さんがお待ちだというのである!その神足さんが通う寿司屋がこの「金寿司」である。

■金寿司
東京都千代田区小川町3丁目
03-3291-2816

店内カウンター奥に、あの神足さんがあの蝶ネクタイ姿で座っていらした!うーん お隣に座らせて頂くが、しばらく緊張でいつものペースが出ない。こんなの久しぶりだなぁ。

この金寿司、神足さんはもう10年近く通っているそうだ。しかしこの優しげな大将とはそれほど会話を交わすことが無いという。「曲者なんだよ、アイツ」とのことだ。

この大将が握る寿司は完全に江戸前!すべてに技と手仕事が入っている。

中でも感動的に旨かったのは、この車エビだ。茹で上げてからしばらくザルの上で適温まで下げ、その後、エビ味噌をシャリに噛ませながらキュッと握る。

美しいプレゼンテーションだがそれ以上に香りが素晴らしい!一口にかぶりつくと、ジュワッと海老のジュが染み出て、かつあの悩ましい香りがブワンと溢れる。人肌くらいの温度が、最大限に味蕾に旨味を直撃させる!

あまりの旨さに、もう一貫所望してしまった、、、この車エビ、絶品である。ずっとまえ、家の近くにあった寿司屋に入ったら、全然美味しくなくて、仕方なく皮肉で海老を褒めたことがある。それとこれとは全く次元違いだ!

当然ながら漬けも江戸前だ。

さっと湯にくぐらせ表面を固めて漬けにしてあるところがまた江戸前だ。漬け時間が短めらしくフレッシュな赤身の風味を味わえた。

で、この穴子が旨かったんだ。

嬉しいのは、きっちり焼いてくれていること。僕は煮穴子は苦手だ。母の実家のある瀬戸内では焼きが中心だったから、そちらの印象が強い。

金寿司の穴子はきっちりと焼かれていて、軽い焦げ目が魅惑的な香りを100%増幅している!ツメも甘すぎず身に寄り添う味だ。うーむ これも旨い!


卵焼きには小柱がちらしてあったりして、甘く美味しい。出汁の含ませ方も絶妙であった。

江戸前寿司といっても本当にいろいろあるのだな、、、店によって流儀が違うのが楽しい。金寿司は、とにかく優しい握りだ。ふんわりとしているのに崩れないシャリもいい。ネタと一体になった時の優しさ、暖かさを感じる、、、

どうも、ご馳走様でした!(週アス編集部様)

この後、F岡さん絶賛のホッピーを呑ませる店で一杯飲んでもうろうとし、その後は神足さん・I女史とともに銀座に沈んだ。この日の顛末は、F岡さんのblogでも書かれているゾ!

週アス連載第壱号は、年明けすぐになりそうだ。また告知するゾ!

Posted by yamaken at 12:29 | Comments (4) | TrackBack

長島農園からの手紙

先日のエントリに呼応して、長島勝美君から連絡がきた。

これについては今後、姉妹blogにて公開していく。

■俺と畑とインターネット
http://www.yamaken.org/mt/oreto/

自然死に瀕している日本農業の中、着々と次代を築こうとしている若い世代の生産農家もいる。そうした人たちにスポットを当てていきたい。関心のある方はぜひご覧いただきたい。

Posted by yamaken at 12:25 | Comments (0) | TrackBack

オールドボーイの作者

まったく食い倒れとは関係のない話だ。

友の加賀谷のblogに、韓国の映画「オールドボーイ」を絶賛するエントリがあったので、僕も観に行こうかと思ったが、いきたい時に上映を逃してしまった。ちなみに僕は、映画を観るのは年間で1本くらい。そう、映画にはあまり惹かれることがない。現実世界の方が面白いからかもしれない、、、

見逃したけどまあいいやと思っていたら、オフィスの近くのコンビニの書棚に、オールドボーイの原作が復刻廉価版のコミックで出ていた。分厚くて500円くらいのアレだ。手にとって眺めたが、「ふうんこれかぁ」と思っただけで買わずにいた。

オールド・ボーイ 1 (1)
嶺岸 信明

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しかし、ずっと何か、心のどこかに引っかかっていた。

その数日後、高校時代の親友と電話で話をした。バードコートに堀江君達と入る前に、40分くらい立ち話をしたのだ。そこで、衝撃的なことを教えられたのだ。

「あ、そういえばオールドボーイって映画あるだろ。あの原作、狩撫 麻礼がかいてるんだってさ。」

瞬間、背筋を電流が走った。

「原作者の名前が違うじゃないか!」

「うん、アレはまた仮名を使ったらしい」

なるほど、、、なぜ心にしこりが残ったか、そしてこんなタイミングで人生に差し込んできたのかがわかった。

狩撫 麻礼(かりぶまれい)は、僕が高校時代に読み漁った、漫画の原作者だ。代表作は色々あるのだが、高校の時にバイブルのように読んでいたのが「ボーダー」という漫画だ。

内容は時に間が抜けているものの、壮絶だ。狩撫 麻礼の漫画の特徴は、ある種の「型」が存在することだ。主人公は、この世の中のメインストリームには乗れない、境界線上(ボーダー)を歩く者。それに対し、「あちら側」から刺客が送り込まれてくる。そして刺客との対決がある、、、というのが型だ。神話の構造が世界各国で類似するように、狩撫 麻礼の作品世界も同じ軌跡を辿る。アメリカのポール・オースターがニューヨーク三部作で同じプロットの作品を書き続けたように、だ。

高校生時代の僕らは、下宿(僕は高校と実家が2時間くらいかかる距離だったので、最後の年度は友人とアパート暮らしだった)でボーダーを読みあさった。セリフをほとんど覚えてしまい、会話の端々にセリフが覗くくらいだった。世界の成り立ちの秘密を覗き見たかのような興奮を覚えていた。

その後、プータローをしていた時も、予備校に行った時も、大学に進学してからも、社会に出てからも、実はこの狩撫 麻礼による世界観はついて回ってきた。ボーダーは全巻が実家においてあり、ことある毎に読んでいる。

そしてこのタイミングでオールドボーイだ。高校の親友からの電話の後、すぐにコンビニ(am/pmだ)に走って1巻と2巻を買って読んだ。

最高に面白い!

映画は観ていないが、おそらくこの作品の世界観は原作を読んだ方が理解しやすいのではないだろうか。これをどんなに凝縮しても2時間では足りないだろう。

本日、出たばかりの3巻を買った。明日、4巻を買って昼に読むつもりだ。双葉社からはきちんとしたコミックスが発売されているようだが、僕はこの、1ヶ月スパンで2冊でる廉価版でいい。狩撫 麻礼は「土屋ガロン」と名乗っているが、どういうことなんだろうな。

ま、とにかくこの再会を楽しみたいと思う。いや、食い倒れに関係無い話で申し訳ない。

Posted by yamaken at 01:24 | Comments (3) | TrackBack

2004年12月18日

秋田の深淵を覗く その3 こいつぁ 一生に一回は体験したい。目の前でジュワジュワ「日本壱」の超絶石焼き


さてホルモンを堪能した後、すみやかに次なる店に向かった。今度は、秋田の沿岸部、男鹿の料理である「石焼き」を楽しみにいくのだ。

石焼きとは、海の幸を木桶に沢山入れて味噌と湯を足した中に、じっくり焼いた石を放り込み、ぐらぐらと沸かして食べる汁らしい。類似の調理法がいろんなところにあるが、男鹿ではこれを石焼きと称する。これを店で食べさせてくれるのが秋田市内の「日本一」である。

■日本一
秋田市中通6-14-15

居酒屋風の店内に入り、カウンターへ。

燗酒を飲みながら茄子のがっこ(漬け物)とハタハタのい寿司を頼む。ハタハタのい寿司は、実はこれが初めてだ!北海道にもこのハタハタ寿司はあるのだが、寿司と言ってもにぎり寿司ではない。鮒寿司のように、ご飯は発酵促進剤として使われる。ハタハタとご飯、麹、人参を漬け込んで乳酸発酵させたなれ鮨である。

ハタハタ寿司は、、、思った通りの味がした!これはオスの身なのだろう、ブリコは入っていないが、その分、身の上品な旨味と酸味を味わえる。

旨いなぁ、、、と思っていたら、後ろから「ちょっとスミマセン」という声がかかる。石焼きの登場だ!

どさっと置かれたのは、洗面器とタライの中間くらいのどでかい木桶だ!その後ろから、熱気をはらむ焼いた石がお通りになる!

これを木桶に投入!

ジュワっという凄まじい音と、いきなり立ち上る水蒸気。

「熱いっ!!」

と従業員が手を引っ込める。水蒸気にやられたらしい。そしてN氏も「熱いッ」と飛びすさる。こちらは瞬間的に沸騰した飛沫が顔にはねたらしい。

この様子を動画で撮影したので、瞬間的にぐらぐらと沸き立つ石焼きを観たい人はどうぞ!

■石焼き投入の動画(5.66MB)

立ち上る湯気。すさまじいプレゼンテーションだが、何より二人前でこの大きさなのが笑える!

この木桶になみなみとみそ汁と大量の葱、魚がぶち込まれているのだ!

いただきまーす。瞬間的に沸騰するので、魚介の身が締まって旨味がドロドロに溶け出さないのが、石焼きの特徴だそうだ。たしかに魚は旨く感じる!とくにブリコをはらんだハタハタはネットリと糸を引き、実に旨い!

ちなみにこれが石焼き用の石。火山岩だそうだ。

あまりにたっぷりとあるみそ汁を飲み干すことはできず、具だけ頑張って食べて店を出る。いやー 暖まった。

------------------------------------------------------------
その後、繁華街の川端近辺では珍しい(?)シックなバーへ。

実にきちんとした佇まいのバーだった。美人バーテンダーにパスティスの水割りを作ってもらい楽しんだ。

「もう一軒、蕎麦を食べていきませんか?」

そう言われて断る僕ではない。呑んだ帰りの客で混み合う「山科」へ。


さすがに寒いので暖かい蕎麦を食いたいが、その一方で酒に火照っているので冷たい蕎麦も食いたい。ということで両方食べてしまう。

■ばかし(卵入り)

ばかしとは、タヌキとキツネ両方いれたものを言う、、、なるほどね!

■ナメコおろし

ヒンヤリとした蕎麦にナメコのぬるぬるが気持ちいい。この辺でもう意識は結構もうろうとしてきている。

食べたぁ~
代行を呼んで頂き、駅前の東横インへ。Nさん、どうもありがとうございました。

この秋田での仕事もあと数回で終了だと思うと、かなり寂しい。次回、心おきなく食いまくろうと思う。

Posted by yamaken at 17:30 | Comments (6) | TrackBack

秋田の深淵を覗く その2 絶品の焼きホルモンにノックアウトの夜だった!

太田町での仕事が終わって秋田市内への帰り道、県庁のN氏がニコニコしながら、「旨いホルモン焼きを食べましょう!」と言ってくださる。そう、しばらく前から聴いていたのだが、秋田ではホルモンを鍋で焼いて食べさせる文化があるらしい。

「秋田全域というわけではないんだけれども、鹿角(かづの)市というところに有名な『幸楽』という店があるんですよ。その店から直送のホルモンを出す支店のようなものがいくつかあるんですが、実は秋田県庁のすぐ近くに一店あるんです。」

なんでも、鹿角市に駐在する県庁職員は必ずそこのファンになり、秋田県庁に戻った後もその店で懐かしい味を楽しむのだそうだ。そういうわけで、秋田市内に住んでいてもこのホルモンを知らない人は全く知らないのだという

県庁から歩いて2分のところに、そのホルモン「伸栄」があった。

■ホルモン 伸栄
018-863-1020
秋田県秋田市山王6丁目2-10


たしかに看板の左の方に、「花輪幸楽より直送」という文字がある。

中にはいると、座敷とカウンターに客がビッシリと入っている。

予約をしないと入れない時もあるということだったが本当にそのようだ。座敷に通されると、そこにはジンギスカン鍋がしつらえてあった。

メニューを観て欲しいのだが、ホルモンが一人前450円と安い!

ここではホルモンとキャベツを頼み、このジンギスカン鍋にこんもりと載せて焼いていくのだそうだ。

さっそく3人分のホルモンとキャベツ2人前、豆腐一丁を頼む。ホルモンはすでに秘伝の調味ダレに漬かっているらしく、すぐに出てきた。これをジンギスカン鍋に全部ぶち込み、さらにキャベツを全体が隠れるようにのせていく。


もとの漬けダレが多めなので、水分がジンギスカン鍋の脇に溜まる。タレにはニンニクが多量にぶち込まれているようで、僕の狂暴性を最大限に引き出す猛烈な香りが辺り一面に漂う。いや、漂うなんてもんじゃなくて充満する!

「赤身が無くなってきたら火が通った証拠ですから。」

と言われるが待ちきれないゾ。でも、内臓系の肉はきちんと火を通した方がいいからね→皆様。しかし、きれいなホルモンだ。余分な脂をきれいに処理している。内蔵がきれいというのは、家畜がいい環境で育っている証拠だ。きっちり火が通るのを待って、さっそく口に放り込んだ。

ムチっと弾力のある歯応えながらプチリと噛み切れる肉質。そしてほとばしるニンニク香と甘めのタレのハーモニーが口中で炸裂する!

旨い! 今まで食べた焼き系のホルモンで一番旨い!

これには本当にビックリした!ホルモンの質は実に最高。どうやら銘柄豚の処理場から直接引っ張っているらしく、新鮮さがわかる。シロといわれる小腸部分以外にも色々な部位が入っているが、どれも新鮮な歯応えに味で、とにかく旨い!

また、一緒に加熱されたキャベツがタレを吸って、爆発的な旨さである!ご、ごはんが食いてぇ~!でもまだ二件目に行く店もあるみたいなので必至に我慢。

ちなみにこれがタレである。その組成はまったくわからん!ニンニクのきかせ肩が半端じゃないのだが、ここまでにんにくの旨味と香りを出しながら上品さをキープしているのはすごいことである。

いや、マジでこの店は旨い!感動してしまった、、、仕上げに焼きうどんというのを試してみたが、焼きうどんというより、漬けダレで炒め煮する感じのうどんだ。

これがまた秘伝ダレを吸って旨いのなんの!いやもう最高である。

この幸楽のホルモン、なんと通販が可能なようだ。今度買うぞ!ジンギスカン鍋じゃないとこの味が出ないらしいから、一緒に買おうと思う。

いや、マジでビックリ!こんなに旨いホルモン食ったら、他でもう食えないよ、、、

「秋田でも、市内の人なんかは知らないのがミソです。」

本当にそうなんだろうか。僕の身の回りの秋田県人、ひろっきい、鈴木元編集長、石田さん、岩谷君、この店、知ってました?

次回秋田来訪時にもぜひここで、こんどはメシといっしょに食いたいものだと思う。ヤマケン絶賛印をつけておこう!

Posted by yamaken at 16:20 | Comments (6) | TrackBack

秋田の深淵を覗く その1 秋田県の食材はさらに奥が深い。

今日は秋田県太田町の米の仕事で秋田入り。この冬はじめての雪景色に出会った。途中で止んだが、車のフロントガラスにシンシンと当たってくる雪を見ていると、いかに現在の関東で冬を感じにくくなっているかを実感してしまう。

空港から1時間少しの道すがら、産地の直売所に寄って頂くと、また関東ではみない面白いものが沢山あった!
「ヤマモト先生(←と呼ばれている)、秋田では、芹(セリ)は根っこも美味しく食べるんですよ。ほれ、こうやって売っているのも根がきれいに洗ってついたまま売ってるでしょう?」

おおおおおお 本当だ!関東では芹の根はきれいに取られて売り場に並ぶが、秋田ではこの根を賞味するという。そう、千住葱のエントリでも書いたが、植物の根は実にその植物そのものの味がするものなのである。しかし芹の根の部分を好むとは恐れ入った!

「だから秋田県では他県と違って、根が旨い品種を植えているんですよ。」

なんともビックリである!根が旨い品種なんてのがあるのかぁ!

「昔はどの家庭でも田んぼの畦の間に植えていたもんですが、最近では基盤整備とで田んぼをきれいに作り直してしまうので、芹を植えるスペースが無くて。だから芹専用の田んぼがあるんですよ。」

そう、芹なんて実はそこらへんに生えているものだったはずなのだが、、、これはまた、芹の根っこを食べに来ねばなるまい。

太田にあるもう一つの直売所を覗くと、素晴らしいアイテムを発見!なんと秋田県が世界に誇るスモークである「いぶりがっこ」の原料となる、いぶり大根である!

昔のエントリを読んだことがある読者さんならおわかりだろうが、いぶりがっことは、干し大根を燻したものを麹などで沢庵(たくわん)に漬けたものだ。ちなみに「がっこ」とは秋田弁で漬け物のこと。いぶした漬け物という意味なのである。

枯れ木のようなテクスチャーだが、鼻を寄せると確かに燻煙香がする!直売所には複数の農家のお母ちゃんが商品を持ってくるので、このいぶり大根もいくつかある。そのそれぞれの燻煙香がオリジナルなのだ!

考えてみれば、いぶりがっこは家庭によって大根の味、干し具合(脱水の具合)、燻煙の木の種類、塩加減、漬け床の材料によって千変万化の味になるはずだ。文化多様性万歳!秋田を旅行することがあったら、空港のお土産屋に売っているいぶりがっこではなく、郊外にある産直所で買うことが出来る、真空パックされただけの無愛想ないぶりがっこの一本ものを買い求めて頂きたい。大概、生産者の名前が書いてあるから、できれば複数購入して、味を比べてみて欲しい。本当に全部違う味なのだ!

さて太田町の農協事務所に行くと、玄関口に漁協の軽トラが停まっていて、なんとハタハタをトロ箱で販売していた。

「一箱3200円でいいよ!」

と、ブリコの詰まったハタハタを販売している。こんな内陸まで売りに来ているところをみると、おそらく水揚げが多すぎて売れ行きが悪いんだろう、ということだった。

会議が終わった後、生産者さんと話しをしていたら、

「ヤマモトさん、ぜひうちの米を食べてよ!今すぐ持ってくるからさ!」

とわざわざ米をとりに帰って持ってきてくださった!

貴重な、特別栽培米である。ざっくりいうと化学肥料と農薬使用量を通常の半分以下にして育てる農産物を特別栽培と呼べるのだが、栽培方法の大きな変更を余儀なくされるので、通常栽培から転換するのは大変な苦労を伴う。

「やっぱり通常栽培と比べると収穫量が落ちるんだよね。あと、米の粒が大きくならないから、通常米と同じ網目だと落ちる米が多いんだよ。」

米は、粒の大きさが規格化されており、定められた網目(メッシュ)から落ちてしまう小さな米は等級が下がってしまう。で、化学肥料と堆肥などの天然資材では肥料成分が化学肥料とは違うため、作物の大きさが必然的に変わってしまう。端的にいえば化学肥料を使うと作物の図体がでかくなる傾向があると思う。でも、化学肥料の割合を少なくした方が旨いと、僕は思う。

この国の農業技術の世界では化学肥料と有機質肥料の差異について語ることがタブー視されているきらいがあるのだが、流通関係者としての個人的な眼からは、ある程度以上の技術を持つ生産者が栽培したものについては差があるといわざるを得ない。ま、その分、作物の重量が減ってしまうのだ、きっと。

ということで脱線したが、減化学肥料で栽培しているので、米粒の大きさも若干小さくなってしまい、等級が下がってしまう率が高いということなのだ。米穀店やスーパーで特別栽培米をみて欲しいのだが、おそらく通常よりは高い。なんでかな?と思う人も多いだろうが、そういうわけなのだ。では味は絶対に通常栽培米より旨いか?といわれると、それはそうとは言い切れない。生産者の技術、産地に由来する土質・水質による味の差があるだろうから、、、

けれども、農薬と化学肥料の使用量を減らし、苦労して作られている米を応援して欲しい。さらに味の違いがどうか、試してみて欲しい。

「ま、俺たち生産者からみたら、明らかにこっちの方がウマいっす。」

と彼は断言していらっしゃった。それがすべてだろう。そんな苦労をして作られた米だ。これはきっちりと味わせていただくことにする。

秋田にはそんな食材が一杯なのだ。秋田県人は口下手で宣伝もヘタなので、都市部で秋田をアピールするのには無理があるように思う。だから、こちらから秋田に出かけるしかないな、とも思う。

しかし、秋田県の課題は、旅人が秋田の本当の”家”の文化に触れる環境がないということだろう。よく友人から「そんなに美味しいなら私も旅行に行きたいから、いいコースを教えて」といわれるのだが、僕のblogを観て頂ければ分かるとおり、観光ルートではないところに素晴らしい秋田の文化があるのである。一番いいのは、農家に民泊させていただくことだが、つても何もなければ夢物語だ。

グリーンツーリズムという、農家民宿を拡張したような構想・動きがあるのだが、これがもっと簡易にできるように整備して欲しい。秋田、山形という東北の素晴らしい文化では、グリーンツーリズムはすっぽりとはまるはずだ。うーん そういうプロデュース出来たら面白いのになぁ、、、

生活者の皆さんはそういう声を色んなところであげましょうね。というオハナシ。

Posted by yamaken at 15:52 | Comments (3) | TrackBack

2004年12月17日

本当にびっくりした再会の夜

今日は怒濤のような一日だった。

「このブログがすごい!」の見本誌が届いた。順位はまだ20日の発売まで言えないが、ちょっと驚く順位だった!

そして親友からも、素晴らしい朗報があった。彼にとっての新しい、大きな船出である。

これで大きな事件はないだろうと、どちらかというと心を鎮ませる夜にしよう、と思っていた。

そして夜は先日講演をしたあるグループにお招き頂き、表参道の新進気鋭の和食店にて会食をいただく。一流の出汁とはこういうものかと唸らせられる京料理だった。

一通りいただき、お茶を飲んでいる時、個室の外で僕に手を振る店員さんがいた。

数年前から連絡のとれなくなってしまっていた、僕がぞっこんだった板前の斉藤さんがそこに居た!

10秒ほどなにも言葉が出ず、目玉が落ちるんじゃないかと思うほど眼を見開き、そして肩を抱き合った。彼はこの店の店長という肩書きだったのだ。彼もまさか僕が客として来るとは思っていなかっただろう。本当にビックリした。しばらくは何も言葉が出なかったのだ。

6年程前、野村総研という会社に勤めていた頃、会社のあった保土ヶ谷の、あまりメジャーではない路地に、「寿司 専科」という店があった。ある宅配寿司チェーンが、アンテナショップとして出していた店で、斉藤さんは創作メニューの実験をしていたのだ。ランチで入って、彼のスペシャリティである「専科丼」を食べ僕は卒倒しそうになった。海鮮がタップリ酢飯に載ったちらし丼なのだが、韓国のビビンパのように上から卵の黄身と特製の甘辛タレ、そして絶妙にカイエンヌペッパーを効かせた肉そぼろを載せてある。これをしっちゃかめっちゃかに混ぜて食べるというもので、いまだに僕の中でのちらし寿司のナンバーワンはこの料理である。

以来、なんと僕は保土ヶ谷に居る間、週の3日はそこでランチを食べ、週の2日は夜に寿司をつまみに行っていた。ランチでは本格味噌つけ麺やらカレーやら、訳の分からないしかし凄まじく旨い料理が600円程度で食べることが出来た。今思っても本当に懐かしい。

その彼が本社に異動になることで、この店の歴史は幕を閉じた。常連客はそれを惜しみ、年に数回、キャンプや花見で集まっていた。僕も数年前までは参戦していたが、だんだんと疎遠になり、彼らの行方もわからなくなっていたのだ、、、

「いや、マジでビックリしたよ!」

「こっちこそ、、、でもね、実はこの店も12月で辞めるんだよ。」

なんと彼は来年2月、板前として店に入ることになったのだ。今の店では彼は店長という名のホール担当。でも僕は彼には板前として調理をして欲しい。彼自身そう思っていたようで、2月には新しいスポンサーにより店を出すのだという。

「場所はね、遠いんだよ、、、八王子の小作っていうところでね。」

なぬぅうううううう 本当に遠い!

けど、彼が板前をやるのであれば絶対に旨いに決まっている!

八王子近辺の皆様! いの一番にレポートするから、ぜひ彼の店を応援してやってください。味は保証出来るはず。その辺は今度チェックしておきます!

しかし
本当にビックリした。あるグループが僕を呼んでくれなかったら、この再会はなかった。沖縄水先案内人のタクによれば「ヤマケンの出会う力は半端じゃないね」ということだが、本当に今年はどうかしている、と思った。

出会う力を授かったのも、天と親のおかげだろう。これはぜひ世の中に、食べ物を通じて還元していきたい。まずは来年2月の八王子に期待だ!

Posted by yamaken at 00:30 | Comments (2) | TrackBack

2004年12月16日

築地王さまの痛快ガイドブックが上梓された! 「築地を食べる~場内・場外・”裏”築地」

このblog右サイドバーの友人達へのリンクの項に、「築地市場を食べつくせ!」というblogへのリンクがある。これを執筆しているのが、某TV番組で築地マニアのチャンピオン「築地王」の称号を獲得した小関 敦之さんだ。築地界隈の表と裏の店をすべて廻っているのではないかという念の入った食のガイドで、ぼくの食い倒れ日記にもトラックバックをいただいたりしている。

その小関さんが、僕も関わっている銀座 食学塾に顔を出してくださっている。その素顔、お名刺を見てびっくりだったのだが、某有名広告代理店勤務の真面目そうな方である。築地の市場業者とかじゃないだろうかと思っていたら全然違った!

その小関さんが、待望の築地本を上梓された!

築地で食べる 場内・場外・”裏”築地
小関 敦之

光文社
2004-12-15
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有り難いことに謹呈いただいたので早速読んだ。 素晴らしい!

世に築地市場を舞台にしたグルメ本は色々あるけれども、この小関さんの本が最も真実をついているだろう。

例えば、築地といえばとにかく寿司というイメージがある。日本最大の魚河岸があるのだからこれは当然かも知れないが、「やすくて旨い」的イメージがまとわりつく。しかし小関さんは、『安い』というのはコストパフォーマンスであって、一流店では5000円のところが3000円というようなのが築地の安さだと解説されている。しかし消費者は「安い」というと1000円そこらの値段を求めてくることが多い。こういう安物買いをしようとすると、実は全く市場に関係ない外部の企業が資本を入れている、客の呼び込みをしているような安売り店に引っかかってしまう。そういう店では技術もないしネタも悪く、こういうところで食べた客は築地に悪いイメージを持ってしまうだろう、、、という。全くその通りだ!

では、どのように築地を楽しめばいいのか!?ということを懇切丁寧に教えてくれているのが彼の書である。適度な写真、自分が店に通っているからこそ書けるであろう内容。築地に始めていく人には必携の書だと思う。

しかも築地に行ったら僕としては必ずここで食べてしまう「きつねや」については、本当に僕と全く同じ嗜好でいらっしゃる。肉豆腐とご飯を頼み、ご飯の上にかけて生卵をのせ、混ぜながら食べるというところまで全く一緒である。なんと光栄なことか!

ああ、僕もこんな本が書きたいものだ。築地王様、羨望のまなざしをあなたに向けたいと思います!

Posted by yamaken at 11:40 | Comments (2) | TrackBack

これは粋なコンセプト!江戸料理ときまじめ蕎麦を楽しく食す 青山「源十」

とある企業の新事業企画のお手伝いをしている。「可愛い女性ばかりを参加させていますから!」という言葉に釣られてのこのこと青山の超一等地に自社ビルを持つ某社へ行く。そのとおり美しい女性陣と企画についての話をした後、「じゃあこれからは場所を変えて」ということに相成った。

青山一丁目から外苑前に至る路沿いの二階に上がる。

「僕は蕎麦が好きなので、新しい店ができるとチェックするのですが、ここは最近出来たばかりでまだ入ってないんです。ベンチマーク前にやまけんさんをお連れするのもなんなのですが、ぜひ一度と思って、、、なんだか『江戸料理』を標榜している店なんですよ!」

そうして通してもらった店がここである。
■「源十」
たしかこの辺にあった。

江戸料理というコンセプトをきいて、かなり面白そうだなと思ってはいた。品書きをみると、先陣を切って並んでいるのは豆腐料理だ。土佐豆腐、みそ漬け豆腐等が並んでいる。いうまでもなく豆腐料理の集大成「豆腐百珍」からのものだろう。眼鏡をかけた店員君に「どれがおすすめなの?」と聴くと、「僕は嶺岡豆腐が美味しいと思うんです」と教えてくれた。嶺岡豆腐は、なんと牛乳で練り込んだ胡麻豆腐だという。それも日本で酪農発祥の地となった嶺岡から乳をとりよせているという。そいつぁ旨そうだ!

その他にも本日のおすすめがある。

左端の「飛龍頭(ひりゅうず)」に、同行のI氏と共に「ひりゅうずいいですねぇ」と話していたら、店員君は「オヤ」という顔をしている。

「お客さん、ひりゅうずってよくお分かりですね。なんのことか分からないお客さんが多いんですが、、、」

ここの読者さんなら当然知っているだろうけど、ひりゅうずとはがんもどきのことだ。関西では「ひろうす」とも言いますな。
※関西では「ひりょうず」とも言うらしい。関西と言っても色んな文化圏があるから、呼称も多様なのでしょうね。鶴岡さんご指摘ありがとうございました。
ちなみにがんもどきは、水分を抜いた豆腐をすり鉢であたり、そこに具材を入れて丸め、油で揚げたものを言う。学生時代に一度だけ造ったことがあるのだが、ヘタをすると店で売っているのより数倍旨い。

「お客様、それではぜひ江戸料理のおすすめとして、黒鯛の昆布締めをお食べ下さい。」

「ん?これって何か趣向があるの?」

「はい、珍しい調味料を使っています。」

「分かった!煎り酒でしょ?」

というと、店員君はびっくりした顔をする。

「煎り酒、ご存じなんですか???」

「うん、だって僕、食べ物の仕事してるんだもの。」

煎り酒とは、これもご存じの方には言うまでもないが、醤油のような大豆発酵調味料がまだ高価だったころに、重要な役割を担っていた調味料だ。日本酒を煮きって梅干しを入れて煮詰めたものが基本で、鰹節などの旨味成分を入れることも多い。江戸期の重要な調味料である。

「とりあえずいろいろ持ってきてよ。楽しみだなぁ 江戸料理。」

「わ、わかりました!」

と店員君が厨房に戻る。でも、煎り酒なんて結構いろんなところで語られているのを見かけるけど、やはり一般の人はそういうのは興味ないんだろうか。と言う話をしていたら、いのいちばんに持ってきてくれたのはこの煎り酒を使った黒鯛の昆布締めだ。

端整な盛りつけ!そして見てお分かりの通り、薄く色づいた調味液に浸されているだろう。

これが煎り酒である。黒鯛を口に運ぶと、いい感じに昆布で脱水され、慣れている。ただ、具材に旨味がついて付いてしまっているから、煎り酒本体のストイックな旨味はあまり伝わってこない。そう店員君に申すと「煎り酒を持って参りました!」と、別皿に入れてきてくれた。

この煎り酒、実に旨い。梅の風味は奥深くに隠れて、密やかに丸みを帯びた酸味がほんのり残っている。鰹が使われていると思うが、過度な旨味ではなく、塩梅も実に佳い。そのまま上品な出汁としてのめてしまうくらいの味わいだ。

「嶺岡豆腐です!」

これが牛乳で練り込んだ胡麻豆腐だ。箸でちぎろうとすると、なんだかビヨーンと伸びる。牛乳と擂った胡麻を葛で練り込んでいるのだろう、粘りがすごい。モチモチとしたそれを一口いただくと、これは旨い!江戸期、牛乳というものを公に飲み始めたきっかけは、健康食としての位置づけだったという。そのとおり滋養にいいだろうなという優しく、力のある味わいになる。胡麻豆腐は日本の精進料理を精神的に代表する料理の一つで、そのストイックさがすごいと思うが、牛乳仕立てにするとこんなにふくよかで魅惑的になるのか!


江戸前きんぴらゴボウは、ゴボウがパリンシャキンといい食感に仕上がっていて、これぞキンピラという感じだ。だいたいきんぴらゴボウの名前は、ゴボウを炒める時にバリバリと派手な音がするところに由来していたと記憶するが、食感もバリンバリンと派手なのがいい。その方が江戸って感じだしね!


卵焼きもいい焼き目のついた江戸風だ。適度な甘みと出汁で仕上がっていて文句なしに旨い。


これは超アップで撮った、豆腐のみそ漬け。本当は親指の第一関節くらいの大きさなので注意。ただ、これは少しひねりが足りない味付けだった。味噌に色気がない感じだ。


大根の揚げ出し。これからが旬の大根は、実は油との相性がいい。特に出汁で下ゆでをしておいて、水気を切って高温の油でバリッと揚げる(油が飛ぶので要注意だ!)のが旨いぞ。ここの揚げ出しもいい感じ。これぞ小料理ですよ、小料理。


そうそう飛龍頭はきちんと人数分に割って持ってきてくれた。美しいプレゼンテーションだ!

ここの飛龍頭はモロモロと柔らかく上品に仕上げている。また、豆腐も正体が無くなるまで磨り潰しているわけではなく、粗い粒子くらいで止めてまとめている。これが舌に適度に摩擦感を与えてくれて楽しい。気が利いているなぁと思う。鉢に付け合わせとして盛られている緑色のものは、ワカメではなく海苔を煮たものだ。飛龍頭と合わせると淡い磯の香りが豆腐の香りを引き立てて、気が利いている!

手洗いのついでに厨房を覗くと、白い割烹着に身を包んだ若い板前が作っている。「美味しい煎り酒使ってますね!」と声を掛けると、「ありがとうございますっ」ときびきびした返事が返ってきた。その所作、かなり好印象。
これら以外にも、ほぼ品書きに載っている酒肴を全部食べ尽くして、蕎麦で〆ることにするが、蕎麦だけじゃ足りないんである!

「冷たいうどんと冷たいせいろと暖かいかき揚げ蕎麦を食べまーす」

「ほ、本当ですか?」

と店員君はもう信じられないという顔をしている、、、面白いなぁこの反応。

ごまだれうどんは、わかりにくいだろうけどうどんに上質な海苔がまぶされている。うどん自体は関東風の小麦がみっちりした麺なのだが、ごまだれが至極絶品である!この店、出汁の技術はとても高い!

つづくかき揚げ蕎麦(温)。かけ出汁を啜ってみるが、やはり旨い。化学調味料が一切使われていない真面目な味で、使われているかえしもくどくない、非常に素直な好ましい味。かき揚げとのバランスもいい。卵を所望して、天玉そばにして啜り込んでいただいた。


せいろが運ばれてくる。細切り加減を見ると機械打ちだな。それは全然OK。とにかく手打ちがいいという人もいるが、角のへたったヘタな手打ちを食べるくらいなら、機械でビンと切り揃えられた蕎麦の方が有り難い。それよりも水回しとコネの技術が問題だろう。

蕎麦を3本、何もつけずに啜る。残念ながらそれほど香りは立たない。こんな感じかと思い、盛りつゆに浸して啜ってまたビックリした!つゆが旨い!この店の蕎麦は、つゆで食べる蕎麦である。店員君も「うちはつゆで勝負です」と漏らしている。いや、これはイケル!
蕎麦の楽しみは多様で、全部のアイテムがすべて100点満点でなければならないということではない。この店では蕎麦の個性が押さえられている分、つゆの旨さがひときわ引き立つのだ。それもまたアリだろう。

大いに堪能した!

お茶をもらいながら店員君と話をする。

「いやぁ お客さんみたいな方は初めてです!」

と神妙な顔をする店員君。ま、リップサービス半分だろうけど、来客みんな、単なる小料理と思って食べているんだろうな。それと日本人の気質的に、あまり店の人に感想を伝えないことが多いんだろう。これは食い倒れにはペケである。旨かったら旨いということを厨房に伝えて帰る。店はそういうお客の顔はきっちり覚えるものだから、次回来店時に思い出させることが出来れば、確実にサービスが良くなるはずだ。この日もきっちりと顔を売って店を出たのであった。

まあとにかく煎り酒を美味しく食べさせてくれるということと、絶品のつゆで蕎麦が食べられるのがいい店だ。今度、煎り酒で蕎麦をたぐってみるのもいいな、と思った。

ちなみにWebで源十を検索すると、駒沢大学近くに店があるという情報がいくつか出てきた。青山の店はその支店になるのかな。なんにせよ、いい店だった。D社のI様、どうもご馳走様でした!

Posted by yamaken at 08:43 | Comments (8) | TrackBack

2004年12月15日

急告 竹鶴酒造の石川タツヤンがテレビに登場するので、食い倒ラーは必見である。

ようやく冬らしく寒くなってきた今からが、酒蔵の仕込みの最重要期だ。

このblogでも数度登場している広島の銘酒蔵、竹鶴酒造でも本格的な仕込みが始まっている。と思ったら、杜氏である石川達也氏からメールが来た。

tatsuyan.jpg ご無沙汰でござる。元気かい?

明日16日昼放送の「おもいっきりテレビ」(日テレ)にチラッと映るので、よかったら観てちょうだい(12時40分~13時のどこかで始まって、数分程度らしい)。

こっちは、朝3時台から起きて(夜中にも起きる)仕事をしているので、眠い毎日である。だけど、体中の細胞が活性化してるのを自覚できるよ。頭の回転や感覚の鋭さもレベルアップしてるし、やたらと腹が減る。食べる量も今ならやまけんと張り合えそうだ。

そうか! 今日はかならずビデオを仕掛けて寝るゾ! 皆さんも明日は「思いっきりテレビ」のビデオ予約しておきましょうね。

ちなみに画像は、10月にタツヤンが上京していた際にムニロに連れて行った時のものだ。彼が持っているのはもちろん純米酒・小笹屋竹鶴。ムニロの濃いシチリア料理に会わせても微動だにしないフルボディの純米酒で、羊肉とも真っ向勝負が出来た!

今年の仕込みでもいい酒が出来るはずだ。年明け後、また竹鶴酒造にいけたら、と思う。できればオーパの水澤君を連れて行きたいなと、思っている。

Posted by yamaken at 11:00 | Comments (1) | TrackBack

報告 週刊アスキーの連載に加わることになった!

誰でも知ってる週刊アスキー。
出張族の味方、週刊アスキー。
あんなに内容があってたったの300円。
みんなで買おう週刊アスキー。

その週刊アスキーに、僕も書くことになったのだぁあああああああああああああああああ

このエントリで、アスキーの名物編集主幹であるF岡さんと呑んでいるという時点で予想していた人も居るとは思うが、、、そう、この時にお誘いを受けたのである。

「週アスの最後から2ページめくったところに Hotel de gohan (ホテルでご飯)ていう連載があってね。日本中のホテルのレストランを巡ってガイドするっていうものなんですけど、これの執筆陣に加わってもらえませんか?」

この現行執筆陣がものすごい顔ぶれだ。 

まず、あの名作「恨ミシュラン」の神足さん!

恨ミシュラン (上)
西原 理恵子 神足 裕司

おすすめ平均 
痛快!名店をこき下ろし!
自分を信じる二人に拍手
読んでスッキリ、な本です

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そして、「カノッサの屈辱」や「料理の鉄人」、「トリセツ」を生み出した放送作家 小山薫堂氏!

それに、全国の旨いもんを食べ歩いているF岡氏という最強の3人組が、入れ替わり立ち替わり書いているのである。

その中に、4人目の男として僕がアサインされた! いいの?まじで??

実は本日がその初取材だ。都内某ホテルにて昼下がりからフルコースを食べてくる。シェフは外人さんだそうです。英語のダメな僕はどうやってインタビューしようかと今からドキドキなのである。

年明けの号になると思うが、分かったら事前に告知するのでよろしくおねがいしたい。

みなさん
これから週アスは立ち読み厳禁です!

Posted by yamaken at 08:55 | Comments (6) | TrackBack

2004年12月14日

Barオーパ 水澤君の祝賀会で、伝説の歴代チャンピオンのシェイク競演を観た!


全国バーテンダー技能競技大会の優勝からようやく4ヶ月目に開催されることになった水澤君の祝賀会は、新宿の厚生年金開会の地下ホールで行われた。

「史上初なんですけどね、歴代チャンピオンに駆けつけて頂いて、一緒にスプリングヒルのシェイカーを振るというイベントをやることになったんですよ、、、」

なんとなんと、それはすごい!NBA(日本バーテンダー協会)の誇る歴代チャンプが数人、水澤君のために集まり、彼の創り出した創作カクテル「スプリング・ヒル」を一斉にシェイクするのだという。こいつはかぶりつきで観に行かねば!

「それと、、、日程も押し迫ってきているのにいきなりで申し訳ないんですが、、、門前仲町店のお客様代表として、やまけんさんにスピーチをお願いしたいんです。」

うがぁああああああ
いいのですか?俺なんかで!

ということで、黒スーツに身を包んで行ってきましたよ。光栄至極ですがな。
厚生年金会館の玄関をくぐると、いつものオーパでの正装と同じ白タキシードを着た城戸チャンと岩ちゃんが迎えてくれる。知ってる顔があるっていいなぁ。受付ではレディース部門の星(?)中軽米ちゃんがもぎりをやってくれる。会場にはいると、さすが酒類業界、ゴージャスにドレスアップしたレディやら銀座からいらっしゃったのかと思うようなリッチ和服美女などがちらほらといらっしゃる。その他はビジネススーツかタキシードに身を包んだ男性と落ち着いた夜っぽいファッション中心の、シックな集団であった。


本日は沖縄案内人のタクが来るはずなのだがまだ来てないなぁと思いつつ、テーブルで一人ウェルカムドリンクを飲んでいると、、、

「あの、やまけんさんですよね?」

とガタイのいいお兄さんが話しかけてきてくださる。そう、このセンダイさんも食い倒れ読者さんであった!

「いやぁ 僕も門仲周辺に住んでいるので、参考にしてますよ!こんどフグを食いに行きましょう、フグ!」

聴けば彼は、スパゲッティは450g一袋すべてを茹で上げて一回で食べきってしまうそうだ。俺でも普通の日には250g程度で我慢しているというのに、恐るべし食い倒れ読者! 彼の他にもさすらいのバーマニアMr.DTP氏(勝手に命名)にお会いしたり、美人バーテンダーさんにお会いしたりと、食い倒れを知ってくださっている方々と交歓を楽しむことができた。

そうこうしているうちにタクも登場、会が始まる。

「それでは水澤泰彦さんの祝賀会を始めます!」

一同拍手の中、水リンが壇上に上がり一礼をする。

はっきり言って水リン、衆目の前で喋るのは苦手なようである(笑)それがまた、驕って無くてとてもよいのである。

その後バーテンダー協会の理事の方々の挨拶と乾杯になるのだが、面白いのだ、この理事の方々。大ベテランが集まっていると思うのだが、昭和一ケタの頑固一徹オヤジみたいな方々の熟練した話芸にかなり魅了されてしまった。こういう人間のアクの強さってのは、すぐさま逆転して魅力に転じる。果たして僕らの世代でこうまで魅力的なオヤジになれるんだろうかと心配になってしまうくらいなのだ。

さて、いよいよイベント開始である!

「このたび、前代未聞ではありますが、歴代のチャンピオン達が水澤さんの応援のために駆けつけてくださいました!」

と、拍手喝采の中、次々と壇上にあがっていく歴代チャンピオンバーテンダー達。

僕はこの業界のことをよく知らないけれども、マニアの人から言わせれば「こんなのは滅多に観られない」という。

最後に水澤君が中央に位置し、演技が始まる。歴代チャンプの手元には、すでに調合されたスプリングヒルの入ったシェーカーが置かれている。中央の水澤君が皆の前で作り、その後シェークを全員で行うという算段だ。


神戸大会のあの興奮がよみがえるようなナレーションの中、水リンが氷とカクテルグラスをさばき、名作を調合していく。ダッシュで一番前に行き、動画を撮影したので、ぜひご覧いただきたい。

■水澤君のカクテル調合シーン
その1(18.8MB)
その2(13.3MB)

そして全員がシェイカーに氷を入れる。場内の灯りがひときわ明るく灯され、フラッシュがたかれる。

「それでは皆様、シェイクを始めて頂きます!」

これは動画でしか残っていない!頑張って皆さんダウンロードしてください!
■夢のシェイク競演!(21.8MB)

これはまさに圧巻! この中の一人の演技だけでもすごいのに、チャンピオン7人が一斉にシャコシャコシャコシャコとシェイカーを振っているのだ!会場の興奮は一気に上ぼり詰める。


さて歴代チャンプのカクテルがグラスに注がれ、客席に廻ってくる。もちろん全員分はないので、若手バーテンダー達が作ったスプリングヒルも廻ってくる。ちなみに僕はめざとく、昨年度チャンプのカツマタさんがシェイクした分をいただいた。

スプリングヒルで乾杯後、ジャズの演奏やアトラクションが続いた。

さて、終盤にさしかかり、僕のスピーチの出番がやってきた。

「では、門前仲町店のお客様であられる、ヤマモトケンジ様よろしくお願い致します!」

農産物の流通・ITコンサルタントという訳の分からない肩書きをアナウンスされながら登壇。お話しした内容はこうだ。

「先日、カツマタさんが世界大会で、味では2位という高得点を獲りながらも、全体では惜しくも破れてしまいました。実は野菜についてもそうですが、日本の素材の味は大陸のものとは違い、非常に細やかな味です。それを判別し味わえるように日本人はできています。だから欧米人には、日本の野菜の味が薄いと感じられる人も多い。

 さて、先日オーパで呑んでいたら、水澤君としてはヨーロッパで受ける味にするか、それとも自分ら日本人が美味しいと思うカクテルで勝負するかで悩んでいました。

 僕としては、ここは世界で勝つ味を選択して欲しい。 なぜなら、勝った人間にしか言えないことがあるからです。世界で優勝して、その席上でぜひこう言って欲しい。

『あなた方が飲んでいるカクテルは実は日本人の繊細な舌には合わない。我々はもっとデリケートな、こういう味を好んでいるのだ!』

と、世界に知らしめたい! そのためにも水澤君、勝ってください! 」

無論、僕は自腹で応援に行きます、と言ってスピーチを締めくくった。前の方で聴いていてくださった方々、特にご年配の方はブンブンと首を振って同意して頂いた。理事の方が握手にも来てくださった!

これは本心である。水澤君には日本人の味覚世界を世界に理解させてやって欲しいと思うのである。

さて、会の方はこうした参加者の祝福と応援を受けながら、水リンがビシッと締めくくった。彼らしく、「いつも同じことばかり言うのですが、自分だけでやってこられたわけではありません。皆さんにお力を借りてやっていきたいと思います」と謙虚に幕を閉じた。

終了後、「どん底」にて二次会。タクと一緒に入り口近くの席に陣取っていたら、水澤君が店入りして、いの一番にここに座ってくれた。

僕、水リン、奥さんのヨーコさん、そしてオーパの大将、大月さんである。バーテンダー仲間達が集まり、ワイワイとおしゃべりが続く。

仲良くなった若手バーテンダー君が言っていた。

「カクテルっていうのは、作る人が違うと、同じ分量の同じ調合で作ったとしても、必ず味が変わるんです。最後はその人の人柄が出てしまうんですよ。だから、技術を磨くだけでは一流にはなれないんです。」

この世界に入って2年目の彼は、そう言っていつかは自分が立つであろう高みを透かし見るかのような眼をしていた。

来年の世界バーテンダーコンクール・ヘルシンキ大会に向けて、すでに準備が始まっている。食い倒れ党は全力で水澤君を応援する!皆さんもぜひお力を貸して頂きたい!

Posted by yamaken at 12:29 | Comments (2) | TrackBack

2004年12月13日

極上休日 長島農園での一時と野菜についての対話

さて三浦での壮絶な食い倒れから一夜明けると、天使のような可愛らしい小悪魔が僕を起しにやってきた。泊めてもらっている長島農園の勝美君の息子だ。

「やまけんのおじちゃん!」

と呼ぶのを、

「お兄ちゃんと呼ぶんだよ」

と諭しながら一緒に遊ぶ。

父さんである勝美君が僕の一つ下だからお兄さんも何もないのだが。

「じゃあ、やまけんが持って帰る用の野菜を獲りに行こうか。」

と、母屋の下にある、葉物畑と作業所に降りる。これからの季節は畑からだんだん緑が消えていく時期だ。

大根、ホウレンソウ、白菜、葱などの一部葉物が越冬する中で、実のものは消えていく。茄子・トマトなどの夏野菜が今では通年で食卓に上るが、全てハウス栽培ものである。それが悪いわけではないが、夏野菜は身体を冷やすための機能を持っている。それを冬に沢山食べるのはバランスを崩すので、これからの季節はゴボウや人参などの根菜類と、ホウレンソウ、春菊、小松菜などの葉野菜、そして結球野菜を中心に食べていくといい。それが身体を暖め、人体のホメオスタシスを保つエネルギーになるのだ。

「面白いのを植えたんですよ。」

と言って勝美君が人参を抜く。

通常より細めの人参は、どうやら西洋品種である。

「そう、フレンチのシェフが植えてくれって種を下さった品種なんだけどね。これがすごく味が濃くなるんだよね!」

今日本で通常手に入る人参は西洋品種である。和人参は、京人参といわれている真っ赤なヤツだが、今日栽培量は少ない。ヨーロッパの品種は、大陸性ということもあってか、かなり香りが強いのが特徴だ。洗って食べると、確かに強い香りと高い糖度を感じる。それ以上に雑味成分の少なさに驚く。人参は香りや甘さだけではなく、雑味をどれほど感じるかで栽培段階の技術が知れる。ほとんどを化学肥料で作ったり、有機質肥料の品質が悪いと生で食べられたものではない。

と、勝美君の親父さんが軽トラで下ってきた。

「よぉ ヤマケン、来てたのかぁ、朝飯食ったなら手伝えや。」

と笑いかけてくれる。軽トラには三浦大根が積んであった。

三浦大根はその名の通り三浦の特産品種だ。青首とは違い、一本の中ほどの部分がこんもりと太る品種で、青首と比べて抜くのが結構大変なため、最近では作付けが減っている。

本来は1メートル程度まででかくなる品種なのだが、長島農園ではメインが小売なので、一般家庭用に小型に作っているようだ。一般にはナマス用として有名だが、この三浦大根は煮ると肉質がみっちりとして香りが強く、細胞組織の官能的な崩れ方がして、凄まじく旨い。一本を持って帰ることにした。

「白菜ももっていくでしょ?」

無論である。少し離れたところにある1反ほどの白菜・ブロッコリー畑に行く。

まだ霜が降りていないこの暖冬で、巻きが若干甘いかと思われたが、すぼまりを握ってみると悪くない充実度合いだ。

「これくらいの暖冬だと病気も発生しやすくなるし、通常なら殺菌剤をばらまいているところだけどうちはやらない。だからこんな風に菌がついて溶けちゃってる株も少しあるけど、ほんの少しだけで周りには伝播しないでしょ」

という彼の言の通り、たまに軟腐(なんぷ)と呼ばれる状態になっている株があるが、ごくわずかだ。土壌バランスを保つことで作物の抵抗力を向上させることに成功している。彼の土作りに関する知見は僕の志向とは少し違うのだけど、こと彼自身の置かれた横須賀の農地環境では絶対的な信頼性がある。

母屋への帰り道、フェンスに干した大根の列があった。

これは漬物用大根品種。一般には販売されない漬物用大根の特徴は、細く長く、肩の部分(葉の付け根、上部)と同じ太さが先の方まで持続していることだ。これは風乾する時に水分が抜けやすくするためだ。三浦大根のような中太りの品種では、水が抜けるのに時間がかかり、かつ水分抜けのバランスが悪いのだ。

「完全に水が抜けたら、3本くらい送りましょうか?」

「いやいや、それじゃタダの干し大根じゃん。麹で漬けてたくあんになってから送ってよ。」

「何いってんの!まだあの極上の酒粕があるんでしょ?大根の粕漬けをやりなよ!」

そうかそうだそういう手があった!島根の銘酒「扶桑鶴」の大吟醸に使われた練り粕がまだあるので、粕漬けし放題なのであった!そういうことならばと大根送ってもらうことをお願いする。

この後、裏の湿地帯に行き、しいたけのホダ木を見て回る。湿気も適度で、かなりコンディションのいいしいたけが顔を覗かせている。型がいいのをそのまま囓ると、生の菌茸類特有のシコッとしてフカッとした歯触りと、シイタケの強い香りが口中に拡がる。

これをスライスして酸の効いたドレッシングで和えると最高なのだ。

「お土産用にはヒラタケがありますよ。」

と一杯のヒラタケももらい、長島家を後にする。結局、三浦大根、白菜、西洋人参、長ネギ(ホワイトスター)、ヒラタケを米袋に詰め、超重量荷物になってしまった。京急線の途中で会えそうな友人に分けてやれば少し軽くなるだろうと連絡をするが繋がらない。結局重量物を担いで家に帰った。

さっそく白菜を割くと、中から何とも言えぬイエローの中心部が。

白菜の旨いのは、なんと言ってもこのイエローの中心部だ。まだ日光に当たっていない軟白されたそれは、黄ニラのような丸い香りがある。昆布を一枚いれた鍋でさっと湯がいて皿に取り、ポン酢で食べる。

ヒラタケは鞄に詰めていたので変形してしまった。

鋳鉄製のスキレットを熱してベーコンの油を出し、ニンニクの香りを出してからヒラタケを入れる。塩・胡椒に少量のバジルペーストを加えてバルサミコを垂らす。

茸をこうして脱水し、旨味を凝縮する炒めものは大好きだ。勝美君のヒラタケは旨味が多く、食感もシコシコ感が強く実によい。

もうお気づきだろうけど、これは昨晩の暴食を中和するための野菜三昧だ。解毒、解毒。食べ物から採ったダメージは食べ物で癒す。最終的には断食をするのが僕の方法だ。


さて
ここまで長島農園の風景を出しているのは意味があって、今後、勝美君と野菜に関する対話的なエントリをしていこうと思う。無論、勝美君だけではなく、僕が親しくする素晴らしい農家の方達の声を少しずつ、このblogでも公開していきたいと思うのだ。

なぜかということを解説するまでもないだろう。読んでくださっている皆さんの大半が、農の現場を知らない。食べ物を理解するということは、素材レベルにまで遡ってなんぼだと思う。台風や輸入問題やいろんな事件が起こった今年だったが、農の大切さを少しでも記憶に留めて欲しいので、これから地道にそうした活動を、blogを通じて始めていきたいと思う。

これ、姉妹blogである「俺と畑とインターネット」とどちらかで不定期にやります。まずはこのエントリを受けて、最近の勝美君の畑事情を本人からアップしてもらうことにしよう。

勝美君、農家にとって冬とは、「越冬」という重要なフェーズだと思うけど、今年は暖冬が続いているようで勝手が違うようだね。三浦大根や白菜などのコンディションはどうなのだろう?世間一般からすれば「暖かいほうがいいんじゃないの?」と思われがちだけど、その辺を中心に、これからの冬の季節の野菜作りについて書いてくれませんか。(メールでくれたらアップするよ)

では、では。

Posted by yamaken at 18:14 | Comments (6) | TrackBack

「このブログがすごい!2005」の表紙と編集部コメント

先日お伝えした、宝島社から発刊される表題の本だが、どうやら表紙が出来てきたみたいだ。

このブログがすごい!2005

宝島社
2004-12-21
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この表紙にもあるブログの年間ベスト20中に、僕の日記がランクインしているという。有り難いことである。と思ったら、なんとこの本を出版する編集部がblogを立ち上げているではないか!

■[このブログがすごい!]BLOG
http://www.soyane.com/

この中で、12月11日のエントリで僕のblogについて褒めて頂いている。わーお 褒めすぎ!
でもありがとうございます。
http://www.soyane.com/#day20041211

ここで書かれているように、確かに僕は自分の主義主張とそれ以外の要素のバランスは少しならず心がけるようにしている。それを観ているひとは観てくれているんだなぁ と、ちょっと嬉しい。ともあれ、手抜きしないで書いていくと、いいことがあるなぁ。

発売日の20日が楽しみ。何位なのかなぁ。

Posted by yamaken at 13:39 | Comments (1) | TrackBack

三浦・久里浜で極上海の幸を堪能した後、世界の至宝・エアーズロック定食を征服した!

三浦半島はいうまでもなく大根・キャベツの大産地である。なーんて、知らない人、居るだろうか?関東地方で最も大きい産地といってもいいだろう。また、海に面した肥沃で暖かい気候・風土の関係から、非常に質のいい作物が獲れる。従ってこの地域は経営的に成功している農家さんが非常に多い。この辺の生産者さん達と話をしていると、非常に優しくおおらかだ。これは気候と、有利な土地条件に負うところ多いはずだ。

そんな三浦市農産課より、農業者・関係機関向けの講演を依頼されたので行ってきた。テーマは、農業を巡る流通・ITの現状と今後の展望である。長島農園の勝美君からの紹介なので、二つ返事で引き受けた。担当者は、先日のダッチオーブン会にも来てくださった瀬戸山さんだ。

「ヤマケン、とにかく打ち上げはすごい旨いっていう店に行きますよ。それだけは確実。」

と勝美君が太鼓判を押してくれたので、2時間めいっぱい気合いをいれて喋った。こんなこと喋ったらまずいんじゃないかということまで話してしまった!このblogを読んでいる人に会うといつも言われるのが「お仕事は何なんですか?」ということなのだが農産物の流通コンサルタントです。ただ、同じ職種の人がこの世にあまり居ないので説明が難しい。たまに、こんな風に講演もしていますので、そういうのに来てもらうとわかりやすいかも知れませんな。

講演は非常にいい反応。数人の農業者さんが口々に良かったと言ってくれる。兄弟blogに書くべき内容だから講演内容には触れないが、これから7年くらいの間に深く静かに日本農業の表向き自然死が続く。そしてその後、パラダイムが変換するはずだ。その方向性についての話をしていたのである。

「やまけんさん、どうもありがとうございました!打ち上げには素晴らしいお店をとってあります!」

よし!ここからが俺の時間である。勝美君の車で20分程走る。横横道路の佐原インター近くにある神子元島(みこもとじま)が本日の一次会会場である。

■神子元島(みこもとじま)
横須賀市佐原1-19-4
046-837-7259
営業時間:
昼11:30~14:30
夜17:00~23:00
定休:木

この店、正直言って、外観からは旨い店だとはあまり思えない。パッとしない居酒屋という感じなのだ。しかし!とてつもなく見事にその第一印象は裏切られた!近年こんなに旨い刺身を食べたことがない!というくらいの素晴らしい魚を食いまくることができたのだ!

店内にはいると、5人がけくらいのカウンターの後ろに座敷という造り。カウンター内に居たバイト(と思う)の女の子のあまりの可愛さに、数秒固まってしまった。写真は載せない(笑)。

さて刺身盛りができあがっていたので、全員は集まっていないが食い始めてしまう。だって魚が乾いちゃったらかわいそうだ!

店内の照明が今ひとつで暗く写ってしまっているが、三浦の海の幸がてんこ盛りに盛られた刺身皿だ。なんとなくこの盛りを観た時、旨い素材が放つ独特のオーラを感じた。

「刺身がイキのいいうちに食べましょう!」

と箸を伸ばし始める。
■ヒラメの薄造り
 中型のヒラメ一匹分、素晴らしく締まった味のヒラメだった!

■カワハギの肝合え
 ただでさえ旨いカワハギの身に肝をまとわせたものだから、これは旨いに決まっている!そしてまさしく旨かった!

■名前わからん、とにかく白身

■タイラ貝

■サザエ

全部うめぇえええええええええ
ビキンビキンに新鮮な歯触りとコクのある刺身ばかりである!

そして実はあまりに旨くて写真を撮るのを忘れてしまった衝撃的なネタがある。金目鯛(キンメ)である!最初これはブリかと思って食べた。旨味の濃いネットリとした感覚でありながら、舌に嫌みが残らない、上品であっさりとした切り身だった。

「これ、旨いな、、、ハマチかぁ?」

「は!?何いってんの?三浦の名物を知らないのかい?これはキンメだよ金目鯛!」

と勝美君に笑われながらも衝撃!こんなに旨いキンメの刺身は食ったことがない!

門仲の寿司処 匠ではキンメの昆布〆が名物だが、どちらかというとキンメを熟成させて、昆布で脱水させると共に旨味を吸わせるという手のかけ方をしている。これこそ江戸前の技というわけだが、こちらのキンメはとにかく獲れたてのさばきたて、切り身のエッジが立ち、脂の目がキラキラするほどに鮮度がいいのだ!同席の皆も「これは旨いな!」とビックリしながら箸を伸ばしている。

いやしかし全部のネタが絶品だ!イカも抜群の鮮度で、福岡のイカの生け簀料理屋でさばきたてのイカを食べているのに近い食感と甘さだ。

それと無造作に最初からおかれている和え物が絶品!なにかの肝を、白身のアッサリ目の刺身と和えている。こ、このコクのある肝を持つ魚と言えば、、、
「はい、あん肝和えです!」

おおおおおおお
そんな、最初から各席に無造作に置いとくもんじゃないでしょ!

カワハギの肝合えも旨いが、あん肝で白身を和えたこいつは半端じゃなく旨い!これをご飯にのせて掻っ込みたいと熱望!

そういえば乾杯終了後くらいにバイトのお姉ちゃんが固形燃料に火をつけていた小鍋がぐらぐらと沸き立っている。蓋を取ってみると、寄せ鍋かと思いきや違って、なんだか練り物が沢山入っている。

実は僕は練り物はあまり食べない。産湯を浸かった愛媛の港街である今治市名産の新鮮なカマボコ以外は好まないのだ。何が入ってるか分からない練り物には手が出ない。
と斜に構えながらよく見てみると、この練り物、ホワホワとした密度の薄さからみると、はんぺんらしい。しかしこんな丸っこいはんぺん、、、?もしかして、、、

なんと、手作りのはんぺん類ではないか!これにはびっくり。種類の違う魚でフワフワのはんぺんというか練り物が作られている。食べ口は柔らかく、味はマイルド。臭みは全くない!こういう練り物なら大歓迎だ!旨いぞ!

そこにまた全く毛色の違う一皿が運ばれてきた!

「はい、ロールキャベツです!

魚が売りの店でロールキャベツとはこれ如何に! しかしこいつがまた旨い。トローリとした特製ソース(ドミグラス系だけどなんだか独特)でこてこてに煮込まれたロールキャベツは、キャベツ部がトロトロになっているが形と筋はきっちりと残っていて、柔らかな歯触りを返してくる。具は肉だけど濃すぎずちょうどいい感じ。

独特なソースがまた得も言われぬ感じだ。これで飯を食いたいと切に思う。隣の生産者の山森さんが食べなさそうなので、手洗いに行っている間に強奪し、食べてしまった。

ちなみにこれ↑が今回呼んでくださった面々。奥にみえるオレンジ色のパーカーを着るのが三浦市の瀬戸山さんで、長島農園のダッチ会にも来てくれた。その右隣、ワイシャツをビシッと着ているのが若手の深瀬君というのだが、なんと彼はマラソンランナーで、先だって開催された横浜マラソンのハーフマラソンで1時間7分58秒という記録を出し優勝してしまったという猛者である!ホノルルマラソンにも出るということで、この日後述する二次会には参加せず帰ってしまったのが残念!僕の隣には、長島農園を上回る、年間300品目作付するという強者である高梨さんが居る。彼には、雑誌「やさい畑」の仕事で大根特集をした時に、数種類出品してもらったことがあるのだ。

と、デカイかき揚げが運ばれてくる。

桜エビなどがふんわりまとめられたかき揚げだ。このかき揚げもとなりの山森さんが食わないので、僕がいただく。ちなみに小鍋仕立てのはんぺんも食べなさそうなので、勝手に箸をだして食べてしまった。

そしてこの店の名物が出た!店の情報を教えてもらった時のWebで、「ヅケ握りが旨い」と書かれていたので、絶対に僕も食べたいと所望していたのだ。そう、各種ネタを煮切り醤油でヅケにした握りである!

この照り照りと輝く表面を観よ!実に最高ではないか!まぐろの赤身はいうまでもなく、先のキンメもヅケになっていて、ますます旨味成分の集積度が限界まで上がりまくっている!

ヤマケンもうご満悦である。このヅケ握りはさすがに皆残らず食べていた。煮切り醤油と魚の切り身、そして酢飯のコンビネーションは憎らしいほどに完璧だ。旨かった!

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「いやぁ~ 旨かったなぁ。今日は最高の魚料理の店に出会えましたよぉ!」
「じゃあ二次会はドカンとハンバーグ食べに行きましょうか?」

「へ?ハンバーグ???」

と勝美君が変なことを言い出した! そう、実はこのエントリ、ここからが本番である。

先日トリュフを採りに来た際に、フレンチのシエラザードに行ったが、実はあのとき長島君は僕に「ハンバーグ食べにいこう」と言っていたのだ。なんでも、400gの大ハンバーグだという。しかし、トリュフを届けに行ったらシェフが飯の準備を始めてしまったので居座ってフルコースしてしまったのである。

「あの店にヤマケンを連れて行きたいんだよなぁ~ さすがにもう400gのハンバーグは食べられないだろうけどね、、、」

この一言が俺の闘魂に火をつけた!

「ヤマケンには食べられないだろうなぁ」というのは絶対君主的タブー文言である!どこかの空港でチケット待ちカウンターで一人前に並ぶ女性に惚れて、その女性を迎えに来た男をみて闘魂を燃えたぎらせ、最後にはその女性をものにしてしまったアントニオ猪木のごとく「私の闘魂は燃え上がった」

「いいじゃん行こうよ。お腹空いてきたよ。」

「えぇ~ ほんとに行く気?まだやってるかな?」

と時計を観ると10時半くらいなのだが、もうこのノリは収まらない。タクシーに乗って京急久里浜駅近くに移動する。

場所を観ると、なんとしばらく前に、これもまた最高の海の幸料理を満喫した「海蔵(みくら)」がある通りではないか!そう、これからいくハンバーグの店はその道を挟んだ向かいにあるのだ。

「お、開いてるよ!行こう行こう」

■店名:味美(みよし)
店のデータ分からず。上記、「海蔵」の道を挟んだ前にある。

洋食屋然とした店がみえてくるかと思いきや、、、なんだ、ひなびた定食屋ではないか!かなーりワクワクしてきた!

こういう店はかなりの曲者が多いのだ。なんと言っても通りに面した定食の蝋細工のサンプルが長い年月を経ているようでくすんで死ぬほど不味そう。わざわざ食欲を失うようなサンプルを飾るこうした店がいっぱいあるけど、気にならないのだろうか。

しかし店内にはいると意外とこざっぱりした、パイプ椅子とテーブルの定食屋である(当たり前か)。どやどやと入る。店内をぐるっと見回す。

この店、メニューに載っている品目数がやたらと多い!しかしこう言う時に僕が愛するのは、壁に貼ってある、紙に手書きされたメニューだ。この場合、品目と品目の間は小さくビッシリと情報が書き込まれているのが望ましい。

そして、、、
本日最高の一品を発見した! もう僕は、このメニュー名を観ただけで討ち死に本望である。

「エアーズロックハンバーグ定食 2Lサイズ 1500円」

なんとエアーズロックである!オーストラリアに鎮座まします世界最大の一枚岩、古代のアボリジニ達の聖地であっただろうあの神秘の岩塊のごときハンバーグが定食になっているのである!!!!!

別のメニューを観るとこれがまた最高だ。

「オムスパサン」(トマト味)
「オムスパクン」(塩味)

という強烈スマッシュの次ぎには「ベリーグー定食(ハンバーグ、卵、チーズ、焼き肉、ニンニク)」という最強布陣の定食1260円。

そしてその下にはまたもや「エアーズロックバーグ定食」こちらには誇らしげに「超デカ」と書かれている!

さらにその直下にある「オムライスプチモンドセット」の豪華な布陣にも心を動かされてしまう。

なんて食い倒ラー嗜好な店なんだ!あまりのすごさとネーミングセンスのツボ加減に衝撃が止まらない。これは料理が出てくる前に大ヒット!

「やまけんさん、本当に食べるんですか?」

「当たり前じゃないですか!こんなのナカナカ出会えないんですから!」

と僕はエアーズロック定食を頼む!他の人はビールだけ呑む人半分、数人が普通サイズのハンバーグやカレースパなどで付き合ってくれる。

厨房のおっちゃんがハンバーグの生地をリズミカルにこね出し、空気を抜いている。はっきりいって、メニューや店の外観というギミックはともかく、その工程をみるとれっきとした技術の入った洋食屋さんである。

じゅわーっと焼く音がひとしきりして、運ばれてきたのがこれだ!

解説の必要ないだろう、手前がエアーズロックで奥にあるのが普通サイズだ。普通サイズは目玉焼きに隠れるくらい。エアーズロックは目玉焼き2.5個分程度のサイズである!

おおおおおおおおおおおおおおおお
旨そうじゃん!

ここまでくると僕の食欲はまた再度活性化され、食道ぜん動力高出力、胃液量最大分泌、の食い倒れモードに入る。

ハンバーグは豚肉中心のアッサリホコホコ目の肉質。肉汁がジュッと出てきて、ケチャップベースのソースとからみ旨い!ご飯が食えるハンバーグである。ドミグラスソースに凝ったハンバーグはなんだかご飯と相性が悪いのが多いので好きではない。この味美のハンバーグ、最高である!ライスが進む!そういえば洋食屋では「ご飯」といわず「ライス」というが、これによってご飯が二段階くらい旨いという錯覚を抱く僕はオカシイだろうか?なんか違うモノになって出てくるような感じなんだよね。

ワシワシと食べて、きっちり完食!

いや、実に旨かった!1500円という障壁があるからリピートするかどうかは微妙だけど、今度来る機会があれば、ベリーグー定食かオムライスプチモンドセットを所望してみたいと思う。

「お疲れ様でしたぁ~」

グロッキー気味の皆さんとお別れして、僕と長島君、瀬戸山さんとでYRP野比駅へ。今日は長島農園に宿泊なのである。であれば先回も小呈な外観ながらバーテンダーの実力に感心したバー、サンライズで一杯飲んで〆たいではないか。

サンライズでは、こないだ味見しかできなかった、軽井沢の地ビール「ヨナヨナエール」を呑む。モルトが濃くて旨い。滑らかだけどかなりズシッと来る喉越しで、これ一杯で十分だ。そういえばこのマスターは先のマラソンランナー深瀬君と同期の陸上選手だったそうだ。不思議だなぁ、陸上王国三浦横須賀!

最後まで付き合ってくれた瀬戸山さんとしみじみと、とつとつと会話をする。どこの市町村も、農産課も、持っている悩みは共通だ。そこに彼はまっすぐな正義感として頭を抱えつつ、コツコツと日々、その壁につるはしを当てている。僕はこういう一本気の男が大好きだ。

一杯飲んでサンライズを出て瀬戸山さんを送る道すがら、ポツリと彼がつぶやく。

「ハンバーグ、きっと食べちゃうんじゃないかと思っていましたけど、、、本当に食べましたねぇ、、、」

静かに唸るフットボールマニアを見送り、こちらも長島亭についた頃には、胃袋活動により猛烈な睡魔が僕を襲っていた。本日完食。

Posted by yamaken at 09:21 | Comments (7) | TrackBack

2004年12月09日

近況と重要お知らせ。 『このブログがすごい!2005』へのノミネート

いや、ちっと繁忙で書いている時間がなくなりつつありますね。書いていない内にまたネタが溜まってきて、追いつかなくなるという感じです。

ここでいいお知らせ。

毎年末に宝島社から発刊されている「このミステリーがすごい!という本をご存じだろうか。よく書店のPOPに「『このミス』でNp.1!」というように引用される、ミステリー界の超有名ランキング本である。

その宝島社の方から先月、連絡があったのだ。

「実は今年から『このブログがすごい!』という本を発刊することになりまして、、、で、やまけんさんの食い倒れ日記を、ベスト20にノミネートさせて頂きました。」

おおおおおおおおお
マジですか!

『このミス!』は、毎年数人の選者がノミネート作品を読み込んで順位を決めるという責任選出型のランキングである。『このブロ!』もそういう形式だという。ベスト20中の何位になるのかはまだ知らされていない。発刊の日をまとう。

その『このブロ!』発刊の日だが、12月20日である。値段は980円。宝島社の方が僕のオフィスを訪れ、インタビューをしていったのでそれも載ります。

■詳しくはココ↓
宝島社 12月に出る新刊(下の方にあります)
http://tkj.jp/news/

これは本当に嬉しかった。嬉しかったポイントがいくつかあるのだけど、まずは一般投票型のランキングではなく、識眼を持った選者が選ぶランキングであると言うこと。そして、こちらから売り込むのではなく向こうが僕を発見してくれたということ。それが嬉しい。僕のモットーの一つに、「向こうから招いてくれたことには乗る」というのがある。自分から声をかけるのと、向こうから声をかけてもらうのでは、まったく次元が違うではないか。ありがたいことである。

20日、ぜひ店頭で立ち読みをせずお買い求めいただきたい(笑)

書いていない重要エントリを予告しておくと、

■三浦の久里浜で海の幸食い倒れ後にエアーズロックと出会い、食った!

■オーパ水澤君の祝勝会では歴代チャンピオンがスプリングヒルのシェーカーを振っていた!

昨晩は秋田県のN氏が上京。調査の打ち合わせ終了後、門仲コース食い倒れ。匠に行ったら大阪のニシガイチと薫が来ている。びっくりしていたらその後ろでアスキーのF岡さんご一行も飲んでいた。しなそば晴弘に行ったら、親父さんと女将さんからサービスで「百合根のきんとん」が出てきた。絶品であった!そしてオーパに行って一杯飲んで出たら、今度は沖縄案内人の川端たくと遭遇!国会議員秘書のM氏を呼び、結局1時まで飲んだ。こんなコトをしているから書く時間もない!そして怒濤の一日が始まる! あ~

お誘い下さる皆様。年内はもうパンパンです。ゴメンナサイ!

Posted by yamaken at 09:05 | Comments (11) | TrackBack

2004年12月07日

光栄なことだ。シチリア料理「無二路」のメニューに僕の名前が載った。

このblogの首都圏での顔と言える店といえば、門仲の「寿司処 匠」、同じく門仲のバー「オーパ」、そしてもう一つが、笹塚のシチリア料理「無二路」だ。

二つの路無し、という名のごとく、この店の料理は他では食べられない!年明けにはとある有名なテレビ番組にも重シェフが出ることになった!自分が好きな店がこうして世に出て行くのを観るのはとても嬉しい。そしてもっと沢山の人がこの店の旨さを知ればなぁとも思う。

さてこの週末は、珍しく僕の親に旨いものを食べさせてあげようと、埼玉の実家から両親を呼び寄せてランチとしけこんだのであった。壮年二人だからあまり食べられないと言うのだが、オーナーの大塚さんは、

「まあ、やまけんさんが食べればいいじゃないですか」

と大皿で持ってくることを主張。うーんこの店ではどうあっても俺は手加減されないのであった!

「ところでやまけんさん。コースを一つ新設しました。1980円、2980円、3980円の次の4980円コースを、『満腹満足コース』として、別名『やまけんコース』と命名しました!」

わははははははははは
なんだそりゃぁあ!

これがその証拠写真である!

「小食の方、体調のすぐれない方はご遠慮ください」

というのが効いているではないか!

さていつもどおりの前菜の前に、ここの絶品レバーペーストと一緒に、リエットが出てくる。

「これ、イベリコ豚のリエットなんですよ!」

おお、イベリコで作ったのか!リエットは生活の知恵というか、洋風しぐれ煮というか、肉の繊維がポロポロになるまで煮込んで、おのれの油分でクリーミーに練り上げた保存食だ。

たっぷりとバゲットに塗りつけバクリと食べる。イベリコのアタックの強い獣肉味が脂で和らげられて、落ち着いたいい味だ。

その後に前菜盛り。うちのオフクロにはこれだけで腹一杯になる量だ。


厨房を覗きに行くと、重シェフ、コバちゃん、とも子の三人が忙しく立ち働いている。

「あと魚と羊出しますからね!」

そんなにうちの親は食べられないよ、と思いつつ待っていたら、初めての料理が出てきた!

これが「鯛とクスクスのトラパーニ風」なのかな。微粒子のクスクスがトマトで煮られていて、艶っぽくて旨そうだ。僕は、羊などの獣肉とあわせたクスクスよりも、魚介との相性の方が好きだったりする。ちなみに写真ではソラ豆みたいな緑の扁平な物体があるが、これは掌でパンと潰したオリーブである。念のため。

このトマト味を吸ったクスクスが絶品だ!パサパサ感は全くない。しっとりとねっとりと、アッサリ目の鯛の実に色気を添加してくれるではないか。本日はこの一品がベスト。

この後、恒例の羊。北海道産の乳飲み子羊のグリルは、相変わらずの柔らかさ、香り高さ。

まったく臭みがないどころか、微妙なミルキーな香りが、もう満腹のはずの親父の口を停まらなくさせている。よかったよかった!

腹一杯!この日は夜にオーパ水澤君の祝勝会があるのでホドホドにしておこうと思ったが、全然ホドホドではないのであった。

さてオーナーの大塚さんがまた面白いことを考えている。

「無二路の料理で惣菜屋をやろうかなって思ってるんですが、、、全部うちで仕込んで、デリみたいに提供するような感じです。」

いいんじゃないか! このblog読者の方で、近所に無二路のデリが欲しいという人、コメントに名乗りを上げて下さいませ。きっと考慮の対象になると思われます。

この後、重シェフと、間近に迫ってきたシチリア食い倒れ旅行の打ち合わせ。10日前後のハードな食い倒れになりそうだ。ふっふっふまってろよイタリアよ、シチリアよ!

メニューに自分の名前が載ったこと、メシが旨かったこと、親孝行できたことに幸せを感じながら、次なる会場に向かう僕であった。

Posted by yamaken at 00:06 | Comments (28) | TrackBack

2004年12月06日

君は「葱商」を知っているか!? 千住葱商「葱茂」の特上葱をこれでもかと鍋で堪能した一日だった!

12月6日朝、やっと書き上がりましたぁ、、、先週はマジで忙しすぎ。

冬と言えば鍋、鍋と言えば、主役の具材は魚や肉だとしても、どうしても欠かせないものがある。そう、葱(ねぎ)だ。
関西でも最近では食卓に上るようになっている、白く太い軟白部分が優美な長葱。僕の家では必ず納豆の薬味用に葱を常備しているし、無論薬味以外にも焼いたり似たりと、かなり汎用性の高いマストアイテムである。

さて
「葱商(ねぎしょう)」という業種をご存じだろうか。文字通り葱だけを扱う流通業者のことである。
流通に関わる者として、僕もその存在をうっすらと知っては居た。長葱のみが上場され取引される市場が東京の下町・千住にあるということ。そこで取引される葱は選り抜かれたものばかりで、業務筋にしか並ばず、小売店で見かけることはない。しかし、そんな特殊市場をこの眼で見たことはなかったのだ。

「やまけんさん、葱商の安藤さんを紹介しますよ。」

と声をかけてくれたのは、このところ1週間とおかずに会っているバードコートの野島さんだ。実は今年の初頭、バードコートを舞台に、雑誌「やさい畑」食べ比べの連載向けのテイスティング会をしたのだ。テーマはもちろん長葱。主立った種苗会社の葱を10種集め、葱を煮る・焼く・生の三種で食い比べをしたのだ。その時に安藤さんが駆けつけ、テイスティングに参加してくれた。実に的を得た、的確なコメントをくれた安藤さんが持参した千住葱は、ここだけの話だが10種の種苗会社のどの葱とも違う、プロの業務用に特化された凄みのある品質だったのである。

その後、彼の店である「葱茂(ねぎしげ)」に遊びに行こう、行こうと思っていながら足が伸びなかった。そして今回、野島さん宅で大・鍋パーティーをしようということになり、その主役として、安藤さんが極上の千住葱を持ち込んでくれるということに相成ったのである。

「鶏肉だけさばいちゃって、葱茂に行きましょう。ここから10分くらいのとこです。」

と、ダアン、ダアンと中華包丁で奥久慈シャモ2羽分をぶつ切りにしながら野島さんが言う。

「やっぱりねぇ、葱の質が明らかに他と違うんですよ。実はこれから、僕の師匠の和田さんの店(銀座バードコート)と、大阪の「あやむや」さんっていう店にも葱を送ることになったんですね。これもみんな食べてみて即決だったんです。『値段はどうでもいいから、いいものを送ってくれ』ってね。プロはそういうモンなんですよ。」

ふうん、すごいなぁと思いながらバードコートの包丁類をみていたら、なんと「葱茂」の刻印入りの菜切り包丁を発見!


「の、野島さん、何すかこれ!?かっちょいい、、、」

「あぁ、それは安藤さんが取引先さんにあげてる菜切り包丁でね。僕らみたいに肉を切るのが主だと、使う包丁は刃が厚いんで野菜は切れない。薄刃の菜切り包丁だと、繊維を壊さないですっと切れるんですよぉ」

うーん 俺もこの包丁欲しい!

3Kgの鶏肉をさばいて、葱茂へ行く。千住のToposから裏通りに入ってすぐの住宅街の中に、一階がガレージになっている3階建ての瀟洒な家がある。

なんとここが葱商「葱茂」なんである!

「こんちわぁっす」

おお、安藤さん!半年以上ぶりの再会である。

この人はなぜかいつも黒いファッションに身を包んでいる。どの写真観てもそうなんだよな。とりあえず葱商っていう格好ではない感じだ。

20畳くらいのガレージスペースで、もう大半の出荷を終えたのだろう、段ボールが一山残っているだけである。

ちなみに彼は葱市場の「仲卸」である。市場は卸と仲卸から成っている。卸が大きなハコを持っていて、そこに全国から集荷し、仲卸に対してセリを行う。

この卸売市場、県や市町村が開設する公設市場と、民間の市場がある。公設市場の方が様々な保護があったり、規模が大きかったりするのだが、民営の市場にはそこにはないおもしろさがある。その一つがこの「専門性」だろう。千住の場合は長葱専門だが、まだまだ枝豆専門の市場など様々な民営専門市場があるのだ。

で、仲卸の彼は、卸のところに集まった長葱をセリで買い求め、顧客に販売していくというのが業務になる。通常の仲卸は、スーパーや飲食店に卸すわけだから数十種類の品目を販売するわけだが、安藤君は長葱だけ!である。従って、どこで買う長ネギよりも圧倒的に高品質でなければならない。そしてその通り、千住の葱市場には、とにかく最高品質の葱が集まってくるようになっている!埼玉の越谷などの近郷産地の葱農家から、本当にいい品質の葱がけが上場されるのだ。プライドの高い農家ばかりだそうで、「出来が悪かったら一切出さない、つまりその年の1回分の儲けは捨ててしまう」という。ちなみに葱は生育に6ヶ月くらいかかるので、年に二回のチャンスしかないのだ。このように、業務用のプロが目利きをする市場に、農家のプライドを賭けた逸品が集まる。そうでなければ専門市場が生き残っていけるハズがない。

「いやぁ、おかげさまで忙しいですよ。貧乏暇無しってね。じゃ、やまけんさんにおれんちの扱い品を観てもらわなくちゃね。」

と言いながら、ガレージ奥にある冷蔵倉庫の扉を開けた。5度くらいの冷気が流れ出てくる向こうに、宝の山がみえた!

「もう、取引が大体終わってるから少ないけど、朝一番で来てもらうと、葱で埋もれてるよ!」

観てのとおり一本の麻縄で数十本の葱を縛ってまとまりにしている。これが葱取引の単位なのだそうだ。

「でも、別に本数が決まってるわけではないんです。その辺は持ち込む生産者さんによってなんだか違うんですよねぇ(笑) で、今日の鍋にはこっちの極上品を持っていきますよ!」

と言う、これが極上品だそうだ!

「まぁ、まだ霜にあたってないからこれからもっと美味しくなるんですけどね。今日のところはこれでいいでしょう!」

この葱束、持ってみたらかなりズシッと来る。15Kgくらいはあるだろうか。商売柄、葱の等階級の決め方に興味があったので訊いてみた。この箱を観て欲しい。

葱茂が出荷する葱は、金・銀・銅というグレード分けがされている。等級はおそらく肌のキメの細かさ、巻きの多さなどが評価の対象になるのだろう。これに加えて葱の太さを極太・太・中・細・極細と分けている。

「僕らみたいな焼き鳥屋だと、肉の間に葱を刺していくようになりますから、あまり太いのは不都合になります。」(by野島さん)

ということだから、これは使う目的によって最適なものが選ばれるのだろう。

冷蔵庫から出してきた、画面手前が極上品、奥が僅差だが質が落ちるものだという。その差は僕にもよく分からなかった。長葱に賭ける人たちだけがわかる品質差なのだろうか。

ちなみに葱の味は、この根を食べることで確認できる。根が付いた泥葱が売ってたら、だまされたと思って洗って食べてみて欲しい。葱の香りが強く拡がるのにビックリするはずだ。

プロの視点から選ぶ葱というのがどんなものなのか、安藤さんに訊いてみた。動画なので。データ量が多い(20MB弱)ので大変だろうが、関心のある人は観て頂きたい。


■安藤さんの語る「いい葱」とは

その1 (動画 18.9MB)
その2 (動画 17.4MB)

さてこの葱商「葱茂」の取引先は、ほとんどが業務用である。プロの飲食店向けということだ。八百屋には出回らないのである。

「普通の葱から比べたら高いですもん。プロにしかわからない価値ってのがあるんだと思います。焼いた時の中身の甘さ、トロ味の強さ。蕎麦の薬味にした時には、ほんの少量でもビリッと強く効き、香りが高いこと。市販のモノに比べて1本から採れる薬味の量が全然違うこととかね。そして何より、保ちがいいんですよ、保ちが。」

という彼の扱う最上級葱だが、なんと僕ら一般の人でも買えるチャンスがある!

「お歳暮用に、この箱にバンと千住葱を詰めて、2500円(送料別)で発送致します!」

2500円+送料なら、気の利いたお歳暮としては安い!いや、葱だろ?と思われる方も多いだろうが、まあここの葱で鍋をすれば分かるはずだ。モノが違う。おいら、御遣い物にすることにしたぞ。

なんとここで、安藤さんと僕は昭和46年生まれの同い年であることが判明!なんだよ早く言ってくれよ。以下、安藤「君」と呼称することに。一気に距離が近くなった。

「じゃあ、鍋食べに行きましょう!」

3人で葱、鶏肉、スープを持って野島家に移動する。今日は野島一家、バードコートの力ちゃんと常連客軍団、千住大橋ちかくにある田中屋の若旦那ノブちゃんという布陣だ。

ワインで乾杯しながら、最初に繰り出されてきたのは絶品豆腐と千住葱のマリアージュだ!

「実はこの日のために、川越の小野食品からいろいろとプレミア物の豆腐を頼んでるんですよぉ!」

小野食品は、今や超有名になってしまった埼玉県川越市の豆腐屋だ。
http://www.nt-slowfood.org/fooder/tan_01.html
バードコートでもここの「なごり雪」という、ムースのようなスペシャル豆腐に高知の塩にオリーブオイルをかけて供するが、豆の強い香りとなめらかな舌触りが実に最高。その小野食品がいろんな豆腐を生み出しているのだ。

青大豆を使った緑色の豆腐のおぼろ・絹・木綿。白大豆と半々にマーブル状に仕上げたものなど、おそらく行列しても買えそうにないものばかりだ!

緑豆のおぼろ豆腐はもう絶品!限りなく甘く、舌がとろけてしまいそうだ。

木綿豆腐にタップリの千住葱を上に載せて食べる。ちなみに薬味として小口切りにする際、僕がまな板で切っていたら安藤君がチッチッチとやんわり制止する。

「葱をまな板で切ると押しつけられて繊維がこわれちゃうんですよ。だから、プロは小脇に抱えてシャッシャッシャッと切るんだね。」

なんと!そういうことかぁ、、、こだわる蕎麦屋などでは数本の葱を抱えてこうするのだそうだ。納得!

こうして刻まれた薬味としての千住葱は、とにかくヅンと辛みと刺激が鼻に抜ける!蕎麦屋がこれを使うのも納得である。しかし、小野豆腐の繊細な香りと甘みを殺すことはなく、引き立てている。

「この辛みの強さが、加熱した時に甘みに変わるんですよ!」

と安藤君が自信満々に言う!それを確認するために、今日は鍋料理も彼の葱を活かす物ばかりだ。

田中屋のノブちゃんが色んな魚の頭とカマを持ってきてくれる。半割にして鍋にして、、、最後の出汁は最高に旨いはずだ!

「俺は魚はいやっていうほど食べてるから、もういらないんだけど、、、鶏食べようと、鶏!」

と言いながら、どんどん頭を割っていく。

ちなみにこの写真右上の大皿に載っているのは鯛のカシラ。小さくみえるだろうが通常サイズ。ということは、左上の赤い頭のアコウダイは土鍋に入らないくらいの凄まじい大きさなのだ。

高級魚ハタのカマとカシラと千住葱を鍋に。蒸し物にすると最高に旨いプルプルネットリ濃厚なハタだが、これを淡い出汁で煮ると上品かつ芳醇!魚の旨さと、煮た葱のこれまたネトッとした中身の旨甘さが合わさると、こいつは何にも代えられない!

そして生粋の江戸っ子ノブちゃんが、お江戸の鍋「ねぎま」を作ってくれる。

「まぐろはさっと火を通すだけでいいから!すぐ食べてねー!」

という声に大殺到する箸たちよ!(↓ヤラセではありません)

「う、旨い!」

刺身で食べる用のマグロの、しかも中トロ部分を、やんわりしゃぶしゃぶと加熱すると、脂が溶け出す融点になり旨味も増す!マグロと葱の相性は言うまでもない!ねぎまってこんなに旨かったのか!

「もう面倒だからマグロブロックで煮ちゃうよ。」

うわっデカイまぐろである。この遠海魚の出汁と葱が絡むと実にきっぷのいい味になるのはなぜなんだろう?。


ほのかにピンク色を残したまぐろと葱を口に放り込むと、肉のような食感と旨味を感じた後にサクリ、ネットリとした葱の風味が、脂気を中和しほどよい旨さ感覚をつくってくれる。

もうみんな鍋・皿に大殺到である。

合わせた酒は、神亀酒造の「仙亀」。精米歩合を上げずに醸した純米は、どしっとして複雑な味がする食中酒だ。やっぱり純米だよなぁ。

「いや実はね、ネギ焼酎ってのを作ったんですよ!呑んでみて!」

な、なぬ?ネギ焼酎だと???それが本当に、酒造メーカと組んで安藤君がつくっちまったらしいのだ。

ネギ焼酎「やっちゃ場」。やっちゃばとは市場のことだ。んー 味についてはコメントは差し控えておこう。ネギの香りと風味がする。ん~、、、話題にはなるよな、これ、、、

「鶏食おうよ、鶏!」

というノブちゃんの声で、奥久慈地鶏の水炊きが始まる!昨晩からとっておいてくれたガラスープで、地鶏のぶつ切りとネギを煮込んでいくのダ!


レア加減に煮て引き出して食べる地鶏はやっぱり最高。ネギとの相性、、、いうまでもないよなぁ。

その他、本当に旨いもんが乱れ飛んだのだ。


(↑これ、例のトリュフオムレツね)

そして最後の〆はやっぱり雑炊!鶏スープと魚スープを足して雑炊にする。ネギタップリ。

ぐおおおおおっ 本日最大級の旨さ!

思わず鍋にもう一杯作ってしまっても、即座に無くなる旨さであった!

こうして千住ネギを堪能する目的は、多角的な料理法にて(鍋だけだけど)様々な検討を重ねられ、出席者全員の胃袋を満たしたことで達せられたのであった。

さて
この葱茂の極上千住葱が、一般の人でもお歳暮用に買える!ということは先述したとおりだ。2500円(送料別)で特製の箱にギッシリと入れて送ってくれる。
※送料は最初込みだったのですが、相場が一気に高くなったので、送料別にさせていただきますとのことです!申し訳ないがお問い合わせ下さい!

「もしヤマケンさんのblog経由で20人分以上売れたら、『葱茂』の刻印入り菜切り包丁を一本ヤマケンさんにあげますよ。」

なにぃいいいいいいいいい
欲しいぃいいいいいいいいいいい!

みなさんどうか私に葱専用菜切り包丁を入手させて下さい(笑)

というのは冗談ですが、本当にお歳暮用に使えるので試してみて欲しい。大晦日にこれで鍋というのもいいし、蕎麦の薬味にはプロの太鼓判がついている。関西の人にはようやく馴染みが出てきたくらいの長葱だが、こういう一級品を食べて判断して欲しいと思う。そうそう、銀座「バードランド」と大阪の「あやむや」では今、葱茂の葱の扱いが始まったはずだ。常連さんはめざとくねぎまと食べて頂きたい。

お歳暮用の問い合わせは下記へ。

■葱茂
http://www.senjunegi.com/
〒120-0034 東京都足立区千住1-7-6
有限会社葱茂
電話 03-3381-0160
ファックス 03-3881-0108
担当葱商 安藤将信あて
お問合せメール:info@senjunegi.com
※注文時に「やまけんのWebを観て」と一言お願い!

ちなみに葱が旨くなるのはまだこれから。霜に当たると、野菜は甘みを増すのだ。今年は暖冬なのでまだそこまでいっていないのだが、晦日に向けて待ち遠しいではないか!

安藤ちゃん、伝統の千住葱の灯をこれからもともし続けてくれ!

Posted by yamaken at 08:30 | Comments (14) | TrackBack

2004年12月03日

昨年度日本バーテンダーNo.1のBarオーパ勝亦さんは世界でどう戦ったか!

葱のエントリ、忙しくてかけない。でもこれ最近の自分的大ヒット。待っててください。

けど速報。ラスベガスで開催された世界カクテル・コンペティション2004にて、昨年度の国内優勝者である、Barオーパ銀座店の勝亦(かつまた)さんが出場。僕の愛するオーパ門前仲町店の水澤君の先輩だ。

結果なんと、「味」の評価では出場者中2位を獲得しながらも、「香り」の弱さのせいか、上位入選を逃した。詳しくはこちらを。
http://www.foodrink.co.jp/backnumber/200412/041201.html

同Webには応援にいった水澤君の悔し泣き姿も映っている。来年は、この水澤君が出場する。

上記は先日オーパに行った際に水澤君に直に聴いた。日本人の感覚はどうやら本当に繊細にできているようで、欧米の味覚は日本よりどうしても甘く強い香りが好まれるらしい。けど、それを前提に、自分としてはおいしくないと思うカクテルを創って勝負をかけることができるか?そこが、日本人出場者にとっての大きな十字架になるような気がしてならない。

でもな、、、
僕としては、水澤君が勝つ姿が見たい。世界(というか欧米)の味覚も制覇した上で、彼ら欧米人が日本に来たときには日本向けのカクテルを供し、「日本ではあんなに濃いのは好まれないんだ。だって君たちよりも繊細なんだから」と言ってみたいではないか!

来年の世界大会、僕はヘルシンキまで応援にいくつもりだ。勝ちに行こうな、水澤君。


そうそう、
今週末の5日(日曜日)、ずいぶん遅れた水澤君の祝賀会が厚生年金会館で開催される先日電話があって、僕は門仲店の顧客代表としてスピーチをすることになった。呑んだくれようと思ったのに、無理だ。ん~ 

なんとこの日は、コンクール上位入賞者が数人集まり、創作カクテル「スプリング・ヒル」を競作するという。もちろん参加者は飲むことができる!一般客も入場可能。問い合わせはオーパ門前仲町店にどーぞ。読者の方で参加する人いたら一緒に飲みましょう。声かけてください。

Posted by yamaken at 09:05 | Comments (5) | TrackBack

2004年12月01日

TBSのR30という番組であった。

このWebがテレビの深夜番組に出てた!とを何人かの人から連絡を受けた。コメントにつけてくださったKOKEさんから、TBSのR30という番組だということを確認。ビデオテープをお送り頂いた。

↓これがそうダ!
gazou.jpg


全体としては数十秒だったけど、ナレーターが「やまけん」と言っていたのは笑った。

でもTBSさん、番組に使うなら連絡くらいするのが礼儀でしょう。ということで、こちらも勝手に番組画像を掲載することにしました(笑)

今後もこういうことあるかも知れないので左サイドバーのWebについての紹介文言に、

「出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。」

と追加しました。これは単にやまけんも観たいからです。特に断りはしませんので、、、

ビデオを送って下さったKOKEさん、どうもありがとうございました!本日、なんばんの粕漬けを発送しておきました!

そうそう
堀江君の社長日記のサイドバーにも、ウェザーバケットによる気象情報配信システムがつきました。嬉しいなぁ、、、

Posted by yamaken at 13:51 | Comments (7) | TrackBack