2004年12月13日 from 出張
三浦半島はいうまでもなく大根・キャベツの大産地である。なーんて、知らない人、居るだろうか?関東地方で最も大きい産地といってもいいだろう。また、海に面した肥沃で暖かい気候・風土の関係から、非常に質のいい作物が獲れる。従ってこの地域は経営的に成功している農家さんが非常に多い。この辺の生産者さん達と話をしていると、非常に優しくおおらかだ。これは気候と、有利な土地条件に負うところ多いはずだ。
そんな三浦市農産課より、農業者・関係機関向けの講演を依頼されたので行ってきた。テーマは、農業を巡る流通・ITの現状と今後の展望である。長島農園の勝美君からの紹介なので、二つ返事で引き受けた。担当者は、先日のダッチオーブン会にも来てくださった瀬戸山さんだ。
「ヤマケン、とにかく打ち上げはすごい旨いっていう店に行きますよ。それだけは確実。」
と勝美君が太鼓判を押してくれたので、2時間めいっぱい気合いをいれて喋った。こんなこと喋ったらまずいんじゃないかということまで話してしまった!このblogを読んでいる人に会うといつも言われるのが「お仕事は何なんですか?」ということなのだが農産物の流通コンサルタントです。ただ、同じ職種の人がこの世にあまり居ないので説明が難しい。たまに、こんな風に講演もしていますので、そういうのに来てもらうとわかりやすいかも知れませんな。
講演は非常にいい反応。数人の農業者さんが口々に良かったと言ってくれる。兄弟blogに書くべき内容だから講演内容には触れないが、これから7年くらいの間に深く静かに日本農業の表向き自然死が続く。そしてその後、パラダイムが変換するはずだ。その方向性についての話をしていたのである。
「やまけんさん、どうもありがとうございました!打ち上げには素晴らしいお店をとってあります!」
よし!ここからが俺の時間である。勝美君の車で20分程走る。横横道路の佐原インター近くにある神子元島(みこもとじま)が本日の一次会会場である。
■神子元島(みこもとじま)
横須賀市佐原1-19-4
046-837-7259
営業時間:
昼11:30~14:30
夜17:00~23:00
定休:木
この店、正直言って、外観からは旨い店だとはあまり思えない。パッとしない居酒屋という感じなのだ。しかし!とてつもなく見事にその第一印象は裏切られた!近年こんなに旨い刺身を食べたことがない!というくらいの素晴らしい魚を食いまくることができたのだ!
店内にはいると、5人がけくらいのカウンターの後ろに座敷という造り。カウンター内に居たバイト(と思う)の女の子のあまりの可愛さに、数秒固まってしまった。写真は載せない(笑)。
さて刺身盛りができあがっていたので、全員は集まっていないが食い始めてしまう。だって魚が乾いちゃったらかわいそうだ!
店内の照明が今ひとつで暗く写ってしまっているが、三浦の海の幸がてんこ盛りに盛られた刺身皿だ。なんとなくこの盛りを観た時、旨い素材が放つ独特のオーラを感じた。
「刺身がイキのいいうちに食べましょう!」
と箸を伸ばし始める。
■ヒラメの薄造り
中型のヒラメ一匹分、素晴らしく締まった味のヒラメだった!
■カワハギの肝合え
ただでさえ旨いカワハギの身に肝をまとわせたものだから、これは旨いに決まっている!そしてまさしく旨かった!
■名前わからん、とにかく白身
■タイラ貝
■サザエ
全部うめぇえええええええええ
ビキンビキンに新鮮な歯触りとコクのある刺身ばかりである!
そして実はあまりに旨くて写真を撮るのを忘れてしまった衝撃的なネタがある。金目鯛(キンメ)である!最初これはブリかと思って食べた。旨味の濃いネットリとした感覚でありながら、舌に嫌みが残らない、上品であっさりとした切り身だった。
「これ、旨いな、、、ハマチかぁ?」
「は!?何いってんの?三浦の名物を知らないのかい?これはキンメだよ金目鯛!」
と勝美君に笑われながらも衝撃!こんなに旨いキンメの刺身は食ったことがない!
門仲の寿司処 匠ではキンメの昆布〆が名物だが、どちらかというとキンメを熟成させて、昆布で脱水させると共に旨味を吸わせるという手のかけ方をしている。これこそ江戸前の技というわけだが、こちらのキンメはとにかく獲れたてのさばきたて、切り身のエッジが立ち、脂の目がキラキラするほどに鮮度がいいのだ!同席の皆も「これは旨いな!」とビックリしながら箸を伸ばしている。
いやしかし全部のネタが絶品だ!イカも抜群の鮮度で、福岡のイカの生け簀料理屋でさばきたてのイカを食べているのに近い食感と甘さだ。
それと無造作に最初からおかれている和え物が絶品!なにかの肝を、白身のアッサリ目の刺身と和えている。こ、このコクのある肝を持つ魚と言えば、、、
「はい、あん肝和えです!」
おおおおおおお
そんな、最初から各席に無造作に置いとくもんじゃないでしょ!
カワハギの肝合えも旨いが、あん肝で白身を和えたこいつは半端じゃなく旨い!これをご飯にのせて掻っ込みたいと熱望!
そういえば乾杯終了後くらいにバイトのお姉ちゃんが固形燃料に火をつけていた小鍋がぐらぐらと沸き立っている。蓋を取ってみると、寄せ鍋かと思いきや違って、なんだか練り物が沢山入っている。
実は僕は練り物はあまり食べない。産湯を浸かった愛媛の港街である今治市名産の新鮮なカマボコ以外は好まないのだ。何が入ってるか分からない練り物には手が出ない。
と斜に構えながらよく見てみると、この練り物、ホワホワとした密度の薄さからみると、はんぺんらしい。しかしこんな丸っこいはんぺん、、、?もしかして、、、
なんと、手作りのはんぺん類ではないか!これにはびっくり。種類の違う魚でフワフワのはんぺんというか練り物が作られている。食べ口は柔らかく、味はマイルド。臭みは全くない!こういう練り物なら大歓迎だ!旨いぞ!
そこにまた全く毛色の違う一皿が運ばれてきた!
「はい、ロールキャベツです!」
魚が売りの店でロールキャベツとはこれ如何に! しかしこいつがまた旨い。トローリとした特製ソース(ドミグラス系だけどなんだか独特)でこてこてに煮込まれたロールキャベツは、キャベツ部がトロトロになっているが形と筋はきっちりと残っていて、柔らかな歯触りを返してくる。具は肉だけど濃すぎずちょうどいい感じ。
独特なソースがまた得も言われぬ感じだ。これで飯を食いたいと切に思う。隣の生産者の山森さんが食べなさそうなので、手洗いに行っている間に強奪し、食べてしまった。
ちなみにこれ↑が今回呼んでくださった面々。奥にみえるオレンジ色のパーカーを着るのが三浦市の瀬戸山さんで、長島農園のダッチ会にも来てくれた。その右隣、ワイシャツをビシッと着ているのが若手の深瀬君というのだが、なんと彼はマラソンランナーで、先だって開催された横浜マラソンのハーフマラソンで1時間7分58秒という記録を出し優勝してしまったという猛者である!ホノルルマラソンにも出るということで、この日後述する二次会には参加せず帰ってしまったのが残念!僕の隣には、長島農園を上回る、年間300品目作付するという強者である高梨さんが居る。彼には、雑誌「やさい畑」の仕事で大根特集をした時に、数種類出品してもらったことがあるのだ。
と、デカイかき揚げが運ばれてくる。
桜エビなどがふんわりまとめられたかき揚げだ。このかき揚げもとなりの山森さんが食わないので、僕がいただく。ちなみに小鍋仕立てのはんぺんも食べなさそうなので、勝手に箸をだして食べてしまった。
そしてこの店の名物が出た!店の情報を教えてもらった時のWebで、「ヅケ握りが旨い」と書かれていたので、絶対に僕も食べたいと所望していたのだ。そう、各種ネタを煮切り醤油でヅケにした握りである!
この照り照りと輝く表面を観よ!実に最高ではないか!まぐろの赤身はいうまでもなく、先のキンメもヅケになっていて、ますます旨味成分の集積度が限界まで上がりまくっている!
ヤマケンもうご満悦である。このヅケ握りはさすがに皆残らず食べていた。煮切り醤油と魚の切り身、そして酢飯のコンビネーションは憎らしいほどに完璧だ。旨かった!
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「いやぁ~ 旨かったなぁ。今日は最高の魚料理の店に出会えましたよぉ!」
「じゃあ二次会はドカンとハンバーグ食べに行きましょうか?」
「へ?ハンバーグ???」
と勝美君が変なことを言い出した! そう、実はこのエントリ、ここからが本番である。
先日トリュフを採りに来た際に、フレンチのシエラザードに行ったが、実はあのとき長島君は僕に「ハンバーグ食べにいこう」と言っていたのだ。なんでも、400gの大ハンバーグだという。しかし、トリュフを届けに行ったらシェフが飯の準備を始めてしまったので居座ってフルコースしてしまったのである。
「あの店にヤマケンを連れて行きたいんだよなぁ~ さすがにもう400gのハンバーグは食べられないだろうけどね、、、」
この一言が俺の闘魂に火をつけた!
「ヤマケンには食べられないだろうなぁ」というのは絶対君主的タブー文言である!どこかの空港でチケット待ちカウンターで一人前に並ぶ女性に惚れて、その女性を迎えに来た男をみて闘魂を燃えたぎらせ、最後にはその女性をものにしてしまったアントニオ猪木のごとく「私の闘魂は燃え上がった」。
「いいじゃん行こうよ。お腹空いてきたよ。」
「えぇ~ ほんとに行く気?まだやってるかな?」
と時計を観ると10時半くらいなのだが、もうこのノリは収まらない。タクシーに乗って京急久里浜駅近くに移動する。
場所を観ると、なんとしばらく前に、これもまた最高の海の幸料理を満喫した「海蔵(みくら)」がある通りではないか!そう、これからいくハンバーグの店はその道を挟んだ向かいにあるのだ。
「お、開いてるよ!行こう行こう」
■店名:味美(みよし)
店のデータ分からず。上記、「海蔵」の道を挟んだ前にある。
洋食屋然とした店がみえてくるかと思いきや、、、なんだ、ひなびた定食屋ではないか!かなーりワクワクしてきた!
こういう店はかなりの曲者が多いのだ。なんと言っても通りに面した定食の蝋細工のサンプルが長い年月を経ているようでくすんで死ぬほど不味そう。わざわざ食欲を失うようなサンプルを飾るこうした店がいっぱいあるけど、気にならないのだろうか。
しかし店内にはいると意外とこざっぱりした、パイプ椅子とテーブルの定食屋である(当たり前か)。どやどやと入る。店内をぐるっと見回す。
この店、メニューに載っている品目数がやたらと多い!しかしこう言う時に僕が愛するのは、壁に貼ってある、紙に手書きされたメニューだ。この場合、品目と品目の間は小さくビッシリと情報が書き込まれているのが望ましい。
そして、、、
本日最高の一品を発見した! もう僕は、このメニュー名を観ただけで討ち死に本望である。
「エアーズロックハンバーグ定食 2Lサイズ 1500円」
なんとエアーズロックである!オーストラリアに鎮座まします世界最大の一枚岩、古代のアボリジニ達の聖地であっただろうあの神秘の岩塊のごときハンバーグが定食になっているのである!!!!!
別のメニューを観るとこれがまた最高だ。
「オムスパサン」(トマト味)
「オムスパクン」(塩味)
という強烈スマッシュの次ぎには「ベリーグー定食(ハンバーグ、卵、チーズ、焼き肉、ニンニク)」という最強布陣の定食1260円。
そしてその下にはまたもや「エアーズロックバーグ定食」こちらには誇らしげに「超デカ」と書かれている!
さらにその直下にある「オムライスプチモンドセット」の豪華な布陣にも心を動かされてしまう。
なんて食い倒ラー嗜好な店なんだ!あまりのすごさとネーミングセンスのツボ加減に衝撃が止まらない。これは料理が出てくる前に大ヒット!
「やまけんさん、本当に食べるんですか?」
「当たり前じゃないですか!こんなのナカナカ出会えないんですから!」
と僕はエアーズロック定食を頼む!他の人はビールだけ呑む人半分、数人が普通サイズのハンバーグやカレースパなどで付き合ってくれる。
厨房のおっちゃんがハンバーグの生地をリズミカルにこね出し、空気を抜いている。はっきりいって、メニューや店の外観というギミックはともかく、その工程をみるとれっきとした技術の入った洋食屋さんである。
じゅわーっと焼く音がひとしきりして、運ばれてきたのがこれだ!
解説の必要ないだろう、手前がエアーズロックで奥にあるのが普通サイズだ。普通サイズは目玉焼きに隠れるくらい。エアーズロックは目玉焼き2.5個分程度のサイズである!
おおおおおおおおおおおおおおおお
旨そうじゃん!
ここまでくると僕の食欲はまた再度活性化され、食道ぜん動力高出力、胃液量最大分泌、の食い倒れモードに入る。
ハンバーグは豚肉中心のアッサリホコホコ目の肉質。肉汁がジュッと出てきて、ケチャップベースのソースとからみ旨い!ご飯が食えるハンバーグである。ドミグラスソースに凝ったハンバーグはなんだかご飯と相性が悪いのが多いので好きではない。この味美のハンバーグ、最高である!ライスが進む!そういえば洋食屋では「ご飯」といわず「ライス」というが、これによってご飯が二段階くらい旨いという錯覚を抱く僕はオカシイだろうか?なんか違うモノになって出てくるような感じなんだよね。
ワシワシと食べて、きっちり完食!
いや、実に旨かった!1500円という障壁があるからリピートするかどうかは微妙だけど、今度来る機会があれば、ベリーグー定食かオムライスプチモンドセットを所望してみたいと思う。
「お疲れ様でしたぁ~」
グロッキー気味の皆さんとお別れして、僕と長島君、瀬戸山さんとでYRP野比駅へ。今日は長島農園に宿泊なのである。であれば先回も小呈な外観ながらバーテンダーの実力に感心したバー、サンライズで一杯飲んで〆たいではないか。
サンライズでは、こないだ味見しかできなかった、軽井沢の地ビール「ヨナヨナエール」を呑む。モルトが濃くて旨い。滑らかだけどかなりズシッと来る喉越しで、これ一杯で十分だ。そういえばこのマスターは先のマラソンランナー深瀬君と同期の陸上選手だったそうだ。不思議だなぁ、陸上王国三浦横須賀!
最後まで付き合ってくれた瀬戸山さんとしみじみと、とつとつと会話をする。どこの市町村も、農産課も、持っている悩みは共通だ。そこに彼はまっすぐな正義感として頭を抱えつつ、コツコツと日々、その壁につるはしを当てている。僕はこういう一本気の男が大好きだ。
一杯飲んでサンライズを出て瀬戸山さんを送る道すがら、ポツリと彼がつぶやく。
「ハンバーグ、きっと食べちゃうんじゃないかと思っていましたけど、、、本当に食べましたねぇ、、、」
静かに唸るフットボールマニアを見送り、こちらも長島亭についた頃には、胃袋活動により猛烈な睡魔が僕を襲っていた。本日完食。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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