2004年11月10日 from 首都圏
ジャポネ学の権威にして路麺・立ち飲み居酒屋・串カツ屋愛好家であるおうさるさんとは、つい先日ジャポネにて感動の遭遇を果たしたばかりである。その際に彼は、うわごとのように繰り返し「トルコ料理最高!ぜひ今度お連れしたいんですよ!」と言っていたのである。そう、おそらくおうさる氏は日本有数のトルコ料理偏愛家であろう。
「日本中のトルコ料理屋を廻って本にしたい。すでに大半を把握しています」
という彼の目は狂気に近い偏愛ぶりを示している。実は僕はトルコ料理にはそれほどいい印象がない。過去に訪れた店が今ひとつだったからだろう。ドネルケバブやシシケバブといった肉焼き料理と、ドルマという野菜に米を詰めた煮物、そして色とりどりの前菜類が基調となるものということは大体検討がついているのだが、それ以上のつっこみを入れるつもりに今ひとつなれなかったのである。
「そんなやまけんさんを、ぜひトルコ料理の虜にした~いっ!!」
というおうさる氏の熱烈なお誘いに、食い倒れ党首としては引き下がるわけにはいかない。
「いま僕が一番お奨めする店が、阿佐ヶ谷「イズミル」という店です。前は板橋にあったのですが、その頃から僕は横浜から通っていたんです。」
そう、なんとおうさる氏は横浜在住なのだが、そこから板橋や阿佐ヶ谷といった、決して近いとは言えない場所に遠征しまくって、かつ涼しい顔をしているのである。彼も相当に高いレベルの食い倒ラーなんである。
さてそのイズミルに行って来た!相方は出版社 誠文堂新光社のミソノ氏、国会議員秘書のモロイ氏、そしてギャラリーに務めるコバヤシ氏である。
「この店とは長いつきあいなので、店のスタッフに最大級のもてなしをするように言います!当日は僕は早めには行ってヤマケン攻略のためのメニュー組み立てをしてますから!」
というおうさるさんの言に従い、現地に集合。
「JR阿佐ヶ谷駅・北口に出るとすぐにロータリーがあります。その先に「ロッテリア」が1Fに入っている「パサージュ」というビルがあります。そのビルの2Fです。正面エスカレータを上がり、左手後方に行くと店です。駅から徒歩1分です。」
なんと好立地ではないか!駅北口から本当に1分である。ロッテリアはすぐ駅から見えるので、間違えようがない。そのロッテリアを左にみながらビルの中に入る。エスカレーターがあるので登りましょう。
エスカレータを登り切ったら振り返ってみよう。右側にスカイブルーの小さな看板があるはずた。これがイズミルである。
■イズミル
杉並区阿佐ヶ谷北2-13-2-2F
03-3310-4666
店に入る。カウンターとテーブル席で、40人くらい入れるようになっているのかな。調度は綺麗。トルコっぽい感じは余りせず、ダイニングバーという風情だ。店で働くのはみなトルコ人である。
店の一番奥に少し大きめのテーブルがあり、そこにおうさるさんが座って待ってくれていた。
「どうも!今日はやまけんさんを迎え撃つために僕も黒Tシャツできました!」
とにこやかに僕を迎えてくれた後、早速トルコ料理の解説をしてくださる。
「トルコ料理ではまず、前菜をたっぷり楽しみます。ひよこ豆のペーストやナスとヨーグルトのディップなど、この前菜だけで3皿くらい食べてもいいくらいの美味しさなんです。これにあわせるのがエキメッキというパンです。このイズミルのシェフのスレイマンさんは、超絶な小麦粉使いなんですよ!ですからここのエキメッキは美味しい!」
ということで、まずは前菜盛り合わせとエキメッキをいただくことにする。そういえば写真に撮るのを忘れてしまったのだが、トルコのビール「エフェス」も頼んだ。このピルスナータイプのエフェスが非常に薫り高く上品で旨い!ビールを楽しんでいると、激烈旨そうな前菜群が運ばれてきた!
これが盛り合わせだ。
こちらは漁師風サラダという、シンプルなトルコの家庭料理。
そしてこいつが噂のエキメッキだ。焼きたて、外はパリッとしており中はふっくらの旨そうなパンである!
このエキメッキにそれぞれのペースト類を塗りつけて頂くのが吉である。
ちなみに、料理の名前はほぼ完全に忘れてしまった! けれどもご安心。おうさるさんがコメントに解説を付けてくれます。なので、これから料理には番号をふっておきます。おうさるさんよろしくです!
①なすのディップ
僕が思い浮かべるトルコ料理って、前菜であることが多い。中でも焼いたナスをミンチにしてニンニクやヨーグルトと合わせるこの料理は、自分で作るくらい好きだ。しかし、ホンモノを食べてみないと、自分で作ろうにも味がわからん。で、このナスのディップ、ニンニクが利いていて旨い!ちょびっとずつではなく丼一杯食いたいのであった。
②ひよこ豆のディップ(ホムスとかいったかなぁ)
こいつがまたバカウマ。ゴマが使われているらしいのだが、豆の粒状感はなく、限りなくなめらかなペーストになっている。
④トマトとトウガラシのディップ
こちらはトマトとトウガラシ、香草類を叩いてペーストにした物らしい。あまり火が通っていないらしく香りが非常にフレッシュで、エキゾチックなハーブ類の香りがダイレクトに伝わってくる。ピリッと辛いが、激辛というものではまったくない。
「この料理が一番辛いくらいですね。ですからトルコ料理にはあまり強い辛み要素はないんです。」
とのことであった。
⑤ホウレンソウとヨーグルトのディップ
知っている人も多いだろうが、トルコ料理といえばヨーグルトだ。今回はじめておうさるさんから教わったのだが、「ヨーグルト」とはトルコ語なのだそうだ。もちろんトルコ語ではちょっと発音が違うらしく「ヨーウルト」になるということだ。Gを発音しないのだね。
で、このディップがまた激ウマ。何だかわからないがハーブの併せ方が絶妙で、ヨーウルトの酸味・風味と相まって最高のディップになっているのだ。
次ぎ煮出てきたのが、これも定番の「ドルマ」だ。
⑥ドルマ
赤いのがトマト、緑がピーマンで米を詰めた物だ。非常におとなしい味の料理だけど、しみじみと旨い。
このドルマに使われている米は、てっきり向こうの品種かと思ったが、日本の米だそうだ。ナイフを入れると、さっくりと切り分かれる。
あっさりとした旨味を湛えるスープを含んだ米と、皮となる野菜の甘みと香りと合わさってもっちりと旨い!
地味な存在だが、決して頼むのを忘れてはならない一品だ。
「どうですオイシイでしょ?この前菜を永遠に食べ続けてもいいくらいですよね?」
と言いながらとにかくすべての料理に解説を付けまくるおうさる氏。彼の熱情は、正直僕よりも熱いのではないかと思った!本当に好き者なんだなぁ、、、ちなみにこのおうさるさんは、TVチャンピオンのプリン選手権で準優勝をしている。本業はフリーのシステムエンジニアで、現在は病院関係の電子カルテシステムを構築したりしているという。一つのことに偏執狂的に突っ込んで深堀りをするこの人ならば、かゆいところに手が届くシステムを構築してくれるのではないかと思うのであった。
さてそんな彼が持っている酒が、トルコの蒸留酒である「ラク」である。この日は、ナショナルブランド的なYeniRakiという銘柄と、写真で彼が持っている銘柄の二種を呑んだ。
(↑この写真は、一般的な銘柄の方)
「こっちの方は高いんですが、日本ではほとんど売られてないんですよ!大方のトルコ人はこちらを好みます」
このラクの飲み方だが、水割りにして氷を入れて呑むのが普通らしい。面白いのは、水を注ぐと白濁するのだ。
この状態だったものが、、、
水を注ぐとこうなるのダ!
「酒に含まれている油分のせいで白濁するようです。」
というので表面を接写して観てみると、本当に脂っぽいのが分離している。
このラクが、なんというか独特の香りと甘さがあって旨い!47度とアルコール度数が高いので気を付ける必要があるが、実に美味しい酒なのだ。ペルノーのような薬草っぽい風味があるが、それが特徴的で魅惑的だ。
そして次ぎに出てきたのが、意外や意外の魚料理だ。
⑦魚料理
スズキの手前の「フッコ」をトマト、タマネギ、ナスなどの野菜とハーブと一緒にあっさりと煮た料理だが、これがしみじみとした味で旨い。
「日本ではトルコ料理といえばドネルケバブというイメージがあって、あまり魚料理を出す店はないんです。今日はスレイマンが気を利かせて作ってくれたようです。」
ちなみに厨房のスレイマンは、ブラジルの柔術師であるヴァリッジ・イズマイウにちょっと似た感じのやつである。実は彼は僕と同い年であることが判明。かなりの親近感が湧く。
さて料理は後半戦に突入という感じだ。
⑧マントゥー
中国の饅頭(マントウ)と同じ語源と推測される、小麦を饅頭のように丸めた料理だ。白っぽいのはヨーグルトソース、上にかかっているのはトマトのソースで、これに香辛料のようなものがかけられている。この美しい外観を観よ!という感じだ。
これでもかと使われているヨーグルトのおかげで、料理には舌に刺さるようなインパクトはほぼ無い。だからビックリするような味付けにはなっていない。それをつまらないという向きもあるかも知れないが、元来トルコ料理はこういう、優しい味がポイントなのだろう。
(以下、その2に続く)
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。