2004年11月 9日 from
さて
組合から15分程度車を走らせてキャンプ場に着くと、曇りながらも青空が垣間見える天気になっていた。俺の祈りが効いたのだろうか!いや違うか、、、
この大子町のキャンプ場「グリーンヴィラ」には宿泊方法がいくつかある。まずは、だだっぴろい広場にテントを張って野営。ただし野営とはいっても、画像をみておわかりのように車が駐車するスペースが地面にカットされている。近代的というか現代的というか、昔の自転車旅行全盛期には無かったようなキャンプ場である。
この他、家族連れやグループのためのキャビンがあるのだが、こいつがまたスゴイ!
こんな立派な建物が使えるのだ。まあそれなりの値段なのだけど、雑魚寝でよければ10人以上が泊まることが可能だろう。
冷蔵庫、キッチン、風呂、トイレ、そしてテレビまで完備である。俺、次ぎに出す農業本はここで缶詰になって書きたいなぁ、、、(願望)
この他、アメリカンなトレーラーハウスもある。家族なんかだとこれが一番いいだろう。キャンピング仕様になっていて、シャワーまでついているらしい。とはいえ、敷地内に温泉もわいている(!)ので、シャワーなんぞ使わなくていいかもしれん。
「よっしゃぁ、準備しましょう!」
総勢13名程度になるため、バーベキュー用のピットは2つ押さえた。
画面左上のベンチの上にある箱は、生ビールサーバである!バードコートに納入している酒屋さんとサントリーさんが、「そういうことなら出しますよサービスで!何本いるの?」と、生の樽を4つも提供してくれたのダ!
とりあえずバードコート軍団、シャモの解体を始める。バーベキューピットの横にある水場は広々としていて使いやすい。ここで一同猛然と鶏をさばくのだ。
野島さんによれば、一日の営業時で一人が仕込むことができる鶏は3羽程度だそうだ。もちろん丸鶏を解体し切り分け、串に刺して焼くことが出来る状態にするまでやって、ということだ。安居酒屋などではすでに串に刺しているタイ産の冷凍焼き鳥などが極安で売っているため、5本で300円などという価格が可能になる。しかし、ホンモノの地鶏を一からさばいて串に刺し、焼くという場合、どうしても一本で300円以上はとらなければならなくなるのが、道理というものだ。
野島さんが若衆にもも肉の切りつけについて指示をしている。
「ここは繊維に沿って切って、それを今度は繊維を断ち切るように切るんだよ。」
ちなみにバードコートでは、肉を捌く包丁にグレステンのガラスキ420WKを使っているようだ。厨房には研がれてかなりすり減ったグレステンが6本くらい並んでいたのだ。密かな包丁マニアとしては見逃せないポイント。
「ステンレス刃だと錆びないから楽ですねぇ~」
と野島さんは何気なく言うのだが、、、
この薫陶を受けるのが若衆だ。
彼は最年少26歳のリキちゃん。まだ若いのに山本益博氏の「ダイブル」に掲載されている店に片っ端から通ったという、筋金入りの食いしん坊だ。
そして菊ちゃんは和食出身の板前さんで、バードコートのナンバー2である。
この二名、現在彼女募集中なので、我こそはと思われる女性は、バードコートを今すぐ予約して、品定めをして欲しい。ちなみに菊ちゃんの好みは「菅野ミホっす、、、」だそうである。
今回のテーマである冷凍シャモは、ビニールごと流水につけて解凍する。通常のブロイラーであればこの時点で大量のドリップが流れ出て、旨味などは吹き飛んでしまうが、シャモの強い肉質は、旨味を逃さないハズなのである。解凍された鶏の解体が瞬く間に終わり、彼らは肉をぴっちりとキッチンペーパーで包む。
「出来るだけ水分を抜いた方がいいんですよ。全然味が変わりますよ。」
ということだ。
「胸肉はユズの果汁と塩胡椒ででマリネして、炭火で焼いてサラダにしましょう。」
このマリネに使ったユズは、キャンプ場のすぐ下にある、農家直売所で買い求めた物だ。肥大した大きなユズが10玉くらい入ってたったの250円だった。
この直売所、特筆ものだったのはきのこが一杯売っていたことだ。確認はしなかったが、地物の天然キノコだろう。すばらしい!これで鍋ってのもいいなぁ、、、
冷凍のシャモは、切り身を焼き鳥にするのと、丸鶏をダッチオーブンで焼くことにする。このキャンプ場ではダッチオーブンや、それを使うための道具類をレンタルしてくれる。これがレンタルしたセットだ。3000円くらいだったかな。
ダッチは、僕が愛用している米国のロッジ社のものではなく、ユニフレームという国産メーカのものだ。くらべると少し鍋肌が薄目なんだが、まあ大丈夫だろう。ダッチ自体はそれほど高くないが、写真にあるようなスタンド類など含めると結構高くなる。初心者には手が出しにくいが、こういうキャンプ場で試すことができるのは非常によいだろう。
冷凍の丸シャモには、強めの塩をし、腹の中に皮を剥いたニンニクをこれでもか!というほど詰め込んで整形し、プレヒートしたダッチに投入する。ちなみにダッチ経験者は僕しかいなかったので、火の番は僕に一任される。へっへっへ任しておけ!
鶏の丸焼きはダッチ料理の基本である。下からだけではなく蓋の上にも炭を載せ、上火を使う。これで火が通ったら、少し蓋をずらして水蒸気を逃がし、パリっと焼き上げるのである。
この辺でもう待ちきれず手羽を焼き始める。
手前の列がフレッシュ、奥が冷凍物の手羽だ。焼き上げて食べ比べてみると、若干の肉質の弾力差はあるが、正直言って並べて食べなければわかるもんじゃない。
「旨いじゃん!イケマスよこれは!!」
「そうでしょ、瞬間冷凍だから品質は落ちないですよ。」
と高安さんが大子の特産品であるリンゴを一杯持ってきてくれた。
組合には鮎釣りの名人もいらっしゃり、この日、20匹くらいを持ってきてくれた!
網の上でこんがりじっくり焼いた鮎を頭から囓ると、あのキュウリの香りがする。
もちろん天然だ!てことは、釣り好きの人には、最適ポイントもあるということである。ん~ 山と川と地鶏!
だんだんと夜も更けてきて、料理が次々とできあがる。
ユズでマリネした胸肉を焼き、ポケットファームどきどきで買ったサニーレタスなどとあわせてサラダにする。ドレッシングには福岡県の銘酒蔵「杜の蔵」の酒ドレッシングを使う。これが絶品に仕上がった!
「胸肉なのに全然ぱさぱさしてないですね!」
「そうですね、奥久慈シャモの繊維の細かさが気持ちいいですね。」
これにも冷凍物が使われているはずだが、みじんにもそんなことを感じさせない。
野島さんが網の前で、シャモの開いたものを焼く。じっくり時間をかけて火を通す。
これにチャレンジする人のために言っておくと、シャモの特性としてとにかく、火を通しすぎるとバサバサして旨くない。かといって火が通らないと強く細かい繊維の感触が味わえない。火の通りがギリギリのラインを見定める力が必要になるのだ。頑張ってチャレンジを!
「大体みんな、ブロイラーと同じ感覚で料理しちゃうんですよね。そうすると美味しくないから、もう食べようと思わない。そうじゃなくて、違う肉なんだと思って試してみて欲しいですね。」
焼き上がったシャモは、アルミフォイルで包んで段ボール箱に入れる。
「焼き上がったらしばらく休めて、肉汁を落ち着かせます。これをしないと美味しくありません。」
しばらくベンチタイムを置いた鶏を中華包丁で切り分ける。
これを一同いただく。生の地鶏の丸焼きは、骨が付いていることもあり、旨味とジュースがたっぷりと封じ込められていて絶妙に旨い。ほどよい固さと繊維のプッチリと切れていく感が最高である。
と、ここでダッチの鶏も焼き上がった。
素晴らしいだろう?これ、冷凍の地鶏だ。上部はコンガリと焼けて芳香を放っている。
これも中華包丁で切り分けていただく。
さて解凍の過程で肉汁が失われずに、美味しさを保っているだろうか?そう思いながら口に運ぶ。噛みしめると、むっちりした歯応え、そしてジューシーに肉汁が口中に拡がる!
「!」
「イケますね!」
ビックリした!これは実に最高に旨い!ダッチは蓋が重いのでぴっちりと鍋に密着し、無水調理を可能にする。材料の水分で焼き上げるのだ。そのせいか、シャモには適度な水分が残り、しっとりとした味わいが保たれていた。大成功である。
「いやぁ、冷凍していても全然味が落ちてない!それに、ダッチとの相性が抜群ですね!」
ちなみにバードコートの人たちは、仕事ではシャモを焼いているが、自分たちの口にはあまり入らないらしく、「シャモ旨めぇなぁ」とうなりながら貪り食べていた。
冷凍の焼き鶏も実に旨い。タレを漬けて焼いたら、素人でもビックリする味になるだろう。ブロイラーと比べると高いが、いいとこ見せるためには惜しい金額ではないはずだ。ぜひチャレンジされたい。
さて〆は地鶏タップリの炊き込みご飯だ。キャビンに炊飯ジャーが付いていたので、こいつを利用。なんとバーベキューピットにコンセントがあるのだ!便利だ、、、こんなキャンプでいいんだろうか、、、
炊きあがりはふっくら。地鶏の清々しい旨味が上品で実に美味しい。また調子に乗って4杯くらいお代わりをした。
このように焼き、食いまくっている間、高安さんら生産者さん達とお話しをする。
「山本さんは色んな業種さんとお付き合いがあるんだと思いますけど、地鶏のようなものをスーパーなんかで売ることは可能性があるんでしょうか?」
「ん~ スーパーですと、価格帯もありますけど、取引が量的に安定することが取り扱いの第一条件だったりしますから、あまり奥久慈シャモの生産形態には合わないかも知れませんねぇ、、、」
というような感じで、今後のシャモ組合が目指す方向性についてディスカッションが始まった。
僕からは、とにかくこの奥久慈シャモについては、品質を下げた量産品を作ったりせず、今のクオリティを保ちつつ増産が可能な体制を少しずつでいいから創りあげていくことが重要でしょう、というお話しをした。釈迦に説法なのだけど。
でもそのためには、奥久慈シャモがもっと知られて、消費者に受け入れられることが必要だ。いまだに「焼き鳥屋で一人7000円以上なんて高いよ」という声が聞こえるが、その根拠は何もない。生産者がどれだけ苦労をしてクオリティの高い物を出荷し、それを料理人がどのように捌き、焼いているか。その過程と結果が価格なのであって、味を見てそれがわからないのであれば仕方がない。けど、それを理解し支援できる人口が少しでも増えてくれればな、と思う。
夜が更けていくと酒が飲みたくなる。神亀の「ひこ孫」から、組合の人がもってきてくれた白く濁った酒(いわゆる「○ぶろく」なのだが、伏せておく)に移行する。
酒盛りは10時くらいまで続き、キャビンの中へと移動した。遅くまで起きて、四方山話をした。組合の人たちの目は、ずっと優しかった、、、
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朝起きると、組合の人たちはすでに出勤していた。帰りしなに立ち寄って御礼を言うと、なんと30パックくらいのシャモ玉子を持たせてくれる。その上、鶏の代金を受け取ろうとしてくれない。にっこりしながら僕たちを送り出してくれた。本当にどうもごちそうさまでした!
実はキャンプ場からの帰り道に温泉宿があって、休憩だけも可能だ。
ここの食堂はなかなか使える。1500円のセットで、手打ち蕎麦とシャモのそぼろご飯、湯葉刺身などが付いているのだ。
写真は、思わず釜飯を頼んでしまった野島さんだ。
この他、なんとシャモの親子丼もメニューにあって、それが運ばれてくると、
「どうだどうだ ちゃんとした火加減か?」
とプロの厳しい視点で論評しているのが笑えた。
中でも野島さんのイチオシは唐揚げ(800円)だったのだが、、、
「あれ、以前より小さい切り身になっちゃってるなぁ これじゃ魅力半減だ。」
という結果であった。でもまあ、この価格でこの内容なら許せるぞ。
このように、買い出し→BBQ→キャンプ→温泉→帰宅というコースを辿った。実に充実、美食、そして簡易さだ。学生時代は金もなく、自転車でテントを担いで野宿スタイルだったが、オトナのキャンプはこれでいいじゃないか、と思った。色んなスタイルがあっていいけど、純粋に野外で旨い飯を食うだけだっていいのダ!
そして、奥久慈のコースの素晴らしさ!これをまだ知らないキャンプ愛好家の方はぜひ、トライしていただきたい!
その際にはぜひ、奥久慈しゃも生産組合に寄って、鶏を購入されたい。冷凍品は毎日、各種の取りそろえがあるのでいきなりでも購入可能。丸鶏を買ってダッチで焼くという基本は押さえて、それ以外の物にもチャレンジしてみよう。
■奥久慈しゃも生産組合
住所 : 〒319-3523 茨城県久慈郡大子町袋田3721
TEL : 02957-2-4250
FAX : 02957-2-2944
本文中にも書いたように、宅配以外では、基本的には生の鶏を買うことは出来ない。けど、あらかじめ先払いで銀行振り込みするとか方法を使えば、きっと生鶏の取り置きをしてくれるのではないかと思う。ぜひにという方は、僕のWebを観たと言ってお願いしてみてはどうだろうか。しかし、絶対に代金は先払いすること。キャンセルなどは絶対にしないこと!
冬は野外が楽しい季節だ。ぜひこの絶好のコースを味わい尽くして欲しい。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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