山形の秋を堪能する! 里芋と「はえぬき」に芋煮会に想いをはせる

2004年10月 5日 from 食材

 山形の秋の風物詩といえば芋煮会だ。里芋をベースにした鍋を野外でつくり囲むというものだ。

 僕は実際に芋煮会には参加したことがないので、ぜひ一度本場で味わってみたいと思っているのだが、、、一戸さんから芋煮鍋のレシピを教えてもらったので、これでチャレンジしてみたわけである。

 届いた里芋はなかなかに見事。今年は夏場の雨が少なかったので里芋には厳しい環境だと思うのだが、一戸さんの手紙にも『今年のイチオシは里芋かな』とあった。

 一戸さんが教えてくれた芋煮のやりかたは下記である。

《 いも煮 》 皮をむいたサトイモを箸が通るまでゆでる。 ゆで汁はとりかえないで、酒(どぼどぼ)、砂糖(好き好きで)、しょうゆ、平こんにゃく(箸でブスブス刺して味がしみやすくしておき、手でちぎる)を加えて煮る。 牛肉(バラで、たっぷりあるとおいしいです)を入れる。 最後に斜めに切ったねぎを加えて、火が通ったら出来上がり!

極めて簡単。しかし、ここで重要なのは、里芋をゆでたネトネトの汁を捨てずに、これに味を付けていくというところだろう。日本料理ではよくゆで汁をすてて出汁を含ませるが、芋煮にするにはこれがいいのだろう。

芋は適度に切り分ける。薄皮を金タワシでこそぐ。大ぶりの芋は半分か4分の1に断ち割った。美しく白い断面が色っぽい。

さて一戸レシピでは里芋とこんにゃく、ネギと牛肉というのが具の構成だ。

しかし、、、

ここで私、食い倒れ党首は告白しなければならないことがある。

読者の皆さん、どうか心して聞いて欲しい。


実は私は、この世でコンニャクだけは食べることが出来ません

よく「嫌いなものないでしょ?」と訊かれるのだが、、、コンニャクだけはどうしてもダメなんすよ。オフクロ曰く、「アンタが物心つくまえに、すき焼きに入れたシラタキが好きで毎回一玉食べてたの。ある日、それが調子に乗って二玉食べて、気持ち悪くなって戻しちゃったのよね。それ以来食べられないみたいよ」とのことだ。そう、これは物心つく前からのトラウマなのだ。だから申し訳ないけどコンニャクフルコースとかには、僕は参加できない。食わず嫌いじゃなくて、何回もトライしてダメなので勘弁して欲しい。

ということで、芋煮の具もコンニャクは使わないのであった。肉とネギだけだと寂しいので、勝手ながら油揚げと舞茸(栽培もの)を加えました。

芋を煮ると、ヌタヌタのネットリ液が出てきて、粘着質な汁になる。

これに具と調味料を加えてできあがりだ。牛肉は結構はり込んだ。

 出汁を入れないで旨いのだろうか、と思ったが、薄味ながら味わい深い。これはやはり野外料理だな。うっすらと肌寒くなった頃に野外でこの汁をすすり、芋を囓り、牛肉の濃い出汁に舌鼓を打つ。当然、酒が進む。どうせならヤカンででもお燗をつけたのをやりたい。吟醸なんかではなく、食中にいける純米酒を熱めに燗づけし、グビッとやるのだ。

 ふと思い出したように里芋を割ると、この断面の美しさだった。

ねっとりほっくりとした里芋は「丹精」という言葉がお似合いだ。次回は濃いめの出汁で煮含めてみよう。

 この芋煮に併せて、一緒に送って頂いた銘柄米「はえぬき」を炊く。一年以上前から僕は、炊飯器を使わず業務用アルミ鍋でご飯を炊いている。
これが一番旨い米が炊けるからだ。米の一割増の水で20分浸水し、最初から強火でガンガンと炊く。水分が少なくなってきたら弱火に落とし、プチプチという音が聞こえたら最後に一気に火力を上げて少しのコゲを作り、火を停める。10分蒸らすとご飯がふっくらと艶やかに炊きあがる。

 初めての米を炊く時は、とにかく水加減の見当がつかない。ずっと食べ続けている米と同じだと思うとまったく違うことになりがっかりするものだ。通常、この時期の新米だと水分含有量が多いはずなので、いつもより水分を落とす。しかし今年の「はえぬき」はしっかりした硬度があるので、いつも通りの水分量でよかったかもしれない。しかし、一口含むと、キリッと切り立つ、端麗な味わいである。コシヒカリのような華美な味ではなく、一本筋の通った、凛とした細身の美人といった風情の味だ。細身だがコシはしっかりしている。これは山形の漬け物と食べたいなぁ、と思う味だ。

 この時期にいただく新米は本当に有り難い。ごちそうさまでした→一戸さん、高橋さん

 願わくば、いつか本場の山形での野外芋煮会に参加したいものだと、遠くを想うのであった。