2004年7月19日 from 首都圏
韓国が大好きだ。僕の高校の修学旅行は生徒が自分で行く先を企画できたので、韓国ツアーの実行委員になり、旅程を組んだり、韓国の勉強(ぼくはもっぱら料理担当だった)をしたりした。それにしても学校の調理室で冷麺を作ったのはもう15年前か、、、(無言)
ソウル市内では高校生の家にホームステイし、同年代の韓国の学生と親交を深めたのであった。学校から彼らの家に向かう中、ずっと相手のジェーウクが僕の手を握っていたので、「おいおい、もしかしてこいつって、、、」と思って怖かったのだが、これは韓国での親愛の情を示すものであった。そして家庭料理の数々をもてなして頂き、韓国の歌を熱唱したという思い出である。
次に行ったのはいきなり仕事。前の会社で韓国の農業組織よりオファーがかかり、韓国の農産物を日本で売ってくれと言う。その視察に行ったのであった。済州島のみかん生産農家を廻った時は、その温室みかんの品質に驚いた。日本からも商社がバンバン来てオファーを出していたという。夜は済州島名物のトゥジェ・カルビ。豚のカルビだ。厚めにスライスした豚バラ肉を炭火で焼き、サンチュにキムチ類と一緒に包みひたすら食べる。ここで僕は威力じゃなくて胃力を遺憾なく発揮し、ひたすら「旨い旨い」と大量に食い続けたことで向こうの組合長に気に入られ、「息子、息子」と言われながら豚肉攻撃を毎晩受けることになったのであった。
このように韓国好きではあったのだが、この日本で韓国の人と遊ぶことは今まで無かった僕にある日、メールが来たのだ。
「山本先生、はじめまして。韓国農協のカンデヨンといいます。月刊JAの連載を読ませて頂きました。」
そう、今年からJA(農協のことね)の機関誌である月刊JAという雑誌に連載を書いているのだが、それを読んでの質問メールをくれたのだ。以来、数回メールの交換をしたのだが、正直メールでは書ききれないことが多いので、オフィスに来てもらうことにした。
エレベータから現れたカンさんと、同行のキムさんは、当たり前だが韓国人ぽい顔立ちのオトコ達であった。「アンニョンハシムニカ!」と握手をする。カンさんは僕とほぼ同年代で35才、キムさんは39才。どちらも韓国に妻子を残して日本に研修にきている。
中心となる話題は、「有機農産物」についてのものだ。韓国では有機農産物の普及・推進を国レベルで進めている。その上で起こる諸問題をどう解決すべきか、日本での事情を教えて欲しいと言うことであった。しかし、残念ながら日本では有機農産物に関する規定はあるものの、それを明確に「推進」していく体制は、国レベルではないといってよい。それを苦々しく伝えると、カンさんはとてもびっくりしていた。まあ、その辺の話は姉妹blogである「俺と畑とインターネット」で書こう。
それはともかく、1時間程度の情報交換の後、僕らはうち解け合い、是非今度飲もうと言うことになったのである。できれば、韓国人が行くような韓国料理の店にいきたい、と。
「山本先生、任せてください!新大久保に私たちがよく飲みに行く店があります!」
それは乗らなければなるまい。早々に日程を確保し、行ってきたのであった。新大久保駅改札に面した大通りのガード下をくぐり、まっすぐ歩く。
「山本先生、二つ候補があって、サムギョプサルの店と、色んな家庭料理の店があります。どちらがよいでしょう?」
おおおお サムギョプサルは韓国料理の中でも僕が大好きな一つだ!決まりである。
「ここです!」
そこには、とても旨い店にはみえないファンシーな看板の店があった。
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■とんちゃん
※新大久保店の情報が見つからないので、歌舞伎町店を掲載しておく。新宿区歌舞伎町2-14-8 メトロプラザビル2 1F
03-5287-4133
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何だか安っぽいチェーン店みたいな店構えだなぁと思いながら入店すると、一転して古い丸テーブルと簡易椅子。そのテーブルには、ガス管が繋がれた不思議な鉄板のようなものが一つ乗っている。
「これ、石板なんです。」
ああそうか、オンドル石というやつか、、、
店内にはハングルが飛び交っている。当然店員さんも韓国人のようだ。カンさんが韓国語で矢継ぎ早に注文を飛ばす。
サムギョプサルとは、豚のバラ肉を焼き、サンチュと様々な具を一緒に包み込んで食べる料理である。サンチュ以外に何を包むかが店の個性のようで、僕はエゴマの葉を一緒に包むのを好む。しかしこの店は、完璧に韓国式のようで、具材もみたことがないものが並びそうだ。
まず、韓国では当然なのだが、キムチ類が並ぶ。
韓国ではこれらは無料でお代わりし放題である。しかしカンさん曰く、
「最近の韓国の若者はキムチを食べない。ニンニク臭くなるのが嫌だそうです。」
とのことであった。そんなことでいいのか!と思ったが日本でも伝統食は絶えつつあるので同じかもしれないなぁ、、、
ちなみにかなり気に入ったのがこれ。
なんとナスのキムチである。
「ナスを丸のまま煮て、タマネギ、唐辛子、ヤンニョム(キムチの素みたいなもんだ)とごま油を合わせてよく混ぜるだけです!」
これがトロトロしたナスの食感とキムチの味が相まって最高。今度作ってみよう!
さて豚肉が運ばれてきた!凄まじく脂の厚い三枚肉(バラ肉)だ。
向こうの人はバラ肉好きだ。脂も味も乗ったこの部位が最高のご馳走なのだろう。
熱した石板の上にペチュキムチ(白菜)と豚を載せる。
豚はすぐにはさみで一口大に切る。ジュージューと脂が爆ぜてきたら、岩塩を振る。この岩塩が色んな味成分が含まれていて旨い。
豚が焼けてきたら、脂でニンニクも大量に焼く。このニンニクの量が凄まじいので、翌日にプレゼンなど控えている人は要注意である。
ここで包みの儀に入る。サンチュを拡げ、豚を載せ、ネギの薬味を載せる。このネギ薬味に色んな秘密がありそうなのだ。
そして青唐辛子もしくはニンニクを挟み込む時に、付いてくる韓国味噌を適量、豚に塗る。そうして包んで一口で食べるのである!
カンさんの模範映像を撮影しているので、ぜひご覧いただきたい。
このサムギョプサル、「ただの豚肉巻きじゃん」と思ってはいけない!岩塩、薬味、味噌、そしてニンニクの風味が一体となる激旨肉料理なのである!韓国の肉食文化はやはり素晴らしい。焼き肉とは全く違う、上質の料理である。
「おおおおお 旨い! マッシスムニダ!」
マッシとはハングルで「旨い」ということである。これ以降、一口ごとにマッシを連発してしまった。本当に旨いんだもん!どんなに落ち込んでいても絶対に元気になるであろう突貫的韓国式元気料理である。
それはいいんだが、韓国人はジンロ飲み過ぎである。
「山本先生!韓国ではジンロを沢山飲みます!」
といって、小さいグラスをキュッキュッと空けてしまう。そして韓国での親しい人への儀式というか、自分のグラスを満たして一口のみ、相手に差し上げるマナーを教わった。当然受け取ったら飲み干さねばならない。韓国直輸入の甘い旨いジンロを、3人で5本くらい空けてしまった。フラフラである。
「山本さん!私は嬉しい!韓国に来たら一日私が車を運転して案内します!これはお守りです!」
と、カンさんは僕に1万ウォンをくれた。そしてなぜか熱烈なキスをされた。同行のキムさんが笑いながら言う。
「このカンさんは韓国人らしくない韓国人ですから、誤解しないでくださいねぇ~」
わははは カンさんは相当に熱いひとなのであった。
最後に冷麺を食べる。
日本でも出てくるムルネンミョンと、辛いタレをまぶしてあるピピンネンミョンをいただく。
やはり旨い。日本の盛岡冷麺とは全く違う本場の味わいである。(蛇足だが盛岡冷麺は、麺の原料が韓国の冷麺とは違う。どちらかといえば盛岡冷麺の麺は「カルククス」という韓国料理の麺に似ているといわれている)
この後、カラオケに移動し、ハングルの歌を歌う。なんと僕が修学旅行でホームステイした時に教えてもらった歌が歌われており、懐かしく合唱してしまった。
こうしてハングルの熱い夜は過ぎていった。
そして翌日、久しぶりにひどい二日酔いで吐きまくり、かつ身体から立ち上るニンニク臭で誰も寄ってこないという状況だったのであった、、、
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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