2004年7月12日 from 食材
農産物関連の仕事をしていると、よく「いいねえヤマケンちゃん、仕事で旨いもん沢山食べてるんだろ?」と羨ましがられる。しかし、本当にそう思うか?現実はそんなに甘くないんだぞ。だって商品なんだから、無尽蔵に食べられるはずがないではないか、、、
というのはウソである。ゴメンナサイ、やっぱり一般の人からは想像がつかないような単位でいい物が届き、そして信じられないような食べ方をしていると思う。
ここんところ、かなりの頻度で食べているのがメロンだ。今年はすでに3品種のメロンを食べ尽くしている。
まず6月の早い時期に出てくるのが、熊本の八代で、フルーツトマトを取引させていただいている鶴さんのところから、「肥後グリーン」という品種が送られてくる。
「やまけんちゃーん、送っとくけんね」
と、6玉くらい(!)ドカーンと届くのである。だからこの間に僕と会う人は、お裾分けに預かる可能性が高く、ラッキーである。肥後グリーンは、読んで字のごとく熊本県産のメロン品種だ。濃い甘さはないが爽やかな味で、食感も独特な粒状感があって旨い。そしてリーズナブルな価格なので、好ましい品種だ。これを、お尻が少し柔らかくなるまで追熟させて、半割にしてガブガブ食べるのである。本当にモウシワケナイのだが、僕にとってもうメロンとは、最低でも半割で食べるものだ。4分の1以下に切ったメロンは、それはもう僕にとっては小さいメロンという認識になってしまった。ああ、僕はこのblogではスノビズムとは無縁のところに居たいと思っていたのだが、メロンに関しては間違いなくスノッブだな。
ところでメロンは品種がやたら多いのだが、皆さん分別して買っておられるだろうか。いわゆるマスクメロンといわれるのは「アールス」という品種だ。静岡県産のいわゆるクラウンメロンというブランドが有名で、こればかりは築地の市場でも別だてでセリ取引を行うほどだ。このアールスに関しては、生産者により味のレベルが違うので、生産者番号というもので取引が行われる。千疋屋などの店頭でマスクメロンを観ると、3桁の番号があるので、観てみよう。これが生産者ナンバーだ。
しかし、アールスは高い。そこで、アールスとは別品種のメロンというのが沢山ある。例えばアンデスという品種がある。このネーミングの由来は、ペルーなどのアンデス山脈と思われがちだが、実は味のばらつきが少ないので、どれを買っても「安心です」メロンの略だったりする。このアンデス系品種でも相当いろんなのがあって、20年以上前に出回っていた品種と、現在出回っている品種は違う。はっきり言って昔の品種の方が旨い。作りやすく改良された結果、食味は落ちてきている。茨城の一部の生産者団体では、これをよしとせずに初期の品種を作っている。
最近味がかなり安定してきているのがアムスだろう。アムスもアールスに負けず、コストパフォーマンスの高い品質が期待できるメロンだ。先日は埼玉県の深谷市で、生協など向けにトマトとメロンを栽培する吉田みっちゃんからアムスが送られてきた。みっちゃんは僕と同い年の生産者で、気持ちのいい仲間だ。
「もう熟してると思うけど、お好みで割って食べてね。」
割ってみると、お尻部分が少しとろりとしていて、僕好みの熟度だ。もちろん半割でいただく。
このアムスがまた旨い。アールスほどではないが高貴な香りが立ち、ジューシーだ。この吉田みっちゃんの畑では、化学肥料をほとんど使用しない。そのせいか、非常に凝縮された濃い甘さを感じるのに、嫌みが全くない。素晴らしい。進物に使いたいと思い頼んだのだが、「もう終わっちゃうよ」ということで確保ができなかった。
そう、メロンの時期はとてつもなく短いのだ。旨いと思って一週間後にまた買おうと思っても、同じ生産者のは買えなかったりする。生産者が違えば味も違う。だから、メロンは博打なのだ。
そして先日、夏の極めつけメロンが届く。北海道の友人の夕張キングメロンだ。ここは通販で数千玉が売り切れてしまう超人気の生産農家だ。残念ながら名前は出すなと言われたので、ここでは書けない。栽培しているのは夕張キングメロンだが、「夕張メロン」というのは夕張市農協の商標なので、農協に参加していない場合は名乗れない。だから、友人は夕張メロンとはいわずに販売をする。しかし、おそらく日本でトップクラスに食い込む旨さだ。
ここのメロンは、樹上で完熟させて、宅配便ですぐさま送るという方式をとっている。これは農協出荷外の意欲的な農家にしかできない。通常は流通段階でのロスを配慮して、まだ完熟しない段階で出荷するからだ。この友人は、あくまで樹上で完熟した物にこだわる。そりゃそうだ 自然完熟と、早めに摘んだものを追熟させるのでは味が全く違う。箱が家に届いた段階で、強烈なフレグランスが香る!宅配便の配達員も「いい香りですねぇえええ」と羨むのである!
二玉届いたうちの一つは、彼がちょうどよいという熟度。もう一つは、熟しすぎかもしれないという段階のもの。それが段ボールにマジックで書かれている。これは、僕の好みをよく分かってくれているのだ。実は北海道の人たちは「堅めのメロンが好き」。本州の人間はどちらかというと、トロトロしている果肉が好きな傾向にあるのだが、、、なので、北海道では果肉がしっかりしたメロンでないと受け入れられないのだ。なので、彼が自信を持って送ってくるのは、ちょっと硬めのメロンだ。
当然このメロンも半割で食べるのダ。今年の果肉は僕にとってもちょうど良い柔らかさだ。スプーンを入れるとジュワッとジュースが染み出てくる。彼のメロンは、皮の近辺まで甘く実に最高。これを、スプーンで舐めるように削いで惜しみながらいただく。
今年はまた明日か明後日くらいに夕張群からメロンが届く。今度はキングメロンという王様品種ではない、新しめの品種だ。僕はキングが好きなのだが、「いやこちらも旨いゾ」という若手生産農家さんからの挑戦状だ。
しっかり半割で味わうこととしよう。この間、僕に会う予定の人はラッキーかも知れない。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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