2004年6月18日 from 日常つれづれ
バーテンダー技能競技会後、オーパは連日満員が続いていた。おかげでゆっくりと飲む雰囲気でなくなってしまったが、でも、よかったと思う。その分、水澤君はオーバーワーク気味だ。競技会後、休む間もなく翌日から店に出て、先週の日曜日にようやく休みを入れたくらいの出ずっぱりのはずだ。飲食店というのは、大変な仕事なのである。一昨日も議員秘書のモロイさん夫妻と田中君と一緒に飲みに行ったのだが、一杯目のスプリング・ヒルの味のバランスが少し悪かったように思う。水リン、疲れを癒してくださいね。
でも、思いやりというものは本当に人の心を温かくするものだ。先日、一人で飲みに行った際のことだ。最近は彼の作るモスコミュールにはまっているので、「辛口、大盛り」を頼む。ショウガ多めということだ。
知らなかったのだが、本当のモスコミュールにはジンジャー・ビアという、ショウガを発酵させた炭酸飲料を使うのだそうだ。缶を見せてくれたが、みたことのないジャンルの飲み物だった。それに、ショウガの生のすり下ろしを加える。これを多めにしてもらうと、疲れたときに元気がでるソウルドリンクになるのだ。ステアされて銅製のマグカップになみなみとつがれて出てくる。
熱伝導の優れた銅のカップの持ち手は、キンキンに冷えている。これを握ったときにヒヤっと来る感覚が大好きなのだ。
と、水澤君がつつ、と近寄ってきて、ささやいてくれる。
「山本さんにお渡ししたいものがあるんですよ、、、」
そう言って、トランクルームに消えた後、小さな木箱を手に帰ってくる。
「先日の技能協議会の記念に、何か差し上げられないかと考えていたのですが、20名の出場者だけに配られた記念バッジを、貰って頂けませんか。」
そう言って彼は、ジャケットの襟に誇らしげに着けていた金のバッジを外して、僕に手渡してくれた。シェイカーの形をしたそのバッジの裏面には、「技能競技大会」と刻印されている。
「こんなすごい記念品、もらってはまずいんじゃないの?」
「いえ、トロフィーとかメダルとか一杯ありますし、これは山本さんに。」
そう言ってにっこり微笑んで、彼はシェイカーの戦場に戻っていった。
このバッジの重みはよく知っている。生涯の宝物がまた一つ増えた。昔は、こういう大事なものが増えるのは、自分が重たくなってしまうことだと思っていたが、最近はそうは思わない。また一つ、その重さで自分の中心軸が定まっていくような、そんな気がしている。水澤君の気高さは、まさに全日本チャンプにふさわしい。
しばらくは休めないだろうけど、本当に身体をこわさないようにね。今度、栄養ドリンクを差し入れようかな。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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