2004年5月19日 from 首都圏
21日のオフ会が迫ってきた。今回はなんと35名という大所帯である。僕が知っている人も知らない人もいるので、どうやって席をつくってどうやって切り盛りしていけばいいのかまったくわからないのだが、まあ主眼が「旨いものを食べる」ということなので、あまり考えなくていいかな。
「重シェフも気合いが入りまくってますよ!」とは、オーナーの大塚さんの弁。
「最近、やまけんWebをみて来たお客さんの顔を判別できるようになりました。ドアを開けて入店するなり、画像で見た風景を探しておられるような、、、(笑) 帰る間際に『食い倒れ日記を見てきた』とおっしゃる人が多いんですが、最初に言ってくださった方が、いろいろやれるので助かりますよ!」
そうそう、誰でも知ってるある雑誌から取材も入った。僕のWebもそこに掲載されるらしいので、6月3日の発売日には告知をすることにしよう。もしかしたらこれで予約が取りにくくなるのかなぁ、、、
さて
岐阜県大垣市の料亭「四鳥」は過去にもこのblogで登場し、その後もたらふくメシを食べさせてもらっている。その経営者&板前である秀ちゃんが上京した。「豚を研究したいんだ、豚を!」ということなので、青山「ローブリュー」などを推薦したが、五木さん(僕を無二路に誘った人だ)の計らいもあって、無二路でイベリコ豚を食べることになった。
ランチが終わって通常なら仕込みタイムになる3時から5時の間、贅沢な会を催したわけだ。豚といえばつい先日も金華豚のクォーターを食べて感動してしまったわけだが、イベリコ豚といえば、これも本当に最近になって輸入が解禁されたような代物で、最近気の利いた店にいくとかならずメニューに並んでいる。スペインの黒豚、ということだが、味わいは猪豚のように野性的な獣味が残っており、僕は好きだ。この無二路に最初に来た時も、メインにイベリコのローストを230g食べてうなったのであった。
「ちょうどいらっしゃる予約を聞いた瞬間に肉屋が来たので、あわててイベリコを発注しました。通常のSPF豚もあるので、食べ比べてみてください。」
おお!期せずして食べ比べである。これは嬉しい!豚がメインなので、他のものはあまり食べないようにしよう、、、というのは大ウソである。とりあえずいつものごとく前菜をたんまり食べまくる。
■前菜盛り合わせ
この店にきたら前菜は必需品である。前菜の楽しみを抜かすなんてことは愚の骨頂なのだ。
■シチリアのサルシッチャ
冒頭写真にも出たこのソーセージ、シチリア独特のサルシッチャである、とぐろを巻いて焼き上げる度迫力プレゼンテーションだが、味は豪快かつ繊細。中にはフェンネル(ういきょう)の種などが入っていて、肉汁とともにハーブの香りがブワッと立ち上るのだ。ワインじゃなくてシチリアビールが飲みたくなる瞬間。
■SPF豚のソテー
まずはイベリコではない、国産のSPF豚を食べる。いわゆる無菌豚だが、銘柄豚ではない。とはいっても最近の豚肉はかなり水準があがっているような気がする。
ローストにして、肉汁ベースのソースがかかっているがこれが旨い。豚自体も、癖が無くもっちりした食感が楽しめるので、通常時にこれが出てくれば満足できる皿になるのだ。
、、、しかし、イベリコはまったく違う世界なのだったと、改めてうならせられてしまうのであった。
■イベリコ豚のロースト
満を持して登場したのがイベリコのローストだ。いや、ソテーだろうか。見た目から全然違うのがおわかりだろうか。焼き色の付いたそれは、豚と言うより牛肉のような茶褐色だ。画像が手ぶれしてしまっているのだが、おわかりだろう。ぶれたのは興奮してたからダ。
断面はロゼで、いい焼き具合だ。おおぶりに切って口に放り込む。瞬間、あの洗練された野性味が立ち上る!
「うぉわっ これは役者が違うよ、、、」
SPF豚の、まろやかな味とは対局にある、濃厚で陰影と輪郭がはっきりとした味と薫り。特にその薫りは先にも書いたように野性味、獣香がある。しかしそれはあくまで洗練されているので、嫌気は全くないのだ。すごい豚である、、、イベリコにも3つのグレードがあるのだが、今回のがどのグレードかはわからない、しかし、旨い、、、少し酸味も足されたソースが、永遠に食べ続けようと思えば食べられてしまうような絶妙な味である。
しかも、牛肉とは違い、沢山食べてもいやにならない。そこは豚肉なのである。しかし通常の豚のように飼い慣らされたおとなしい味ではない。やはり猪豚的な、野生と家畜の中間にある希有な肉だといえよう。この店に足を運んだときに偶然イベリコが入っていたら、ラッキーである。
■SPF豚とグリーンピースのフジッリ
豚料理ということで、パスタも豚であつらえてもらう。フジッリはねじりマカロニだ。僕の大好きなスパッカレッラというショートパスタが、輸入代理店がつぶれたとかなんとかで入らなくなってしまったので、最近はこのフジッリが出てくることが多い。これも、ソースが絡みやすい旨いパスタだ。
豚と豆、というのは非常に基本的な組み合わせであり、しみじみと旨い。豆の少しとろけたでんぷん質の粒状感と、豚のこっくりとした旨みがあうのだ。優しい味のパスタである。
■赤ピーマンと豚のリングィーネ
シチリア料理の特徴といえば、塩漬けのケイパーやアンチョビを多用することだが、もう一つ赤いパプリカピーマンがソースに使われる。この一皿も、トマトも少しはいっているものの、味とみための要は赤ピーマンのソースである。
ピーマンの甘みと香りが溶け出し、上質のオイルとともに麺に絡んでいる。シチリアではスパゲティーニのような細いパスタはあまり使われない。リングィーネのようなぶっとい乾麺が、この骨太な味にあうのである。上にかかったリコッタサラダの塩気が、どんどんと麺を胃に運ばせるのであった。
■イベリコ豚のカツレツ
そろそろおなか一杯だな、、、と思っていたら!出た!
「イベリコ豚のカツレツです」
一人一切れででてきたそれに、一同見た目だけでノックアウトされてしまった。でもおいらは二枚食べた。パン粉自体にチーズやハーブが仕込まれて揚げられるカツに、レモンを大量に絞り込んで食べる。ああ、イベリコを揚げるとこうなるのか!先ほど感じていた野性味が少し押さえられ、上品になる。焼き色を付けると香りが立ち上がり、揚げると風味がまろやかに上品になる。この使い分けがポイントなんだな。
もう、満腹である。でも、僕にだけもう一皿出てきた。
「やまけんさん、うちのまかないです。」
やった!とうとうまかないを食べることができたぁ!
バゲットに軽く焼いたベーコンを挟んだサンドイッチに、トマトと鰯のリングィーネだ。もう、言うことはない。
今回は、重シェフと30分くらいいろんな話をすることができた。明日は、オフ会直前特集その2として、この重さんとの対話を書こうと思う。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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