2004年4月17日 from 首都圏
そういえばこのblogでは、始めたのが昨年の国内出張シーズンからだったため、まったく外国ネタを書いていない。僕もたまには外国に行く。ほぼアジア!ていうかほぼタイ!それも都会のバンコクは素通り!ドン・ムアン空港には30分しか滞在せず、速攻で南の島であるサムイ島に直行する。サムイは極楽である。適度に観光地化されており、ウソ!と思う低料金で1週間、満ち足りたリゾートライフを送ることができる。もちろん行きつけの店もある。パラダイスカフェというその店では、毎日通っていたため、また勝手な料理を作ってもらうまでになった。朝起きて、豪華なビュッフェスタイルの朝食を食べる。絵はがきに出てきそうな白い砂と蒼いそら、エメラルドグリーンの海そのものがあるビーチに出て、ひたすら身体を焼きながら寝る。熱くなると海に入って身体を冷やす。喉が渇くとフレッシュパパイヤ(マラコーという)とコンデンスミルクとミキシングした冷たいシェイクを飲む。腹が減ったらパッタイ(焼きビーフン)を食べる。この悦楽的繰り返しである。
でも、、、 最近は行けないのである。ストレス溜まるのである。心の澱が溜まるのであった。
がぁああああ! っつーことで、本日は突発的(でもないんだけど)に、大学時代からの友であるノサク氏と、タイ料理を食うことにしたのであった。
ていうか食ってきた。その後、バーで酒を痛飲してきた。従って今、久しぶりに酔っぱらいモードで書いている。オーグードジュールのエントリでは親友の竹澤曰く「フレンチに合わせたせいか、お前らしい疾走感がない文章だ。駄文!」という批判を受けたので、本日は酔いに任せてホトバシりライティングベリーマッチである。
六本木は大嫌いベスト10に入る街である。しかし悔しいことに、気の利いた店もある。その一つがこの「バンコクレストラン」である。
都内のタイ料理屋をいろいろ食い歩いても、やはりこの店のパッタイが一番しっくり来る。これは、技巧の問題ではないような気がする。大体においてタイ料理は化学調味料ドバドバだし、既製品のペーストとかが味ベースに使われていたりするのだが、この店はそんなことを超越して、タイの味がする。一時期よく通っていたのだが、ほぼ2年ぶりに食いに行くことにしたのであった。
六本木の表通りをすらっと通り抜け、墓地の裏にあるちょっといかがわしげな通りに入る。けっこう有名店もある通りで、僕の知り合いが二人で入って、進められた酒を飲んで肉を食ったら二人で5万円取られたという「たん屋 又兵衛」も隣接している、Wooビルという小さな雑居ビルを目指す。
その2階に、バンコクはある。僕が親しくしていた店長と、ムエタイの話題で盛り上がった給仕の彼はいるだろうかと入ると、まったくスタッフに覚えのある顔がないのでちょっとがっかりする。タイ料理の店では結構あることだ。それでも「サワディー クラップ!」と挨拶をして入店。すかさずメニューをみると、、、ああ、全く変わっとらん。
まあ、しかし頼むモノは決まっているのである。メニュを閉じて
「クロウスター2つ」
「ソムタム」
「ヤム・ヌア」
「パット・パッカナー」
「パッタイ・クン」
と矢継ぎ早に頼むと、新顔イケメン系タイ人ウェイター君はニカっと笑ってビールをとりに行った。クロウスターというのはビールだ。タイのビールというとシンハ・ビールが有名だが、向こうの人は「クロウスターの方が旨いぞ」と言う。若干クロウスターの方がさわやかというかインパクトが薄いのだが、それ故タイ人は好きなのかもしれない。ちなみに関係ないが、シンハビールとはいわずにタイ人らしく「ビア・シン!」と怒鳴るのが正しい。
そしてタイ料理は、これも風土の関係もあると思うが、やたらと出てくるのが早い。急いで片づけないと行けないのである。こうして至福の楽園時間が始まる。
■ソムタム
これは青い未熟パパイヤのサラダである。青パパイヤは沖縄や鹿児島の離島でも獲れるので、最近手に入りやすくなっている。このパパイヤの皮を剥き、梨のような実に包丁で切れ目を入れ、それをそぐようにしてゴボウの笹がきのようにし、他の材料と混ぜてサラダにする。しかしこいつがバカ辛い!ピッキーヌーという世界でもベスト5には入ると言われる小さく辛い唐辛子が入るので、ツボにはまるととんでもないことになるのである。サムイ島でのある夜、僕の舌の味蕾を突き刺したピッキーヌーは、1時間以上その脳天唐竹割り系の激痛を伴う辛みを持続させ、食べたものを全て戻してしまうまでの刺激であった。
この店では若干の手加減をしているので、のたうち回るほどではないが、かなり辛いことは間違いないし、ピッキーヌーが入っているので(小さくて青い唐辛子だ)、ご注意されたい。
■ヤム・ヌア
ヤムはサラダ。ヌアは牛肉。炙った牛肉を薄切りにし、野菜類とサラダにしたものだ。これがまた辛いのでかなりの注意。唐辛子は3種入っているのでその汁に辛みが移って刺激度満点である。いつも思うのだが、タイ料理は、食っている人間がビールを消費する量を加速するためにこんなに戦略的に辛くしているんじゃないか?その通りビールが加速されるのだが、ビールでは全く辛さは解消されないのであった。
とはいえ辛いだけではない。タイの和え物料理は、ライムなどの酸味と糖分、そして魚醤ナンプラーの塩味と発酵系の調味料の複合ワザで味を付けてくるのだが、極めてサッパリしていながら酸・甘・辛が調和しており、実に最高な世界観なのだ!
■パット・パッカナー
パット(最後の”ト”はあまり発音しない)は炒めると言う意味、パッカナーとは、タイでしか見たことがない葉野菜である。軸が太くアスパラのような見かけで、歯触りも強く味は非常に濃い。日本でも作れないことはないらしいが、以前錦糸町のタイ食材輸入商にきいたところ、タイ産じゃないと強い味にならないらしい。そう、ちなみに僕はちょっと仕事でこのタイ食材卸に、沖縄産のタイ食材を紹介する手前まで行ったのだ。関係ないか。
このパッカナー炒め、実に最高!多量のニンニクぶつ切りとオイスターソースとで瞬間的に炒めるこの単純な料理こそ、タイを彷彿とさせる一皿なのだ。
■パッタイ
これこそ、若者時にタイでバックパッカーしたことがあるヤツらが全員郷愁をもって思い出すであろう麺料理だ。センレックという中くらいの太さの米麺を炒めた焼麺で、パクチーとピーナツを砕いたものがコク出しと香り付けにかかっている。ただ、これは出された時にはまだ完成していない!頼むと出てくる調味料セット↓を駆使して、自分風に仕上げて食べるのが向こうのお作法なのダ。
僕はまず大量に砂糖をぶちかける。これはなんと言っても譲れない。パッタイには砂糖である、これに唐辛子付けのナンプラを若干落として、ライムを搾ってかき混ぜる。砂糖の甘みが何とも言えない郷愁をそそる味に昇華するのである。パッタイの味ベースはカピという蝦を原料にした発酵調味料なのだが、実に日本人にピッタリ来る味だ。タイ料理と言えばトムヤムクンと反応してしまう人には、ぜひこのパッタイ砂糖がけを食べて頂きたいと強く思うのであった。
ウェイター君に、2年前までいた人のことを訊いてみた。
「あぁ、もうここの店長は2人替わりました、今は僕の時代デス!よろしくお願いします!」
と、あくまで爽やかに微笑みながら流ちょうな日本語で話してくれる。そうか、僕が慣れ親しんだ店長はもうタイにかえっちまったのか。いつもおまけしてくれたのになぁ、、、あのムエタイ好きのウェイター君もいないのか。あいつは「アレが食べたい」というと、本当に僕が食いたいものを持ってきてくれるというテレパシー関係だったのになぁ、、、
と思っていたが、この若いハンサム店長は「今は僕の時代デス!」と言うだけあって、
「これ、サービスデス!」
と、トムヤムガイ(トムヤムスープに鶏が入っている)を持ってきてくれる。ううむサービスは受け継がれているのう。
さて宴は進む。
■パット・マクワ・ヤーウ
マクワはナスのことだ。ヤーウは何だかヨウワカラン!とりあえずナス炒めなのだが、こいつは実に世界の至宝と言うべきナス炒めである。海老のみじん切りと鶏のみじん切りと、ナスと唐辛子を炒め合わせて、オイスターソース(ナンマンホーイという)で味を付けたモノだ。ホーリーバジルともう一つ香りのスパイスが入っているがワスレタ!
これをタイの長粒米である「カオソイ」にのせて食べると悶絶するどんぶりご飯になるのである。
■ゲーンキョウワーン・ガイ
タイを代表するグリーンカレーである。今日は鶏肉(ガイ)で攻めた。このバンコクのゲーンはタックライやバイマックルーなどのスパイスやペーストをの自家製でやっているらしく、香りが非常にフレッシュ&マイルド。タイ料理初心者にはぜひお勧めしたい。
うーん くったぁ、、、本当はこの後、プーパッポンカリー(ワタリガニのカレー)とガイ・ヤン(鶏の台風炭火焼き)、カオトムプラー(魚の雑炊)を食いたいところだったが、2名ではさすがにそこまでは行けなかった。
じゃあ、アレを食べたいな。そう僕と数人の友人の間では伝説なのだが、あの昔のウェイター君に「アレ食べたいなぁ、なんて言うんだっけ、アレ!」と言ったら、「おお、アレか!」と言って、本当にそのものを持ってきてくれたという曰く付きのデザートだ!
■タピオカのカボチャココナッツミルク煮
僕はタピオカとかその辺の甘ったるいのは嫌いである。、、、はずだった。しかし!このカボチャの黄色が若干溶け出した、温かいココナツミルクの海にタピオカがコロコロと浮かぶこのデザートだけは、地獄の辛さの後の楽園のようで大好きなのだ!
そして本日、頼もうと思った矢先に、あのニコニコイケメン店長がこれを持ってきてくれたのだ!
「お代わりしてクダサイ!」
「おう、早速お代わり!」
二杯食って撃沈である。甘くてあったかくって、トロッとしてて、ホッとして、実に最高なのである!
新店長、気に入った!記念撮影である。
向こうも「こんなにタイ料理好きな人初めてデス」と言っている。店長は替わったが心は変わらず。タイに行けない鬱憤を六本木ではらすぞ!
ちなみに本日ビールもしこたま飲んで、二人で12000円でした。タイではいくらくっても3000円は超さないが、日本ではこんなもんじゃあないでしょうか。
腹をさすりながら防衛庁前まで行き、バー「abby」にてシングルモルトとカクテルをいただく。ノサク氏と仕事とプライベートの話をしながら、限りなくポジティブ感が増幅する一夜だった!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。