2004年3月31日 from 首都圏
先日、新橋の「本陣房」がだめだというエントリを書いたら、少なからず反響があった。その中に一つ、メールで教えていただいた情報が引っかかった。
「虎ノ門交差点近くにある『兵六』の蕎麦は、名店というのではないけど値段の割に美味しいと、私の周りの人も皆いってますよ。」
「兵六」。虎ノ門交差点を新橋方面に戻り次の大きな信号の手前にあるこの店。あまりに大通りに面しているので、「けっ こんな店が旨いわけがない」などと思ってしまっていたのだ。しかし、旨いのだという、、、これは、行ってみるしかないだろう。新橋~虎ノ門でまだ行ってない店を開拓すべきタイミングでもあるし。
ということで本日、赤坂見附での会議終了後、徒歩で虎ノ門に戻り、兵六ののれんをくぐる。夕方の営業が始まったばかりなのか、客は多くない。予約客が二階席の空くのを待っている。店内は明るく、それほど高級感はない。ということは、市井のお蕎麦屋を任じているということだ。
そう、蕎麦屋にも格があると思う。高い格を表現してもイイと思う。それだけの満足度が得られればネ。本陣房なんて、あれは上格だ。なのにあの蕎麦の内容じゃあこまっちまうってぇもんだ。その点、この兵六はまったく飾って無くてよろしい。
しかし夜の営業らしく、蕎麦の品書きがなく、つまみや酒の品書きしかない。ま、最初の店で頼むのはせいろだからいいのだが、、、
「せいろ、大盛りできる?」
「はい、できます!」
とおねーちゃんが注文をとってくれる。客が少なかった生もあるが、4分ほどで蕎麦があがり運ばれてくる。これを見てちょっとびっくり!
せいろが横長の大型版で、その上にどひゃっと蕎麦が盛られている。非常に良い盛りである。
と思ったら、なんとこれは普通の盛りで、大盛り分は別ざるが付いてくるのダ!
蕎麦は非常に細切りされている。なんだか、山形の鈴木製粉の大師匠のごとき細切り指向である。角がビンと立ち、美人な蕎麦といってよい。
すかさず蕎麦を1,2本何もつけずにすする。2口噛む段階では香りは溶出してこない。3口目、あの蕎麦の香りがホロリと溶け出て立ち上る。
上々ではないか!
遠慮をやめ、蕎麦をたぐってつゆに漬けてすすり込む。つゆはかなりの辛づゆであるが、みりんも効いており、正統甘辛調で心地よい。蕎麦のコシが効いているので、細麺でもこの辛づゆでぴったりだ。
一気にすすり込み、つゆを一回お代わりし、大盛りざる分も食べ終えると、そば湯が出てきた。僕はかならずそば湯をチェックするようにしているのだが、ここのそば湯は佳い!見てくださいこの濃度。
これはわざわざ打ち粉やそば粉を足して濃度をあげてくれている蕎麦湯である。良心的である。白湯のようなそば湯を出す店もあるが、やはりこういう気遣いがあるほうが嬉しい。
いや、実に満足。これだけの実力がある店を、ぼくは先入観で見逃していたのであった。無論、最上級ということではない。けど、実に好ましい。小腹を満たすゾ、でも旨くなきゃイヤよ、という蕎麦好きの主眼にがちっと見合う、技量とスピードと盛りである。ま、これで1000円程度なら支払ってもいいな。と思いながら会計をしてもらう。
そこで僕は、女神の声を聴いた。
「大盛りで、770円になります。」
ええええええええええええええ
そんなの安いのぉおおおおおおおおおおおおお
思わずもう一枚食べて帰ろうかと思うくらいに安い!大盛りでこれだと、普通盛りはいくらなんだろう?ちょっと驚愕ものである。
先の話、言い直そう、最上級の店ではないが、最も好ましい店であることは間違いない!
小粋な香りのキレのある細切り蕎麦を俊速で出し、盛りは切符良く、かつ安い! これ以上に何を望むというのだろうか?
俺は気にいったぞ兵六!何で今まで入らなかったんだぁ~~~~~~~~~ 反省。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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