広島・竹原に名門酒造あり~ 竹鶴酒造 極秘潜入酒池肉林ルポ的私信 その2

2004年3月11日 from 出張

 さて竹鶴酒造の第一日目だ。

 ANAの超割で広島行きチケットをゲットしていた我々一行、朝9時55分の便で広島に向かう。一行とは、僕と工藤ちゃん、工藤ちゃんが五穀家店長をしていたときからずっと一緒に仕事をしている浅見君と大場るみちゃん、そしてこのblogで数回書かせていただいているイタバシ師匠(少年マガジンに長期連載されていたBoys be... の原作者だ!)と、その妻君である神澤ゆみこさん夫妻である。神澤さんは居酒屋ライターとして成功している(最近danchyuにも書いていらっしゃった!)方なので、本屋で手に取られた方もいるだろう。

 このような豪華布陣(?)で、基本的には神澤夫妻による竹鶴酒造取材というのがメインで、俺たちはそれを口実に遊びに行くという感じなのであった。

 広島空港に着くと、なんと竹鶴の社長と専務が車でお迎えに来てくださっていた!社長はがはははと笑いながら、板橋夫妻を乗せてすっ飛ばしていった。僕らは敏夫専務に乗せてもらい、竹原へと向かう。
 敏夫専務、といっても僕にとってはなんとなく弟的な人である(むこうはそう思ってないだろうが)。なんと言っても、僕が大学時代に遊びに行ったときにはまだ高校生だったのだから、そのころの印象をずっと引きずってしまうのは致し方ない。しかし、彼はいまや立派な専務であり、竹鶴酒造の次代を担う顔として精進をしているのであった。 でも飲み過ぎには気をつけろよな敏夫君。

 竹鶴酒造は変わりなくその文化財としての落ち着いた姿でどっしり構えていた。
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なんといっても250年以上続く家である。もうその存在自体が説得力のカタマリなのだ。
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 無茶ウマのバターケーキを濃いめの紅茶でいただき、まずはぶらぶらと竹原散策をする。これが有名な、映画「転校生」で転げ落ちるシーンの石段である。

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 そうこういいながら実はまだ昼飯を食っていなかったのであった。この竹原の小京都一帯では知られるお好み焼き「ほり川」になんとも10年ぶりくらいに入るのであった。そう、当時このほり川で現専務の敏夫君をお好み焼きを食べたのであった。とつとつと、いろんなコトを話してくれた敏夫君だったが、実は俺はお好み焼きを焼いてくれている店のおねーちゃんに視線釘付けであったのだ! わははは知らなかっただろう敏夫君! ということで密かにそのおねーちゃんに再会したかったのだが、、、

 久しぶりにくぐった「ほり川」は、やたら流行っているらしく店舗が増築されており、厨房には5人のおねーちゃんズが立ち働いているのであった。ちょっとびっくりしたが、やはり!おねーちゃんズは美女揃いなのであった。ここの店主は絶対に顔で選んでるぞ。ちょっぴりウラヤマシイのであった。
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ちなみに広島のお好み焼きなので、クレープ上に薄く鉄板に敷いた生地の上にキャベツをたっぷり乗せ、それをギュウギュウと押しつぶして水分を抜いていくスタイルだ。関東では広島焼きというが、ここは広島なのでそんな呼び方はしない。これを「お好み焼き」というのである。
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まあとりあえず10年ぶりだし、おねーちゃんはみなキレイだったので、加速度がついて俺はお好み焼きを2枚(イカ豚そば玉と、ホタテチーズうどん玉)食べたのであった。
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 腹もくちくなったし、散歩もしたということで戻ってきたら、早速竹鶴フルコースが始まろうとしていた。

「石川杜氏がお待ちですよ。」

 履き物を変えて蔵の敷居をくぐると、ひんやり冷えた酒蔵独特の空気に包まれる。先回来たときは造りが終わっていたが、今回はまっただなかである。
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 と、蔵の中に突如、12本の酒瓶が現れる!そう、現在仕込み中の桶から汲み取ったばかりの、正真正銘の新酒たちである。この竹鶴酒造の門をくぐる日本酒関係者は、このように利き酒をするならわしとなっているのである。それも、それぞれの酒についてコメントや評点をきちんとつける紙を渡され、コピーをとられてしまうという徹底ぶりなのであった。この時点で日本酒関係者には緊張が走る。「下手なことはかけない、、、」という感じだろうな。でも俺はまったく日本酒業界人じゃないから気楽なのであった。

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あ~ 、 どうも、石川です。 え~ いやいや、 まずは飲んでいただこうと思いまして」

 と、石川達也杜氏が登場する。相変わらずでかい。180数センチ、学生時代はボクシングをしていたという猛者である。しかも顔は、NYでメジャーリーグの選手としてがんばっている背番号55番に雰囲気そっくり(年齢からいえば石川さんの方が早いのだが)の強面なのである。
 しかしながら性格気質は温和でありすばらしき思慮深さを持つ御仁である。理論肌の読書家であり、酒についての古書は膨大なコレクションを蔵しており、研究を怠らないのである。でも彼のすごいところは、理論肌でありながら、そのすさまじい体力でバリバリと働きまくることであろう。
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 さて石川さんに薦められ、みな利き酒を始める。利き酒とは言っても何かを当てるというのではなく、酒質をみせていただくという趣向である。

 竹鶴酒造の酒の特徴は、協会6号や7号といった、香りよりも味がよくでる酵母を使っているということだろう。石川杜氏いわく

竹鶴の人間は、数字は9までしか数えられないんですよ(笑)

 とのことだ。原料米は山田錦も使うし八反錦も使うが、力を入れているのは雄町(おまち)である。近在の農家さん数軒にお願いして、合鴨農法で栽培した雄町米を契約栽培している。昨年に竹鶴に訪れた際、そのうちの一名の田をみせていただいたが立派なものであった。何より、生産者ご夫婦と竹鶴酒造の関係者との距離感がすばらしい。顔が見える関係性の中で酒を醸すという、もっとも重要なことをさらりとやってのけているのだ。

 当然といえば当然だが、生産者が違えば酒の味も違う。竹鶴ではできるだけ米を混ぜないようにして生産者別に仕込んでいるので、もし購入の機会があるならばラベルをじっくりみていただきたい。
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 今回の12種類の中では、藤浪さんという生産者さんの合鴨農法雄町米を使った純米が気に入った。力強さと味のバランスがいい。飲んだことがない人にはわからないだろうが、竹鶴の酒というのは、有無を言わせず相手をねじ伏せるような、アタリの強さが持ち味だ。だから、ほかのメーカの酒を持ってきて一緒に飲むと「なんだこりゃ」と声を出してしまうような違いがある。けど、この日は竹鶴ばかり12本飲んだので、その中では「これは比較的落ち着いている、こちらはマイルド」などという評価になった。

 しかし一番びっくりしたのはここでは明かせない秘密の酵母を使った酒である。なんと酸度が3.9度もあるのだ!通常こんなに高い酸度はあり得ない(らしい)。飲み口は強烈の一言だが、一口びっくりして慣れると、口中の感度が上がり、ほかの酒が物足りなくなる。これはしばらくの熟成期間をおいた後、家畜ではない獣肉のローストとともにいただくのがよいのではないか、と今から楽しみ千万なのであった。

 一通り飲んで、顔だけ酔っぱらい気味になったところでいったんお開き。近くのビジネスホテルにチェックインする。

 そして、、、すでに伝説となっている夜の部 「居酒屋 竹鶴」 の時間がやってくるのである。

(つづく)