2004年2月11日 from 出張
和歌山から福井へ移動する。和歌山駅構内の立ち食いそば屋にて朝食をとる。関西のうどんに不味いモノ無しと思っていたのだが、薄いプラスチック製のドンブリに伸びたゆで麺、冷たいエビ天で温度は低く、絶好の不味さだった。おまけにおばはんの髪の毛が一本入っていたが、面倒で文句も言わずにおいた。
サンダーバード11号で新大阪を出て近江あたりにさしかかる。琵琶湖と山脈、そして湖畔ののどやかな風景を楽しんだ。そのまま読書を続け、ふと気づくといきなり雪国の風景へと変異していた。通過した駅をみると敦賀である。
ああ、俺は太平洋側から日本海側へと移動しているんだなぁ、、、という感慨が少しこみ上げてくる。やはり人間は視覚的な刺激を最も直接的に感じるのだろうか。意識のありようが全く代わってしまうのである。
さて和歌山から3時間少しで福井駅に着く。すでに農業改良普及員の土屋さんと前川さんがお迎えに来てくださっていた。車中、僕が食べることだけが好きな男だと言うことを話すと、
「はい、そういうことだったんで、店はいろいろ検討しました。せっかくですから、福井にもフレンチのいい店があるので、昼はそこにそこにお連れします。」
ということだった。福井でフレンチ!といえば、魚介が旨いだろうな!
でも僕には一つ攻めておきたいテーマがあった。それは「ソースカツ丼」だ。ご存知だろうか、福井県はソースカツ丼のルーツの一つなのである。ソースカツ丼といえば、群馬県桐生市や長野県駒ヶ根市が有名だ。そしてもう一つの雄と言えるのがこの福井県福井市なのである!
そもそもソースカツ丼をご存知だろうか? 揚げたての豚カツを、別鍋でグラグラ煮たソースにドボンと浸し、これをご飯に乗せたものだ。至極美味である。これにキャベツが加わったりする場合もあるが、基本形はソースまみれのカツが飯に乗っかっているものだ。通常、このようなソースカツ丼が隆盛を誇る地域では、醤油と出しで煮て卵でとじたカツ丼を「玉子かつどん」とか「煮カツ丼」というように別名で呼ぶことが多い。つまり、その地に住む人たちにとって通常のカツ丼とはソースカツ丼を指すのである。なんとも痛快だ。
ということで、なんとしてもソースカツ丼の有名店に行って見たい。昼はせっかく予約までしていただいているので、帰りの飛行機に乗るまでの時間でささっと食べる、ということで行こうと思い声をかけると、
「先生、ソースカツ丼食べたいですか? 先生さえよろしければフレンチを食べた後にご案内しますが、、、」
な、なんとぉ! 僕のことをよくわかっていらっしゃる! 後で聞けば、実はすでに僕のこのWebを観てくださっていたのだそうだ。うーむ
ということで、本日の昼飯はフレンチそののちソースカツ丼なのであった。
福井駅から車で5分程度、繁華街の片町近辺にその店がある。
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salez et poivrez (サレポア)
福井市二の宮二丁目28-21 セトラルヴィレッジ1F
0776-28-6288
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店にはいるとすぐに清潔で綺麗なオープンキッチンがある。コックコート姿の職人達が忙しく立ち働いている風景は、非常に清潔感が溢れており、いい店であることを予感させる。
実はこの店のオーナーシェフである八木氏は、農業生産に従事していた経歴がある。もともと福井出身のシェフは、フレンチの修行を積み、東京でシェフをしていたそうだ。しかし、福井に戻って農業をやりたいというたっての願いがあり、しばらく前に戻ってきたそうだ。その時相談したのが、農業改良普及員をはじめとする農業関係者で、本日ぼくを読んでくださった土屋さんも、就農の検討の席に居たそうだ。ハウスを建てるなどしてかなりきちんとした農業をしていたそうだが、やはりフレンチへの情熱は忘れがたく、店を福井に出したということだ。最近では農業生産をやる暇がとれないようだが、一度でも農業生産に従事したのであれば、農産物の特性については熟知しておられるはずである。これは楽しみだ。
前菜とメイン、デザートのコース(1800円)を頼むことにする。
■カリフラワーのムースと魚貝のサラダ仕立て
カリフラワーのムースは丹念にミキシングされており、滑らかなクリーム状になっている。この状態からカリフラワーを連想できる人はいるまい。甘くうっすらと香る独特のキャベツ香がよい。強めに火を通したカリフラワーとサワークリーム、フィメ・ド・ポワソンを加えてミキシングしているのだろう。鯛とホタテ、水タコ等の切り身が載せられているが、ベースのムースが淡い味付けのため、あまり映えてこない。これらの魚は思い切って昆布締めにしておけばコクが乗り、よかったのではないかと思う。
■ハタのフライパンソテーバターソース
目鯛のソテーや牛フィレステーキ等が並ぶメインから選んだのは、ハタのフライパンソテーバターソースである。ハタは旨い。福井のハタはもっと旨いだろう、と思って土屋さんに訊いたら「いやぁこの辺じゃあまり食べないですねぇ、、、」とのことであった、、、
しかしいい皿であった。レモンを絞り込んであると思われるバターソースの微かな酸味が、焦げ目をつけた、旨味の強いハタの身をグッと引き締めた味にしている。いや、なかなかである。
この通り誠実そうなシェフによる店であった。客席には、首都圏と同じく主婦のグループばかりがいるのと、奥にビジネスランチらしいスーツ姿の一団がいた。福井のフレンチのレベルも、なかなかのものでした。
さてそしてすぐさまソースカツ丼を目指したのであった。
「先生、3時から講演ですから、早めに行きましょう」
もちろんです。時間がなくてもすぐ食べます。そして一行、福井ソースカツ丼の有名店「ヨーロッパ軒」へと向かうのであった。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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