2004年1月 5日 from 首都圏
下ネタではありません。
年末のご挨拶に市場に行った帰り、三ノ輪で地下鉄に乗る前に食事をしようと思ったわけだ。師走で活気のある商店街を冷やかし歩く。うなぎを店前で炭火で焼く店があったり、八百屋も威勢が良いし、とても好ましい商店街だ。朝から1時半まで何も食っていなかったので、中華定食をがっつり食べたいと思う。
見つけたのが、「福楽門」という店。いろいろ品書きを見たが、旨そうだ。なんだかテレビに出たとか書いてある。なんだろう、、、と思い、店に入る。
「いらっしゃい」
とおじさんが迎えてくれる。厨房には少し若めの中国人女性。おそらく夫婦か。
店内は本格中華の色が濃いので、こう言う店はオーソドックスに攻めたほうがいいはずだ。
「八宝菜定食。」
と頼む。
と、目に飛び込んできたのが、厨房のカウンター上に張られている暖簾だ。
「金玉満堂」
これはどう言う意味なんだろう、、、でも、下ネタではなさそうである。かくして運ばれてきた八宝菜は、なかなかのものだった。
金玉の謎は残るが、店を出てしばらく流す。なんだかまだ食い足りないと思って歩いていると、けっこう路麺店が多い。よし、ソバでも啜るかと思い歩く。薄汚い、今にも倒れそうな立ち食いうどん屋に惹かれるが、それは侘しさに惹かれているのであって、決してよい結果を生まないことはわかっている。そう思いながら選別して歩くと、地下鉄日比谷線の三ノ輪駅まで来てしまう。本当は、少し歩いて吉原大門の前にある天丼「伊勢屋」に行きたいところだが、ちと時間がない。
と、そこに路麺をみつけた。
「峠のそば」 というその店、どうやらチェーン店らしいのだが、更科系の蕎麦を生そばで食べさせるらしい。つまり立ち食い店ながら、茹で麺ではなく、いちいち生蕎麦をゆでて供するということだ。面白い。ここにすることにしよう。
前にも書いたと思うが、初めての路麺店で試すのは天玉と決めている。今日は、生そばを味わいたいので天玉蕎麦である。生そばをゆでるせいか、やはり時間はかかる。品書きを隅々まで読みながら4分ほど待ち、仕上がった蕎麦は、「おっこれは!」と思う、僕好みのたたずまいをみせていた。
まず、絶対条件である、「いびつなかき揚げ天ぷら」。型に入れて揚げた天ぷらは概してまずい。ここの天ぷらはたまねぎ・人参を薄い密度でふんわり揚げていて、これも僕の好みだ。
出汁はいさぎよい関東風。少し甘めのが、実に滋味深い。そばにはこれでよいのだ。そして、蕎麦は、、、本当に生蕎麦だ。更科の上品で繊細な食感と喉越しを感じる。玉子の黄身をかき揚げにまぶし、グズグズになる手前の揚げを麺と一緒にすすりこむ。旨い!
この峠のそば、実にツボを心得ているなぁ と思い、きっちり満腹になった腹を抱えて地下鉄に乗った。さて、今年は旨い路麺にどれくらい出会えるだろうか。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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