2004年1月18日 from 首都圏
4月から始まる、とある雑誌の新連載のための取材企画をした。詳しい内容はまだ発刊前なので書けないのだが、発刊日を迎えたらババーンと出すので、本屋で見かけたら平積みにするように!
で、その会場となったのが練馬。練馬といえば独特の品種「練馬大根」でも有名な農業の名門地域だ。西武池袋線の駅から歩いて3分もしない住宅街の中に、ひょっこりと農地が現れる。それも、当たり前のようにだ。一つ一つは面積が小さいが、それが点在している。都市と農地が共生する、とてもいい空間があった。住民も、農地が身近にある喜びをわかっているのだろう。僕の住む木場には全く農地がないので、実に羨ましくなった。
さて、その企画取材の場となったのが、保谷駅から徒歩すぐのところにある小さなビストロ「La毛利」だ。
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南欧食堂 La毛利
http://r.gnavi.co.jp/g465600/
〒178-0064 東京都練馬区南大泉3-27-9 吉田ハイム1F
03-3923-0817
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4人がけのテーブルが2つに2人がけが1つ、そして8人がけが1つという、こじんまりした店内だが、実に暖かで好感のもてるもてなしを受けることができる。
オーナーでシェフの毛利さんは、僕の一つ上の34歳、目上の方にこう言うのもなんだが、素晴らしきナイスガイである。見事に陽のパワーが放射されているのだ。
実はこの日は、素材の仕込みが必要な取材で、毛利さんと僕とで朝の9時半から3時間、野菜を切ったり煮たりしていた。その間ずっと話していたのだが、彼の剛直なシンプルさと、てらいのない人柄が大いに気に入ってしまった。フレンチとイタリアンの双方を修行し、自分の店をいきなり立ち上げてしまったというところからは豪快さがうかがえるが、向こう見ずとかそういうのではない、丁寧な面を持った上での豪快さと見受けた。
取材が6時くらいにあがって、へとへとだが、そのまま打ち上げに入らせていただく。店は通常の営業に立ち返る。あわただしく開店準備をするなか、テーブルにドンドンと並べてくれた料理は実に素直に美味しく温まる皿ばかりだった。
■自家製パンとチーズ3種
彼の店ではパンは自分で焼いている。昼・夜二回オーブンに入れるパンはしっとりした仕上がり。実にストレートな旨さなのだ。
■燻製オードブル 自家製ベーコンとスモークチーズ、スモークサーモン
毛利さんは自家製の燻製を出している。僕も燻製好きです、と言うと、燻製談義に火がついてしまった。彼の燻製は、店内の中華鍋でスモークする温燻方式だが、「うそっ」と言うほどに旨い仕上がりだ。微妙な火加減で、たんぱく質から旨味が最も引き出される温度帯で火を入れている。
■温野菜スープ煮
実は毛利シェフも自家菜園を持っている。そのせいか、野菜のつかい方は実に旨い。写真の温野菜は白菜・じゃがいも・大根だけのシンプルなものだが、火加減が絶妙で、それぞれの素材に合った温度と時間で、優しい味が引き出されている。
■はまぐりのワイン蒸し煮
唐辛子を強めに効かせたハマグリはビリっとしながらふっくらと蒸しあがり、塩気と合まってビールが進んで仕様が無い。
■ひな鳥のロースト
「はいよっ」とばかりに出てきたのは、なんとも豪快に雛鳥一匹だ。比内地鶏のヒナの腹に米と栗をフィリングとして詰めてローストしてある。塩が効いている皮目と、柔らかく滑らかな中身と、汁を吸ったライスのコントラストが楽しく美味しい。
■ブイヤベース
超・大皿にドンドンと盛られた鯛・チヌ・渡蟹・エビなどから出た旨味がギュッと凝縮されたスープをパンに浸して貪る。上品に食べなくていいんだぁとホっとしながら、魚にかぶりつき、骨をしゃぶる。
■豚肉とりんごの白ワイン煮
所要があり帰らねばならなかったので、その旨を伝えようと厨房を覗くと、
「あともう一つ、すぐ仕上がるから居てくださいよ。」
という。そして出てきたこの一皿が、彼の優しさ、暖かさをよく表している一品だと思った。
ご馳走様!
この店、お任せコースがなんと3500円である。ワインを飲んでも一人5000円で確実に満腹・満足になること請け合いだ。パワーが欲しいとき、暖かさを求めている時、この「南欧」的パワーに満ちた空間に行ってみてはどうだろうか。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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