豚丼は文化だ!帯広豚丼放浪記。(その1)

2003年12月 7日 from 出張

 念願の第二回帯広出張だ。前回は壮絶に食い倒れた。この記録を読んで友達付き合いを考え直したいと言う人もいたくらいだが、今回は前回に勝るとも劣らない食い倒れをしたのだ。
 今回のテーマはずばり「豚丼」だ。前回は帯広を広く味わうための回だったが、今回はその中でも特に豚丼にスポットを当ててみたいと思うのだ。しかし、結果として豚丼以外にもとてつもないインパクトの食に出会ったので、それについてもレポートする。まずは第一日目の顛末を観ていただきたい。


12月5日 JASの飛行機で帯広空港に降り立つ。同行の新人君とまず向かったのは、前回ダークホース的に旨い豚丼を食べさせてくれた空港2Fのレストラン「白樺」だ。レストランといっても、10年前のデパート最上階の食堂的雰囲気の店なのだが、ここの豚丼がめっぽう旨い!どのように旨いかは前回に詳しく書いているので、ご覧いただきたい。果たして、2ヶ月ぶりに食す豚丼は旨かった。肉をタレで少し煮詰めたスタイルの白樺豚丼は、すんなりと胃の府に収まった。
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 しかし今回は、もう一つテーマがあるのだ。前回の白樺編を見てくれればわかるように、僕はここのカレーライスにも関心があったのだ。そう、隣のおばちゃんの頼んでたカレーがとてもいい香りを漂わせていたのだ。と言うことで豚丼に引き続き、カレーを頼んだら、給仕のおばちゃんに変な顔をされた。 、、、カレーは間髪居れずに運ばれてきた。嫌な予感がする。すぐに出てくるのは、鍋でずっと保温されているということだし、一手間もかけていないと言うことだ。
香りはいいのだが、、、トロミたっぷりのカレー。しかし、肉片がかなりバラバラにほぐれている。つまりこれは極度に煮込みがかかっているか、、、もしくはレトルトか缶詰の高圧調理の結果だ。
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食べてみた。
缶詰だった、、、
豚丼の幸せな記憶が、缶詰カレーに上書きされてしまった、、、まあ仕方が無い。こんなこともあるのだ。トライ&エラーが大切だ。明日に同じことを繰り返さないことが重要なのだ。
「一つの店に豚丼とカレーは両立しない」
これが今回の教訓だ。



 さて商談だ。気合をいれて説明。そして打ち合わせ、現地視察。重要な変更事項が発生したものの、最後は先方もにやりと笑ってくれた。

「さあ、山ちゃんを今回はどこに連れて行こうか、迷ったんだよぉ」

たった2回目でこう言ってくれるまでになったということで、すでに満足である。

いったんホテルに帰って街に出るということになった。小一時間あくことになったが、この間ぼやっとしているわけにはいかない。今回泊まったホテルは「パコ」という変な名前のホテルだが、帯広では有名なシティホテルだ。そしてなんと、このパコから50メートルのところに、豚丼の元祖といわれている有名店「ぱんちょう」があるのだ!ホテルのフロントのあんちゃんに訊いても、「行列してますよ」と言う。そういわれるとますます行きたくなるのダ!ということで、駆け足(マジで)で行ってみた!
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 17時半と、時間的に谷間だったのか、それほど混んでいない。面白いのは、女性の一人客が数組いることだ。そういう食べ物なのだな、豚丼って。店のおばちゃんはじめ給仕の女性達は皆一様にやたらと礼儀正しい。
「どうもありがとうございました。」
「またぜひいらっしゃってください。」
などと客に声をかけている。持って来てくれた品書きを見ると、豚丼にはグレードがあって、

松 850円
竹 950円
梅 1050円
華 1250円

という順になっている。ここで注意して欲しいのは普通と逆で、「松」が一番低いランクになっているのだ、なぜかというと、、、どうやら女将さんの名前が「梅」なんだと(笑)
ということで梅がいままで一番高かったのだが、どうやらもう一つ上のクラスを新設したようだ。
 これから僕は会食があるので、華にいきたいのをぐっと我慢し、梅にしておいた。ちなみにここの店は豚肉を炭火焼きにするので有名だ。家庭などでは、豚をフライパンで炒めた後にタレを絡めて少々煮詰めるなどの方法が主流のようだが、豚丼専門店では炭火で焼くことが多い。そのせいか出てくるまでに時間がかかる。
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 6分ほどして出てきたのが、蓋をされた丼にはいった豚丼だ。しかし、蓋は閉まってないゾ!そう、梅とか竹とかの違いは、肉の量なのだ。期待に胸をときめかせながら蓋をとると、ふうわりと香ばしい炭火焼き独特の香りと、醤油ダレのこげた燻し香が鼻を刺激する。肉のプレゼンテーションはばっちりで、これは文字通りご飯が見えないまでに重ねられている。
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肉を食べてみる。うーむ 厚みのある肉がフカフカの食感に焼きあがっている。表面はカリッと香ばしくこげているが、噛むとふんわりフカフカもっちんもっちんとした優しい感触なのだ。そして肉にまぶされているタレは淡い。「白樺」の豚丼は、肉がチャコール色に染まるほどタレを絡めていたが、ここでは炭火で炙りながらタレはさっとしかくぐらせていないような風情だ。だからか、肉自体の味、とくに脂の甘味が際立つ。しかしながらおもしろいのは、ご飯にはしっかりと
した味のタレがまぶされており、こちらは塩気も強く、肉と合わせたときの感触は最高なのだ! これはさすがに元祖と言うだけあって、非常に練られた世界だと実感する。同時に、豚丼の奥の深さを思い知った次第だ。この豚丼は確かに旨い。けど、これまで食べてきた豚丼がこれに劣っているわけでもない。豚丼の味は、店ごと、家庭ごとに違うのだ。そしてその違いはすべて許容されるものなのだ。炭火焼もうまいし、フライパン煮詰めタイプも旨い。自分がどれを選択するのか、だけなのだ。

(その2に続く)