阿佐ヶ谷の居酒屋 善知鳥(うとう)にて ペーソスライブ

2003年12月24日 from

先日、ひっそりとCDデビューを果たした「ペーソス」というデュオをご存じだろうか、、、
っていっても、絶対に知ってる人なんていないのダ!

週間プレイボーイの編集に長らく携わり、業界では超大物編集者・ライターである島本さんという方が、岩田さんというギター好きの相棒と冗談で創作演歌を作っていて、よく歌っていたそうだ。それを聴いたかの写真家アラーキーが、
「5曲できたら、CD出してやるゾ」
と冗談でいったら、その週末に
「できました!」
と言って持ってきてしまい、発売することになってしまったという恐ろしい顛末のCDである。


■ペーソス
「甘えたい」(クエスト)

作詞・唄 島本慶
作曲・編曲 岩田次男
写真・題字/荒木経惟

 このアルバムが実に最高! 不惑の中年にしか書けない歌詞のオンパレードなのだ。しかも歌もギターもヘタウマの極地。

「今度生まれてくる時は
 できれば女に生まれたい
 女に生まれてTバック
 履いてブイブイ言わせたい」

「キオスクの おばちゃんに
 メガネを褒められた
 それだけで 今日一日 生きていけそうだ」

「血糖値が高いから
 中性脂肪が重いから
 前立腺が腫れてます
 とにかく歩けと言われてる」

こんな歌詞が、ムード歌謡や演歌の調べに乗り、切々と歌われるのだ。もう、たまらんのである。ライターのイタバシ師匠の車の中でこれを聴かせて貰った時、一発で気に入り、CDを購入したわけである。そのペーソスがライブをする!しかも日本酒居酒屋「善知鳥」でのシークレットライブである。ま、シークレット以外にはありえないわな。

IMG_0187-s.jpg ちなみに善知鳥(うとう)は、渡り鳥の名前。カウンター10席程度にテーブル2つの小さな店で、よい日本酒を出している店。日本酒ライターの神澤さんご推薦の店だ。
あ、ちなみに以前紹介した神澤さんの著書はかなり色んな書店でみかけるベストセラーだ。
で、青森出身の店主さんが選ぶ酒肴は、めふん(鮭の腎臓)や「ばくらい」(ホヤの塩から)などの渋いものから、特製のナスカレーやシジミラーメンなど、心憎いラインナップだ。特に、ここのカレーは実に旨いので、ぜひ食べて欲しい。

mefun-s.jpg 濃厚な旨味を湛えた「めふん」を肴に「鶴の友」本醸造、そして「鷹勇」へと進む。めふんはそれほど癖が強くなく、血合いの香りもほのかにする、実に蠱惑的な味の酒肴である。

 と、微酔い気分になってきた頃合いにちょうど、ライブが始まる。 わぁ ホンモノだ。 そして、大爆笑と共感の時間がやってきた。

 同行のメンバーもみな、面白いだけではなく佳い、と感じてくれている。そう、この歌、人生経験が深くないと絶対に書けない内容なのだ。

 店が狭いので、当然ながらPAも何もなし、言ってみればこれが本当の「流し」だ。ギター一本伴奏に、哀切入り交じりながら中年の歌声が、座敷の渋茶色の柱に浸みていく。

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 ライブ終了後、記念撮影。島本さんも、このCDの歌をすでに覚えて、歌っているファンがいるとは思っていなかっただろう。
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 この後しばらく阿佐ヶ谷ブラブラ。変な店がいっぱいあるが、そそられたのが「和メリカン」「サルサ味噌鍋」などの、絶妙にスカした看板類がならぶ路地裏店だ。そういう店を冷やかしながら、思い切り幸せな気分を味わっていたのだった。