2003年11月24日 from 首都圏
北千住のバードコートにて、野島さんご夫妻と僕、農家の長島勝美君とで語らいをさせていただいた。その内に野島千寿子さんが「ま、座って飲もうか!」と日本酒を出してくださった。しかも福岡の名門酒造「杜の蔵」の秘蔵酒だ。そこから勢いがついてしまい、4人で叫んだのが
「肉がくいてぇ~!」
だった。そう、昼から野菜しか食べていないのだ。
「よし、焼肉行こうか!」
と野島さんが電話をかけたのが「京城(けいじょう)」という焼肉屋。超有名店らしい。しかし、すでに行列が出来てるよ、とのことだった。一同シュンとなる。その後20分ほどいろいろ考えたが、すでに焼肉腹になってしまっている我々は納まらない。並んでもいいからこの京城にいこうということになった。
北千住の駅からすぐ横丁に曲がり、北千住のあの猥雑なイメージを背負ったストリートに入る。するとすぐに出てくる、ピンクと紫の中間のような「京城」の電光看板。
「うおーー いかがわしそうな看板!」
「でしょ?でもね、すごいんだよこの店!」
そりゃあそうでしょう、伝説の焼き鳥屋「バードコート」の主人が「旨い!」っていうんだから、旨いに決まっているだろう。
そして店の前に行くと、「おおっ?行列が無いぞ!入れ替え時間にあたったぞ!」そう、この店、2時間で入れ替えになるらしく、運良く入店できるタイミングにあたったのだ!こういう運については、はずさないのである。入店すると、野島さんはなじみらしく、番頭さんと挨拶。二階に通る。注文も何もかも野島さんにお任せする。
■焼肉 京城
松坂牛のネギトロ
センマイ刺し
ネギ塩タン
上ロース
上カルビ
ハラミ
ササミ(牛肉)
サーロインステーキ(5000円!)
とりもも
しいたけ
ペチュキムチ・オイキムチ
カルビクッパ
冷麺
石焼きビビンパ
ユッケビビンパ
この京城、俺は知らなかったのだが、超有名店だった。ザガットサーベイなどのそうそうたるグルメガイドで最高得点を獲得している名店なのだ。希少価値のある松坂牛の取り扱い免許を取得しており、全国で唯一の近江牛販売店指定店なのだそうだ。
こんなに怪しげなロケーションにあるのに、、、
そしてまず出てきたのがネギトロ。これ、マグロではない。松坂牛のすき身をネギとたたいて、海苔に巻いて食べるのだ。牛肉でこういう食べ方をして旨いものに当たったことが無い、、、と思いながら口にしたが、お話にならないほど旨い!牛肉なのに、脂が舌の上の温度で溶けていく。
焼肉が運ばれてきてまたびっくりした。タンはこれまで僕が食べてきたものの中で最高のものだと思う。ロースに至っては、一口目を生のまま食べたが、空前の旨さだった。焼くとこれがまた旨い。
ちなみに僕は牛肉は最高レベルのものを食べてきている。和牛の肥育農家に友人が多数居るからだ。A5という、牛肉の等階級で最も上のクラスの肉を何度も嫌と言うほど食べてきた。いつも脂が多すぎて本当に嫌になるのだが、、、しかし、この京城の肉はそれらを上回っていた。理由はわかる。熟成(エージング)だ。牛のような大型家畜の肉は、屠殺後の硬直が解けて、肉が分解していく過程でアミノ酸になり、旨味が乗っていく。この店では、枝肉を買い入れて専用冷蔵庫で熟成しているに相違ない。その熟成加減がやたらと深く、旨味成分がこれでもかというほど乗っているのだ。これは、牛の産地でも家庭でも絶対に出せない味の秘密なのだ。
その後、カルビ・ササミと食べ進む。ササミといっても牛の部位だそうだが、そんなの知らないなぁ。これが絶品。サシの入り方と味ののりが極めてバランスよい。
そして圧巻だったのはサーロインステーキだ。
「この肉を焼きます」
といって盛って来たのは、サシ(脂肪)が入りまくって薄ピンク色にしか見えない極上肉だ。そしてそれが鉄板にジュウジュウと音を立て、たまねぎのおろしソースをトッピングして運ばれてきた。こいつを食べてまた絶句。一枚5000円ということだが、この味ならば満足してしまう。
一通り肉を食べ、各自食事。僕はカルビクッパを食べるが、一杯700円というおかしな安い値段なのに、実に牛のスープが濃く、旨い一品だった。もうノックアウトである。
会計は一人10000円程度だがどう考えても安い。と思ったら、野島さんに奢られてしまった。いかん!今後何かでお返しをしなければ、、、
野島さんとは固い握手をしてお別れ。今度は門仲に招待せねば、、、御馳走様でした!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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