「希須林:小澤」の中華をいただく

2003年11月19日 from 首都圏

9月某日

sarad.jpg 中華料理の希須林は有名なのでご存知だろう。希須林は都内中心に数店舗展開をしているが、それぞれにハイクラスなもてなしをすることで人気がある。しかし僕は実は行ったことが無かった。  なぜかといえば、最近はやりの中華店は軒並みヘルシー嗜好(つまり油っぽくなく、素材を活かして味つけがあっさりしている)の店が多く、僕には物足りないからだ。ヌーベル・シノワーズなんてほとんど興味が無い。中華料理は火と調味料で素材をねじ伏せていく料理だと思っているので、ガッツリ食べられるものでなければならないと、個人的感覚としては思う。ただし化学調味料はあまり使わないで欲しいが、、、(料理番組などでもドコドコ投入するのは料理人としていかがなものかと思うゾ)  希須林も同じように家庭料理っぽい中華なんだろうな、と思っていたわけだ。しかし、中央線沿線の阿佐ヶ谷に住む食人・飲人夫婦の神澤・板橋夫妻に「メシ行こう」と誘われたら、行かずにいられない。例によって兄弟分の工藤ちゃんと出かけた。

阿佐ヶ谷にあるのは希須林の中でも元祖といえる「小澤」という店だ。その辺のことはようわからんが、最初にはじめた人らしい。店は阿佐ヶ谷駅から5分ほど歩き、路地を少し入ったよくわからない場所にある。中は綺麗なつくりで、中華という構えでは全く無い。よくある「綺麗な自宅にお呼びしました」風の店だ。二階に通されるとさらにその綺麗な調度が印象的な室内だった。清潔感のある制服を着て、きちんとしたサービスをしようという気がバンバン伝わりすぎてくるウェイター&ウェイトレスをみて、 「うーむ 俺の苦手な中華かも、、、」 と若干心配になりながらも、品書きはナカナカに魅力的なものだった。

本日のオーダー

魚と野菜とナッツの希須林サラダ 雲白肉(ウンパイロウ) 酢豚 穴子の唐揚げ中華ソース 揚げ海老マヨネーズソース和え 麻婆豆腐(劇辛) 上海焼きそば

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魚と野菜とナッツの希須林サラダ は、よくある中華サラダ。これはもう優しい味付けで、この店のこれから出てくる料理の方向性がみてとれる。 雲白肉(ウンパイロウ) はニンニクネギ風味のソースが上品だった。

酢豚は旨かった。ケチャップを使わない、黒酢ソースだが、これが臭みのない豚のカリカリ揚げにマッチして非常に美味であった。 subuta.jpg 穴子の唐揚げ中華ソース は、雲白肉と同じソースだということだが、旨そうなので頼んでみた。結果は上々。穴子は江戸前かと思うが、瀬戸内以外で水揚げされる穴子は揚げ物に合う。これに少し酸味のある中華醤油のソースが非常に合っていて、食が進む。 anago.jpg

これに気をよくして頼んでしまったのが麻婆だ。ちなみにおいらは大盛飯、他の方々は普通の茶碗で飯を頼む。 ma-bo.jpg ただしこれは今ひとつだな。コクが薄かった。おそらく数年前の、マイルドな麻婆豆腐しかなかった時代ならショッキングだったのだろうが、花椒や本物の豆板醤といった食材がふんだんに供給されるようになった現在では、満足度としてはやや平板な印象だ。

それとは対照的に満足度の高い一品が、海老マヨであった。 ebimayo.jpg 海老に粉をまぶして揚げ、エバミルクとマヨネーズ等を合わせたソースに絡めて供するこの一品だが、実に旨かった。本日一番いい皿。横浜の聘珍樓で9年ほど前に食べたのが最高だったが、こちらはこちらで旨い。

もうこれで板橋夫妻はお腹一杯だったらしいのだが、僕は全然足りなかったので焼きそばをオーダー。 yakisoba.jpg 横浜中華街の梅蘭のように卵のカリカリで蓋をした焼きそばだ。これはこれでまずまずの味。

といった感じで食い荒らしたわけだが、、、

ore.jpg

結論としては、まあ満足。というのは、この店のTPOと僕のそれが合っていないというだけだ。やはり冒頭に述べたように僕はギンギンぎらぎらトンカツソース系の人間なので、もっとこってりしたものが食べたいわけだ。けど、この小澤の店内を見回すと、年齢層は高い。ゆったりと構えた家族や夫婦がゆっくりと楽しんでいる。そういう人たちにはこれ以上の店はないだろう。重たくならず、さっぱり、あっさりと素材の味を最大限に引き出した調理方法。そして家族的なあたたかいサービスと店内の調度。そういったものを味わうのに最適化されている店なのだ。  ただ、素晴らしいと思ったのは、化学調味料バンバンの調理では全くないということだ。奇をてらわず落ち着いた味付けは非常に好感がもてた。

そしてこの後、阿佐ヶ谷のディープゾーンに潜入し、気の利いた日本酒が飲める「善知鳥」(「うとう」と読む)にて酒を飲むが、この店のカレーが絶品で旨かったのだ!大盛でカレーを平らげる僕を観て、板橋さんは今にも吐きそうな、気持ち悪そうな顔をしていた、、、