2003年11月 2日 from 食材
山形の超優良農家から、葡萄が送られてきた。彼は山形県北部のとある地域で有名な農家の息子だ。ブドウよりもラ・フランス農家として名高く、僕も少々だが売らせてもらったのだ。彼の家は新宿に本拠のある某高級フルーツショップに独占的に納めている関係があって、彼の名前をおおっぴらに出すことはできない。従ってゲリラ的に販売したのだった。
山形で講演があった際に彼の農園を訪ねてみた。蔵王を望む静かな大地で、洋ナシと葡萄を作っているだけではなく、立派な「家」を運営していたことが印象に残っている。ちなみに、某スーパーチェーンのバイヤーさんが僕の会社に来た時に、ちょうど彼の葡萄があったので出してみたら、 「この時期になんでこんなに立派で美味しい葡萄が!」 とびっくりされ、ぜひ取引したいと言われたことがある。その話をしたが、やんわりと 「量が採れませんから」 と断られた経緯がある。そんな男だ。ちなみに彼と彼のお父さんに連れて行ってもらった蕎麦屋は絶品だった、、、
実は、ぶどうの本場は山梨県だと言われることが多いが、最近多くの農産物関係者から、「ブドウの好適地が北上しつつある。これからは山形県がよくなるだろう」ということを聴く。お察しの通り地球温暖化の関係だ。山梨の平均気温が上がり、山形がブドウの栽培好適地になっているということだ。だからといっていますぐに果物王国の王座が移動するわけではないだろうが、山形のブドウは、彼の農場をみる限りではレベルが高い。
彼から送られてきたのは6種。蔵王乙女、カッタクルガン、ロザリオビアンコ、レディースフィンガー、アリサ、シナノスマイルだ。おそらく聞きなれない名前ばかりだろう。ブドウはやたらに品種が多いのだが、なぜか店頭には巨砲やピオーネ、マスカットといった一部の品種しか並ばない。もっと面白いブドウは一杯あるのだ。例えばカッタクルガンというのは、つややかなライムグリーンの品種で、皮ごと食べられるブドウだ。皮に渋みがなく、かみ締めると皮のサクサク感と実の柔らかさがあいまって非常に美味しい。
そんな中、僕が一番好きなのは蔵王乙女だ。レッドクイーンと伊豆錦の交配種で、その名の通り、蔵王山麓で育種されたという。ややあっさり目の味だが、上品で気品のある甘味と酸味が心地よい。彼に電話をすると 「いや~ 今年は天気が悪くって、モノが悪くて申し訳ないです。」 と謙遜する。確かに今年は果樹農家には厳しい年だったが、よく健闘しているではないか。帰り道に寿司 匠に寄って、レディースフィンガーを一房分けてあげた。でも、お気に入りの蔵王乙女は僕が独占で食べるのだ。それだけは譲れないのであった。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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