2003年11月 4日 from
静岡駅周辺の名店を教えてくれと言うSAVAさんへの返答その2。
これは2002年4月5日の手記だ。
本日も朝から新幹線で静岡へ向かっている。静岡とはすっかり縁が深くなった。お茶との付き合いが産んだ人の縁が、仕事として必要とされるという、正の循環となっている。ありがたし。
しかしこれまで書いてきて、1回の出張で出会う数々の店を全て一号で紹介するのは大変な作業と悟った。親切な読者の一人が教えてくれたところによると、
「やまけん、あんたの食べた量を額面どおりに信じたら、一日5600kcal食べてるよ。」
とのことだ。うーん。
前号となった3月22日編の翌日は、友人に教えてもらった、噂の巨大とんかつの店「蝶屋」に行ったのです。
■蝶屋 静岡駅より徒歩5分 スクランブル交差点近く
上とんかつ 1800円
(ちなみに特上は2000円)
店はむちゃくちゃに狭い。1.3Mほどの入り口と同じ幅でカウンターが10席程度、奥は少し広間になっているが、狭い。しかしカウンター席のスペシャルリングサイドで、演歌歌手のような、絵に描いたような職人の揚げ技を観ることができる!
今回は、最大のでかさを誇る「特上」ではなく「上」を頼んだ。特上は、この店を教えてくれた友人と一緒のときのために取って置く事にしたのだ。店のおばちゃんいわく「特上と上と並の違いは大きさだけ!」ということだった。
絵に描いた職人オヤジが厚手の鉄鍋にフワッと投入したのは、一枚の肉ではなく、「直方体の肉塊」であった。ここでいう「巨大さ」は、横幅ではなく厚みのことだったのだ。当然、火を中まで通すには時間がかかる。10分ほど待つ間にとなりのおばちゃん二人連れを見ていると、ひれカツを頼んでいる。揚がったヒレカツには、もう一人のおっちゃん(鍋前にはいない。キャベツ、ケチャップ担当?いやおそらく交互に鍋前に立っているんだろうなぁ)が、瓶に入った真紅のケチャップをカツにかけている。カツにケチャップを直にかけてしまい客に供すというスタイルは始めてみた。
(続きは下記↓をクリック)
私は、邪道と言われるかもしれないが、とんかつの楽しみの30%くらいは、ソースの旨さが占めていると思っている。先回号で紹介した「かつ好」のような名店ではソースを使わず塩で食べるのが旨かったが、特例である。通常は、これでもか!というほどソースをじゃぶじゃぶかけて食べる。とはいっても段階がある。これを読む皆さんは揚げたてを職人の牛刀包丁で切り分けられ、整然と並んだとんかつのどこから箸をつけるだろうか?これには、端からと言う人と、真中という人に分かれるだろう。当然この端と真中で味わいは違う。まず、端にあるカツ片は、体積比率からすると真中よりも衣の量が多い(あたりまえである)。火も真中より若干通り過ぎ気味である。しかし衣の量ゆえにソースまみれにしたときの至福感は真中片と比べ物にならない。そして真中片は、寿司で言えば大トロか。最も火が通りにくいところゆえ、職人はここがミディアムレアのぎりぎりの加減になるように揚げているはずである。ゆえに、ソースぶっ掛け量はカツ片の部位による変動するのである。
これを「カツ片変動ソース制」と言う、とゆーのはうそである(変動相場制にかけてみました)。
ということでソースの量の話でした。つまり結論としては端っこはソースじゃばじゃば。真中に向かうにつれ淡い味つけで楽しむ。ということで、一口目は真中に近い方から楽しみ、じょじょ
にソース量をふやしていくのが私の食べ方た。
蝶屋のカツにもどる。ここではケチャップが予めかけられて出てくるというスタイルだ。このケチャップ、非常に気になる。瓶に入っているのだが、よくある広口瓶ではなく、カルピス瓶のような瓶なのだ。しかも無印なのでメーカーがよくわからん。そして卓上にはソースさしが出ている。振ってみると、濃度はそれほど高くない。私の好みは濃度の高い、若干甘め野菜たっぷりフルーツ系ソースなのだが、ここのは違う。濃度は若干薄め(つまりさらさらとねっとりの中間)で、辛口ソースである。ケチャップとソースが混ざることでなかなか他に無い味わいになる。
肉は、先に書いたように「肉塊」が切り分けられて出てくる。肉の断面は明らかに通常のとんかつの3倍くらいの面積である。一切れを一口でほお張るとさすがにでかい。噛み締めると肉汁がじゅわっと染み出てくる。お?しかし意外にさっぱりしている。よく考えてみると、肉塊の体積が大きい分、コロモよりも肉の断面のほうが分量的に断然多いので、油っぽさを感じないのである。むしろ、良質の豚肉の味が純粋に染み出てくるのだ。
肉質は、申し分ない上質のロースである。銘柄豚使ってるかどうかは、、、わからん!畜産の仕事もしてたけどちとわからん!!けど、私の好きな「豚の香りがする豚肉」ではある。黙然と食い進むうちに、無言で店のおっちゃんがキャベツを一盛り追加してくれた。ウレシイ。
味噌汁が欲しかったが別注文になるため今回はよすことにした。ごはんもおかわり自由なら頼むのだが、150円かかるので辞めた。あっさり食い終わり、なんとなく物足りなさを感じながら勘定をした。1800円。金額相応と言えよう。
店をでながら、何かしら違和感を感じていた。求めていた物と違う、、、という違和感だ。この違和感の源はなんだろうと歩きながら考えて、結論がでた。
「やはり特上(特大)を食べないとダメだ!」
ということで、本日は蝶屋リベンジマッチで特上を食べに行くのだ!
~~~~~~~~~~~~仕事中~~~~~~~~~~~~
ぷはっ!
仕事終了。
そもそも蝶屋を紹介してくれた静岡のお茶メーカーの社員君とともに蝶屋に向かう。ちなみに蝶屋は「スクランブル交差点の近く」といえば、静岡市在住の人間はすぐに地理的に把握できるらしい。そんなにでかくないスクランブル交差点なのだが、、、
さて、店に入ると、驚いたことがある。カウンター内の頑固そうな親父が、私と目が会った瞬間、ニィ~っと笑みを浮かべたのである。
私は、はじめての店で店員さんと親しくなるのは得意である。しかし、前回は満足感が今ひとつだったため、店の人には目立ってコミュニケーションは取らなかったのだ。にもかかわらず親父は私に笑いかけた。自意識過剰だと言われる向きもあるかもしれないが、私のうしろにいた友人も
「やまけんさんもうあの親父と友達になったんですか!」
と驚いていたほどなのだ。うーんびっくり。そんなにがっついていたかなぁ。
カウンターにつくなり片手を突き上げ「特上!」と頼む。また親父がにやっとしながら肉塊を鍋に投入する。たっぷり10分かかってから切り分けてくれたその肉塊は、やはり「上」とは違う「特上」レベルの圧倒的存在感を放っていた。
あとは書くだけ野暮だろう。私は食った。赤だしも飲んだ。同行の友人が「食いきれない」といったカツ3片も食った。キャベツは都合3皿分食った。
結論:
「とんかつではなく、コロモ付き肉塊をひたすら摂取するという感覚だった。」
でも満足!
あ~ 一軒しか書かないのにやっぱり長いな俺の原稿は!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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