2003年10月30日 from 食材
北海道の某農園から、たまねぎと馬鈴薯(ジャガイモ)が届いた。本日はちょっと疲れがたまったので休暇を摂っている。ちょうど良いので食べ比べをしてみることにした。
ジャガイモは北海道から男爵とメークインの2種が届いている。これに加えて関西の某所から、現在まだあまり市場に出回っていない新品種「インカの目覚め」をいただいているので、この3種を食べてみよう。
3種のじゃがいも、といっても男爵とメークはスタンダードな品種であり、説明は要らないだろう。さてもうひとつの新品種「インカの目覚め」だ。ジャガイモ界(というものがあるのか知らんが)では長らく男爵とメークの二大巨頭体制が続いてきた。本当は「出島」などの副次的な品種も出回っているのだが、スーパーなどでは品種名が表示されることは少なく、単に「じゃがいも」としか書かれていないので、一般の人はあまりよくわからないのではないだろうかと思う。
しかし最近、この二大巨頭時代が崩れつつある。じゃがいもがあまり売れないというのが根底にあるのだろうが、新品種の売り出しが盛んだ。一昨年あたりからキタアカリをいろんなスーパーで目にするようになった。農業者の間ではもう数年前から「キタアカリが旨い」という情報が飛び交っていたが、生産量が増え、安定供給可能になった一昨年あたりから、本格的に店頭に並ぶようになったわけだ。キタアカリで特筆すべきなのは、芋が美味しそうな淡い黄色であることと、男爵系のホッコリ感と、それまでにはなかったネットリ感が混在する、複雑な肉質にあるだろう。そして味は独特の風味があり濃厚。芋があまり得意でない僕でも、丸ごと加熱してかじりたいという気持ちにさせるものがある。
キタアカリ以外にも、インカレッドのように皮が赤い(紫っぽい赤色だ)品種もよくみかけるようになった。これは実はでん粉の採取用だったり加工用だったりするのだが、転じて小売にかけてみると、面白い物好きなお客さんが買っていくのである。
このように百花繚乱とまではいかないが、だんだんと2大巨頭体制から脱しつつあるジャガイモ界に鳴り物入りで登場したのが「インカの目覚め」だ。僕はこの芋をあるJAの人から聞いたのだが、
「とにかく旨いよ。まっ黄色で肉質はきめが細かくて、栗の香りがするんだよ。」
という紹介のされ方に、思わずよだれが出てしまった。残念ながらその時期は収穫の数ヶ月前だったので現物がなかったし、また生産量が極めて少ないため、分けてはもらえなかった。
「そうだな、男爵200ケースに1箱の割合で分けてあげるよ!(笑)」
そりゃ無理だ、、、
ところがこの秋、とある関西の某所から、
「手に入ったよ~」
と連絡あり。無理にお願いをして、5玉だけ送ってもらったのだ。感想は下記に記そう。
ジャガイモはできるだけ皮をむかずに調理して、後から皮をむくのが望ましい。そうしないと旨みが逃げてしまうからだ。そして、煮るよりは蒸すか焼いて熱を通したほうが美味しい。今日は焼くことにした。最近よく使われるようになったダッチオーブンという鉄鍋があるが、その小型版のフライパンであるスキレットを使う。油はいらない。洗ったジャガイモを並べて蓋をし、弱火でじっくり加熱する。蓋も鋳鉄製で重いので、ぴっちり密閉できるので、食材の水分で蒸しあげることができるという寸法だ。20分ほど火を通し、並べてみた。
こうしてみるとインカの目覚めが一際目立つ色なのがわかる。実に食をそそる黄色なのだ。天然塩のみで3種を食べてみる。男爵はホッコリ感と粉っぽさが同居したあの食感だ。メークも適度なネットリ感があるが、この生産者のはメークらしくなく食感と味わいが豊かなメークだと思った。
さてインカの目覚めであるが、確かに独特の香りがする。香ばしい独特の香りはしかし、栗の香りではないかな。過大に期待していると肩透かしを食らうかもしれない。それより食感が面白い。キタアカリに比べて粉状感が強いのだが適度に粘りもあるので、喉に詰まるということはない。ただ、甘いのでポテトサラダには向くまい。コロッケには良いかもしれない。
これは非常に面白いけど、売り方が難しいじゃがいもだ。特性を最大限に発揮するためには姿のまま出すのが一番よい。これを一般的な加工用にしてしまうとあまり生きてこないような気がする。もう少し手に入れば、いろいろと料理を試してみるのだが、、、
ちなみに先日燻したベーコンと一緒に薄切りにしたインカの目覚めを炒めてみたときは、非常に香ばしく美味しかった。油との相性は絶品、焦げ目を軽くつけるのは大正解と言える。
なんにしても、初めて口にする人には相当インパクトの大きい品種だ。一般に出回るのはおそらく来年からだと思うが、もし店頭で見かけた人は「買い」である。
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