2003年10月16日 from 出張
今日は久々に完璧な食い倒れが満喫出来た。静かな満足が僕を包んでいる、、、
朝から重要な会議。きっちり仕事しましたぜ!マジで! 朝飯も食べずに、客先を辞去したのが12時半過ぎ。もう腹は減りまくっているのであった。同行の青果物流通業者の方々と共に昼食をということになる。 会議が住道(すみのどう)という場所だったのだが、駅までの道のりにいろんなものがあって冷やかして帰るのが面白かった。豆腐屋ではいかにも旨そうな生湯葉が売っていたので足を止めると、ひろうす(がんも)も旨そうだ。2つずつ買い求める。湯葉はわさび醤油か、柚子胡椒で食べると旨いらしい。
商店街に入る前の空き地の横で、何やら面白い車が停まっている。なんと業務用の電気オーブンを積んで、その場でメロンパンを焼き、直接販売をしているのだ!焼き上がり時間の目安が書かれており、すでに5,6人の行列ができている。俺の闘魂は一気に燃え上がった。
並ぶこと5分、見事焼き上がったメロンパンを同行の皆さん分も買い求め、出来たてアツアツのメロンパンにかぶりつく。表面は当然ながらクリスピー感たっぷりでカリっとしているが、クッキー生地の部分以外は驚くほどにフワフワ。生地に空気をたっぷり含ませているので、大きめなのに実にライトなのだ。内部に密に詰まっていないので、軽く食べられてしまう。これは幸先がよい。
■シャレードのメロンパン 120円/個 移動店舗(っていうか、車)なので、大阪府内を適当に巡回しているらしい。
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さて電車にのり目指すはキタすなわち梅田界隈である。実は大阪オリジナルのファーストフードである「イカ焼き」をまだ食べたことがなかった。阪神百貨店の地下食品売り場に旨い店があるというので、行ってみる事にした。そうしたらそのすぐ近くに551(蓬莱)の豚まんがあったので、豚まんと肉団子の甘酢タレ、シュウマイを買って立ち食いコーナーにて食いまくった。イカ焼きは、お好み焼きとは明らかに違うものだった。今後数回は食べてみないと理解できないかもしれない。
さてその後は同行の方々とみっちり2時間の会議であった。梅田の地下街の喫茶店で会議をしている間、地下街のトイレに行ったとき、どうにも気になる店を見つけてしまった。それが「ピッコロカレー」である。インディアンカレーと同じように数店舗のチェーン展開をしているようだ。雑誌に取り上げられたりしているようで、店先には記事のコピーが貼られている。同行の皆さんに聞くと、 「うちのおかんは大阪ではピッコロカレーが一番美味しいって言うてました。」 という。 実は本日は、昨晩食べられなかった「インディアンカレー」に絶対に行こうと思っていたのだ。しかしこのピッコロカレー、非常に気になる。なんといってもトイレの横にある8席しかないカウンターだけの店というのが、絶妙にソソルのだ。
その時、食い倒れの神が俺にこう囁いた。 「心配するでない。ピッコロカレーではビーフカレーを食し、その後インディアンカレーにてハヤシライスを食べればよいのだ。さすればカレーが重なることはない。」
おおっ そんなことは考えてもみなかった! なんと素晴らしい啓示だろうか!? 実は昨晩、本格派インドカレーを食べ終わり床に就き、ひそかに悩んでいたのだ。 「インディアンカレーは実に旨いのだが、あそこのハヤシライスも食べてみたい、、、でもカレーも食べたい、、、どおしよう!?」 この悩みが一挙に解消されるのである。あとは、肉まんやら何やらを詰め込んだ胃袋にカレーとハヤシが入るのか?という点だけであるが、そんな心配はないことは読者の皆様はご存知だろう。
ピッコロカレー店内は、渋く光るカウンター席と、8席の丸イスで構成される純喫茶風の調度だった。ビーフカレー、チキンカレー、シーフードカレーが品書きされている。ビーフが旨いと聴いているので、ビーフを頼む。店番の女性がまず別皿に白菜の浅漬けを出す。大阪のカレーの付け合せは面白いなぁ、インディアンカレーでもキャベツの甘酢漬けがでるし。業務用アルミ鍋に一人分のルーを入れ、熱を通す。ご飯を盛ってその上にたっぷりと濃い茶褐色のルーをかけ、それは供された。
■ピッコロカレー ・ビーフカレー 980円
濃い。 とにかく濃厚なプレゼンテーションである。茶褐色というか暗褐色のルーは、見るからに煮込まれ度の高さと深さを感じさせる。スプーンで軽く混ぜ、口に運ぶ。インディアンのようなパッと散るような辛味はない。見た目通りの濃厚でねっとりとした芳香が立つ。牛肉はスネか肩を長時間煮込んでいるようで、やわらかい身がゴロゴロと入っている。これもおそらくバラ肉をつかってトロリと仕上げているインディアンとは対照的だ。無論これはこれで好ましい。美味しいカレーだ。量的にも価格相応に盛りがよく、満足いく。皿を舐めるようにいただいた。これは、家庭で食べる日本風カレーを、限りなくプロフェッショナルに拡張したカレーだ。そのため、実に心地よく懐かしく、期待を裏切らない味だと言える。いい店を見つけた。
しかし、 と、地下街を「インディアンカレー」に向かって歩きながら自問した。俺が求めていたカレーはあのピッコロカレーだろうか、と。昨晩から俺の魂が欲していたのは、鋭くエッジの立った、風が通り抜けてゆくあの感覚ではなかったか、と。
と、格好つけてみたが、単にインディアンカレーにも行きたいだけである。ここ1ヶ月半の内に3回目だ。いや、今後もできることなら大阪にきたら必ず寄りたいのだが。今日はしかし、カレーではなく、前回隣の人が食べていて気になったハヤシライスを頼んでみよう。エッジの立ったカレーはまた次回だ。 ちなみにカレー780円に対してハヤシは600円と安い。スパイスや手間がカレーよりかかっていないのだろうか。カウンター中央の飯櫃(めしびつ)のまん前に座る。これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。
ハヤシが出てくる。なんとも初めて見る色彩である。オレンジに近いトマト色、玉葱は櫛型カットが大量にのっている。そしてグリーンピース6粒。うーむ適度なチープ感が漂っている。このハヤシは山田チーフではなく奥の厨房でソースがかけられて出てくる。さて、どのような味だろうかと一口食べて、驚いた。カレーで感じたあの甘さが、ハヤシだとストレートに出てきている。甘い。無論、好ましい甘さである。玉葱のプンとする香りが鼻腔を抜ける。ハヤシのソースはこれもまたねっとりしており、口中に適度な摩擦感を感じさせながら甘味を発しつづける。う、、、旨い!こんなハヤシライスは初めてなのだった。 無論カレーとは違って辛味は一切ないのだが、なぜかあの「エッジ」を感じる。それは、完成度といってもいいかもしれない。全く、隙や脇の甘さがないのだ。それも味だけではなく全体の世界観を通じて、である。これはびっくりした。
その世界観の礎を発見した。さきほど触れた飯櫃である。この飯櫃、単なる業務用のガス飯釜かと思ったが違う。本当に飯櫃なのだ。ステンレスの胴の中に、キャンバス地のような布の飯袋をいれ、そこに炊き立ての飯を詰めて保温しているようだ。これに気が付いて感動してしまった。大体どこのカレー屋でも、業務用ガス釜から直接飯を盛っている光景を見る。でもこの店では、飯櫃ひとつにもこだわりを見せている。そう思いながら見ていると、貴重な場面に出くわした。飯を使い切って、新たな飯を充填するシーンだ。奥から新しい飯釜を持ってきて、入れ替えをするところだった。残念ながらハヤシを食べ終わってしまい時間が経っているので席を立たざるを得なかったが、なんだかこの店の世界観を構成する重要なポイントを発見したような気持ちになった。
大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。仕事がうまくいったこともあり、気持ちよくのぞみ号に乗り込み、帰郷して、これを書いている。あー、旨かった。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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