何を隠そう、肉の中では鴨の肉が一番好きだ。野趣溢れる香りとしっとりとした歯触り、分厚くコクのある脂。煮ても焼いてもスモークしても旨い。が、これまで一番美味しい鴨料理と思ったのは、大学時代に住んでいた長屋の、僕が里親のように慕って、週に4日くらいは飯をごちそうになっていた山田家のかあちゃんが作ってくれた「鴨丼」だ。薄切りの鴨肉を甘辛く煮付け、汁と一緒に飯にかけて食べるだけなのだが、、、アレを超える鴨料理にはまだ出会ったことがない。
しかし、本日まったく違うジャンルと言える、秀逸極まりない激旨鴨丼を食べた!のでここにレポートしたい。
まあ、偶然出会ったわけではない。うちの協力会社さんが、僕のこのblogをみて、「美味しい店がありますよ!」と教えてくださったのだ。それが、巣鴨とげぬき地蔵通りにある割烹「加瀬政」だ。
この店、実は結構有名らしく、dancyuにも採り上げられている。この冬の季節は、鱈(タラ)の全ての部位を使ったじゃっぱ鍋や、味噌仕立てにして鴨の卵をつけて食べる桜鍋などが垂涎のメインコースであるらしい。
で、この店のランチに、鴨の卵を2個使用した鴨丼なるものがあると言うことなのダ!
鴨は、ご存じの通り野鳥である。この卵、実に旨い。僕の母校の大学キャンパスには、鴨が越冬をする池があって、用務員さんが餌付けをしていた。池には巣箱を浮かべていたのだが、そこに卵が生み付けられていることが多々あるらしい。んで、ある日その卵を一ついただいたことがある。これを目玉焼きにしてみたのだが、、、絶品中の絶品だった。それはそうだ、飼い慣らされた家禽としての鴨ではなく、虫や雑草をたくましく食べている野生の鴨の卵だ。ネットリとした黄身の濃さに、うちふるえたものだ。
この加瀬政の鴨卵は福井から取り寄せているらしい。その質がいかなるものか、楽しみなんである。
何年かぶりに、とげぬき地蔵を歩く。カレーうどんで有名な古奈屋(こなや)もこの界隈。いくつか支店が出ているが、最近食べてないなぁ。鴨丼を食べてから、おやつにカレーうどんを食べてもいいが、時間がないなぁ、昨晩もインドカレーを2杯食ったのだが、、、
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割烹「加瀬政」
http://www.hirame.com/kasemasa/index.html
〒170-0002 豊島区巣鴨3-14-16
03-3918-1286
営業時間11:30~14:00 ・ 17:30~21:00
月曜定休(但し縁日(4,14,24日)と重なった場合は翌日 )
電話03-3918-1286
鴨丼 1550円
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寺をこえたすぐ先に、店を発見。ランチタイムを少し外したので店はそれほど混んでいない。調度は綺麗で清潔感があり、好感がもてる。レジや壁に、木にさした干し柿がつるされていて、これは果たして食用なのだろうかとスンゴク気になる。
さて、これがランチメニューだ。はっきりいって鴨丼以外を頼む手はないだろう。一期一会かもしれないから、大盛で注文を通す。
待つこと5分。お新香はきちんとした古漬けのたくあん・ショウガのみそ漬け、キュウリの古漬けで好感が持てる。そして出てきたみそ汁と綺麗な朱塗りの碗に入った鴨丼。蓋をとると、、、
ドドーンと最初に目に飛び込んできたのが、ご自慢の鴨の卵の黄身だ!
極めて濃いレモンイエロー、ドーム型に盛り上がる大きな黄身が、鴨肉とネギを卵とじにした上に鎮座している。素晴らしいプレゼンテーションだ。まずは、黄身をそのままに具に箸を入れる。鴨肉は腿肉と抱き身(胸)のミックスだ。鴨肉にはしっかりと火が通り、味が染みこんでいる。割り下は甘めで、江戸前の醤油がプンと香る、程よい決め味だ。
「旨い!」と唸る。
すると、なんと奥から、主らしい割烹着を着たおっちゃんが出てくる。
「鴨丼、旨い?」
「いや、ウマいっすよ。でもまだ黄身を割ってないんだけど、、、これ、まぶしたほうが旨いんかな?」
「いやまあ、好きなようにしなヨ。」
このオッサン、ただ者ではないと一目で感じる。完全に肩の力が抜けている。全身脱力のしなやかさが見て取れるのだ。急いで黄身に箸を入れる。
そして驚愕した。
黄身が濃~い!!! 箸で黄身の中身(割ってから)をつかんで上に上げると、カスタードクリームのような粘着度でトロトロと流れ落ちていくのだ!下の画像を見て頂ければその粘着度合いの一端が知れよう。
これを鴨肉にマブしてご飯とともにかっこむ!
「う、うまい!!! ムチャクチャ旨~い!」
極めて濃厚な黄身の風味が、甘辛味を柔らかく包み、コクをさらに増すのである。やはり、通常の鶏卵ではなく鴨の卵を使うからこのような濃厚度あいが確保できるのだろう。
主は言う。
「鴨はね、この時期くらいに寒いとあんまり卵を産まないんで大変なんだよ、、、」
なあるほど。
と、さっきまですんごく気になっていた干し柿(↓)のことを訊く。
「あの干し柿は食べられるの?」
「出さないよ。」
一言である。しかも脱力。微塵にも余分な力みがない。何たる余裕か、、、昨晩のインドカレー「タージマハール」のおいちゃんといい、昭和のオヤジどもはちょっと格好いい。
さて、この店の夜のメインコースである、タラのじゃっぱ鍋と、桜鍋は絶対に食べたい。
「だったら早めに予約しないとダメだよ。だって次の年末の予約がもう今から入ってるくらい何だから。」
ええええええ
なんなんだそれは、、、 とビックリしつつ、絶対にくるぞという念を再確認したのである。
全国の鴨ファンの皆様、ここの鴨丼は旨い。鴨の卵は偉大である。
Posted by yamaken at 2004年01月13日 20:04 | TrackBackそそ、タラのじゃっぱ鍋にじょっぱりを熱燗でいただくのよ。で、最後に鴨の卵を溶いて雑炊にするのよ。これ、マジで最高でした(笑)で、そうそう店主が厳しい態度の中にもちょっとしたトレビアを提供してくれるのよね。ホント、最高です!
Posted by: 竹 at 2004年01月14日 08:24鴨丼といへば…
赤穂浪士が討ち入りをする(旧暦の)12月14日の夜。
大石内蔵助・主税親子は日本橋の堀部家(堀部弥兵衛・安兵衛親子)のところで身支度をしたのですが、
その時、堀部家では鴨丼を出したそうでございます。
生卵を鉢に割り込み、味をつけ、別に炒りつけた鴨肉を小さく切って混ぜ合わせ、飯にかけたものだそうでございます。
その故事にあやかり、(´(エ)`)もここ一番の時には、(貧乏役人なので ;_; )鶏肉でやります。鶏でもなかなか美味いです。
鴨肉と鴨卵でやったら格別でしょうなあ…
赤穂浪士バージョンも旨そうだね!
ていうか昔の料理ってなんだかそそるんだよね。池波正太郎の世界。