友人がMacを買うというので、話題のアップルストア銀座店に行ってきた。Powerbook、iBookなどが整然と並んだ空間だった。2Fには画像や動画編集などのテーマ別のスペースが。4Fには周辺機器がと色んな趣向が凝らされている。
しかし、すぐに飽きてしまった。やはりバリエーションが狭すぎる。それに、何か魔術の匂いがしない。大学生の頃、西新宿にあったPowerLabという小さなMac専門店は、本当に狭い店だったが、Powerbookの改造パーツやドックなどを中心にマニアックな品揃えがあり、非常に心をくすぐる空間だった。呪術空間的な色彩があったのだ(その頃僕はPowerbookDuo280cをひょんなことからApple本社から貰って使っていた)。
でもそのくすぐったい感覚が、このアップルストアの4つのフロアからは感じられなかった。ちょっと残念だ。密かにiBookへの購買欲があったのだが、失せてしまった。
ストアを出て、腹が減ったのでメシをということになった。僕は銀座はテリトリーではない。理由は簡単高いからだ。けど、気になる店はある。フレンチをベースにした「マルディグラ」が旨くて豪快ということは良く聞いていた。電話をしてみると、予約が一杯の中、席が用意できるというので行ってみることにした。
そうだ、あらかじめ言っておくと、店内が暗かったので画像は補整をかけても全く品質が悪い状態だ。美味しそうにみえないが申し訳ない。
新橋寄りの、クラブがわんさかある通りの目立たない入り口を地下に降りると、20席くらいの小さな空間があった。フリースのジャケットにブルージーンズで行ってしまったのだが、ドレスコードはないということでホッとした。
肉料理の豪快さは有名だが、気になっていたのは香菜のみのサラダなど野菜料理だ。何かの雑誌の野菜特集でもこの店が採り上げられていたのだ。
■マルディグラ
・香菜の爆弾 1300円
・季節の野菜のグリル 1600円
・黒のブーダンと白のブーダン 1500円
・豚のアメリカ風BBQ 2600円
グラスワイン 1000円/杯
農産物の仕事をしている身としては、こういう店で野菜料理を頼みたくはないのだが、やはり習性だろうか、試してしまう。料理人が野菜に対してどのようなアプローチをしているのかを見てみたくなるのだ。
「香菜の爆弾」はここの看板で、フレッシュの香菜とエシャロットをドレッシングで和えただけのものだ。通常はツマのような扱いの香菜がメインになっている訳だ。これが文句なしに旨かった。決め手は強めの味付けだ。カリカリに揚げたみじん切りのニンニクとオイル、そしておそらく魚醤で味を付けているが、塩気がバン!と効いている。好みの味だ。よく野菜というと、
「素材の味を活かして、、、」
という言葉を隠れ蓑に、淡い味付けに終始してしまう店が多い。これは語法がおかしいと常々思っている。本当にいい素材であれば、塩を強くしようがソースをかけようがなんだろうが際だつのである。素材を素材の味以上にするのが料理の技法であって、素材の持ち味に終始してしまったら意味がない、と僕は思っている。ただ、和食の場合は違うけどネ。上記は、特にヨーロッパの料理において、という注釈である。
とにかくこの香菜爆弾は旨かった!もっとデカイドンブリに一杯食べたいくらいだ。香菜はその辺の市場で売っている市販品ではないだろう。香りが強く、土耕栽培の産直品だと思われる。
この調子なら野菜のグリルも期待できるかな、、、と思ったが、それは違った。運ばれてきたのは、ズッキーニ、ナス、トマト、パプリカ、スナックえんどう、長ネギ、カボチャ、ニンジンがグリルされているのに、3種のオイル(ガーリック、チリ、ECヴァージンオリーブ)が添えられたものだ。
一通り食べてみてがっかりした。まず、カボチャとネギを除いて全ての野菜が季節はずれもいいところだ。今の時期に出回るズッキーニやナスは旬とは言えないし、パプリカは輸入物だろう。僕ならば大胆に大根のグリルを主軸に、甘いカブ、ゴボウ、ナガイモ、寒ニンジン、太ネギなどを配するだろう。それらが今もっとも旨い野菜だからだ。このひと皿からは創意のかけらも感じられなかった。
と、野菜についてはそう言うコメントになるのだが、この店はやはり肉、肉、肉!なのだと思う。
■「黒のブーダン 白のブーダン」
ブーダンは腸詰めだ。黒は、いわゆる豚の血のソーセージだ。僕はこいつが大好きなのに、あまり国内では売っていない。マルディグラの黒ブーダンはなぜか米が入っていて、あまりこってりしていない感じで食べやすい。本当はもっとしつこい血の味がする方が好きなのだが、、、 白のブーダンは、豚肉がスフレのようにフンワリしており、非常に上等な味。付け合わせのほうれん草も強気の塩加減で、素晴らしかった。
そして極めつけが豚スペアリブのBBQだ。
■アメリカ風BBQ (←本当は何かアメリカの地名が入った名前なのだが、、、忘れました)
デカイ皿に、どんと関節ごとに分断されたスペアリブが35cm分くらい載っている。何だかシュリンプペーストの香りがするタレ、がまぶされており、食欲をそそりまくる。ナイフとフォークを捨ててかぶりつくと脂が柔らかに溶け、旨味が拡がる。文句なしに野趣が溢れており、旨い。よくよく火を通しているようで、髄までかみ砕ける。この肉の味付け、脂とワイン(UNTIを頼んだ)の強さがバチンとぶつかり、堪まらない。骨までしゃぶってしゃぶりつくした。
この塩気まんまんの料理の後に甘いものは食べたくない。デザートは断り、コーヒーで締めた。
この店は、ワインと肉を楽しむ店らしい。そう割り切れば非常によい店だ。価格も、2名で12500円くらい。銀座ではまずまずのラインだろう。特にメリハリの効いた味付け、おおぶりな盛りつけは目にも美味しい。
ただし、満足度ベースで言うと、前菜の一皿単価が高いと感ずる。野菜を食ったからかなぁ、、、今度はピンチョスと、多くの人が旨いというトスカーナ風フライドポテトを食べてみよう。ちなみに主菜については満足だ。次回訪れたら★の数が変動する可能性は大である。
この店、すでにかなりの評判をとっているのだから、今度は地価の安い郊外で新店を出して欲しいモノである。